第7話

2-2

●俺と暇な時間の潰し方


俺たちは惑星クランドルのコロニー型宇宙港に寄り、武器の封印を解除してもらい、一路最初の経由地サトア第一星系目指し出発した。


最初の15分位はトァカミさんが操縦席で船を操縦していたが、その後はオートパイロットの自動運転でワープポイント付近まで移動した。

ただ、このワープポイントまで3時間かかっているので結構な時間だ。

この3時間俺は何をしていたかと言うと、子供たちと一緒に絵をかいていた。

子供たちが動物や花の絵を描く中、俺は今乗っている宇宙船(小判型お饅頭)を書いていた。

そんな俺の書いている絵を子供たちが盗み見てひそひそ会話している。丸聞こえだけど・・。

あみちゃんが「あれ。クワガタ虫かな?」と言うと、ミナちゃんが「違うよ。コックローチだよ。」と言い返していた。

まだ、色を付けていな黒い線だけだが、「G」とは・・、雑に書きすぎたかのかもしれない。

俺は再度新しい紙に丁寧に宇宙船(小判型お饅頭)を描いた・・が、気持ち悪さが増した「G」にしか見えなかったので、紙飛行機にして飛ばした。

子供たちは「キャー。「G」が飛んだー!」っと、ペンを放り出して猫の子のように紙飛行機を追いかけて行った。


そして、このワープポイントからワープし、4時間程でサトア第一星系に到着するらしい。

この世界のワープは、場(空間)を捻じ曲げるのだが、相手側の空間と接続し距離をゼロにするような事は出来ないらしい。

トァカミさんが言うには、研究はされているらしいが、うんたらかんたら・・俺の脳が拒否して理屈は分からない・・。

あと、銀河間の移動をする時には、コスモハイウェイやら、ハイパーコスモハイウェイと言うゲートを使った移動手段もあるらしい。

ただ、ゲートを利用するので、設置場所まで移動しなければならない。

このクランドル銀河でも辺境の4つの伯爵家が納める星系に1つ、または2つのハイウェイゲートがあるそうだ。


しかし、また4時間も空くのか今度は何しようかなぁ。

こんな時にゲームが出来たら最高なのに・・。

そうだ、自動調理器のカスタムモードを試しておきたい。

試しにクッキーでも焼いてみるか。

お昼ご飯を食べたら試してみたいから、今のうちにクッキーの種を作っとこ。

えーと。俺の携帯を起動して保存しておいた、クッキーの材料っと。

あっ。携帯の電池はソーラー充電式モバイルバッテリーで充電済みだよ。


薄力粉、バター、砂糖、卵・・。卵1個(Mサイズ)ってどの位だよ。

しかも、いま冷蔵庫から出したこの卵デカくないか。

俺の拳より一回り大きいぞ・・。何の卵だこれ。

不安になった俺は卵を一旦冷蔵庫の戻し、カムミムさんに聞いてみたところ、コッケラノドンの卵だという。

コッケラノドンが分からないと言うと、羽のある空を飛べない恐竜だそうだ?

俺がまだ分からなそうな顔をしてたら、カムミムさんが紙に絵をかいてくれた。

って、まんま鶏じゃん。でも体長が1m位あるらしい・・。

まっまぁ、鳥って一番恐竜に近い生物らしいから・・いいか。

ちなみにコッケラノドンと言う名前は昔の生物学者のコッケラさんが見つけたからコッケラノドンなんだって。

てっきり、鳴き声から取ったのかと思ったけど、鳴き声は「ぐぎゃー!」らしい。


大体、卵が2倍位の大きさだから、他の材料も2倍でいいか。

ボールを2個大と小を用意して、小に卵、大にバターを入れてと。

お、コッケラノドンの事を聞いているうちにバターが柔らかくなってる。


バターを潰して、かき混ぜて、砂糖を入れ、またかき混ぜると。

卵の卵黄を潰してよく混ぜると。

潰した卵を少しづつバターに加えながら、よく混ぜると。

薄力粉を加えてさっくり混ぜると。

手でまとめて、ラップをかけて、冷蔵庫に放り込むっと。

冷蔵庫に入れて30分から1時間って書いてあるけど、昼飯食べてればその位になるだろう。

www。適当。試しだからね。www。


お昼はバゲットのスライスと肉ポイ物のサイコロステーキ、それと野菜スープだった。

毎回思うけど、まずくはない微妙美味しいでも"すげー!うまい!"って感じでもない。

何かが足りない・・。


お昼の後にお茶を飲んで、ちょうど1時間位立った。


食器を片付けた食卓に冷蔵庫からクッキー生地を持ってきて麺棒で伸ばした。


ミナちゃんとあみちゃんが興味深々で。「雄介、何してるの~。」と聞いてくる。

俺は「クッキー作ろうと思って、生地伸ばしてるんだよぉ。」と言うと、テンション爆上がりで「あたしもやるー!」とミナちゃん、「あたしも、あたしもー。」とあみちゃん。なんか2人とも椅子に座ったまま、ぴょこぴょこ跳ねてる。

「じゃぁ。先生に生地を切ってもらって、そこにお絵描きしてよ。」

二人とも「分かