第10話

2-5

●軍用調査船と皇帝陛下


今、俺はこちら式の土下座をしている。

膝を付いて両手も地面に付き頭を下げている。

『宇宙船を壊してしまい。申し訳ございませんでした。』


ここはその壊れた宇宙船のリビングスペース。

頭を下げている先にはトァカミさんが居る。


『いっ。いや。そこまでする必要はない。私達も雄介君が戦ってくれなかったら死んでいたわけだしな。頭を上げてくれたまえ。』

俺が頭を上げると、ほっとした顔をしたトァカミさんがいた。

『宇宙船の事は私が父上に相談してみるので少し待ってほしい。』

『・・わかりました。でも、無理はしないでください。直ぐには無理ですが、何とか稼いでお返しします。』


次の日、トァカミさんは子爵であるお父上に連絡を入れたが、今は領地の視察に出ており今日の遅くに戻ると言っていたそうだ。

その日はもうやることがなく、壊れた宇宙船の中でダラダラ過ごした。

と言っても、トァカミさん何時もの如く、難しい本を1日読んでいた。

てか、ダラダラ過ごしたのは、俺だけかもしれない・・。


その次の日、俺たちは星系軍の詰め所に来ている。

何のために詰め所に来いと言われたのか分からなかったが、そこでスサノア星系駐留軍の少将から感謝状と賞金を頂いた。

それと、傭兵組合に最近この宙域に出没していた海賊の討伐依頼が出ていて、その報酬も貰ってきてくれたそうだ。

併せて2億5千万G。賞金が5千万G、報酬が2億Gだそうだ。

海賊の討伐で報酬が2億Gはこれでも安い方らしい。

なので、討伐依頼は引き受け手がいなくて残っていたそうだ。

そりゃそうだよね。ミサイルだって最低でも1発500万G位はするもんね。

その上、戦闘艦だって無傷で帰ってこられるか分からないし・・。

下手すると撃墜されて死んじゃうんだから。


でもまぁ、報酬はうれしい。早速トァカミさんに渡して宇宙船の頭金にでもしてもらおう。



◆----------

わらわの元にスサノア星系駐留軍のサルディン少将から報告書が届いた。

救助に向かった巡洋艦の佐官は船のフライトレコーダーの情報から怠慢行為が発覚し降格処分にしたそうじゃ。

それと撃墜された海賊船の使えそうな物をサルベージュしてきて、傭兵組合に売って、賞金に上乗せしたそうじゃ。

・・セコ。いや、しっかりした奴じゃな。我が軍も潤沢ではないじゃろうしな。

この戦闘で彼奴らの宇宙船が使い物にならなくなっているらしいな。

ふむ。ここで恩を売っておくのも良いかもしれぬな。


宇宙船を、いや彼奴は故郷の探索で辺境の先まで行かなくてはならぬからのう。・・・やはり戦闘艦かのう。

たしか辺境調査用の戦闘艦があった気がするのう。

ただのう。やはり戦闘艦を民間人に渡すのも、問題がある気がするのう。


どうした物か・・。

彼奴が貴族か軍属になってくれたら、問題ないのだが・・。


とりあえず、彼奴に戦闘艦を渡すから仮で良いので軍属になれとゆうてみるか。

仕事も辺境調査としておけば問題なかろう。


それと、探索用の小型戦闘艦とはいえ彼奴が艦長となると、中佐か大佐あたりの階級も必要か。

難儀じゃのう。

しかも、軍の事を何も知らずに、いきなり大佐ですと言う訳にもいかんし・・。


そうじゃ。わらわの従妹の娘が今近衛に居るんじゃったな。

彼奴のサポートに付ければ、一隻二兆じゃ。

ふふっ。面白くなってきた。


◆----------

『あ。陛下。ご無沙汰してますおります。』

俺が船の部屋でだらだらしていると情報端末がバイブレーションと共に着信サインが点滅していたので、出たら皇帝陛下だった。

「ご無沙汰と言うほどたっておらんじゃろう。ふふ。」

「あぁ。いや。・・今日はどうなされました。」

「なに。宇宙船が壊れて困っていると、聞いたのでな。」

「はぁ。そうなんですよ。実質、俺が壊してしまった様なものなので今ブルー入ってます。」

「でな。戦闘艦をやろうと思ったのじゃ。」

「えっ。マジですか。うれしいです。」

「ただな、民間人に軍の戦闘艦をホイホイ渡すわけにもいかなくてな。どうじゃろ、仮のようなもので良いので、わらわの近衛軍に名前を置かぬか。」

「えぇ。近衛軍にですかぁ。俺、軍隊経験なんてないですよ。」

「その辺は、サポート役を付けるでな。それになお主ら故郷を探すのに帝国の図版の外にも行く可能性があるじゃろう。その時に民間の宇宙船では危うくはないかのう。」

「うっ。たしかに・・。」

「での、任務としては、辺境の調査という事にしておけば良かろう。給料もだすぞ。」

「あぁ。それはうれしいですが、俺トァカミさんに壊した宇宙船の代金返そうと思ってるんですよ。なので傭兵組合に入って、傭兵になろうと思ってたんですよ。なにせ、危険はありますが、依頼に成功すれば報酬がいいですからね。」

「ふむ。しかし、傭兵をするのに船はどうするのじゃ。傭兵をやるなら最低でも小型の戦闘艇位は使わぬとやっていけぬぞ。それと戦闘艇では1人しか乗れん。裁判の事があるのでトァカミかカムミムのどちらかはお主の故郷探索に付いていかないと奴らが刑の不履行と言う事にもなる。すると最低でも2名以上が乗船可能な船でないといかん。しかも2人乗りの戦闘艇では長期の探索は出来んぞ。シャワーもないし簡易ベットも2つはないぞ。」

「ぬぬぬぬぅー。」

そうだよなぁ。船が無いと傭兵家業は難しいよなぁ。トァカミさんにもこれ以上迷惑かけることも出来ないし・・。

でも、なんか俺追い込まれてない。正論なので何も言えないけど・・。

「・・・・・分かりました。近衛軍に入ります。ただ一つ、傭兵組合にも入らせてください。やっぱり返済するお金がほしいです。」

「仕方ないのう。わらわの方で何とか調整して置く。ただ、報告書はきっちり提出してもらうからの。」

「うへぇ。分かりました・・・。ところで陛下、なぜ日本語での会話なのでしょう?」

「・・聞かれるといろいろと煩い奴がおるのじゃ。わらわはお主と堅苦しく会話するのも嫌なのでな。『そういう事だから、宜しく頼むぞ。』」

『了解しました。』


◆----------

俺はトァカミさんを捕まえて、近衛軍に入った事を報告した。

と言うか、トァカミさんはいつもの所で難しい本読んでるのですぐに捕まった。

『トァカミさん、さっき陛下から通信があって、近衛軍に入れられてしまいました。』

トァカミさんはびっくりして、飲んでいたお茶吹き出しそうになっている。

『近衛軍に・・入った・・。げほ。げほっ。』

ありゃ。気管に入ったかな。

『はい。戦闘艦やるから、近衛軍に入れって言われて仕方なくですが・・。』

『戦闘艦を・・貰った・・。』

『はい。故郷を探すなら辺境のその先に行かなくてはならないだろから、民間船では危ないと言われて・・。』

『まっまぁ。そうだな。確かにそうだ・・。』

『仕事は辺境の調査を行ってほしいそうです。』

『なるほど。しかし、君は軍隊経験があるのか。』

『いえ。なのでサポート役を付けてくれるとの事でした。報告書はきっちり提出しろと言われましたが・・。www』

『それは、そうだろうな。』

トァカミさんは、うんうんと頷いてそう言った。

『なので、新しい宇宙船は購入しなくても良くなってしまいました。』

『そ、そうか・・。わかった。』

あれ。新しい船欲しかったのかな。

『あっ、それと傭兵組合にも入って良いと言われてますので、航宙艇運用者試験の免許が取りたいです。』

『もう。なんでも有りだな。わかった。取らせてやるから安心しろ。』


トァカミさん、びっくりしすぎたのか最後は投げやりだ。w




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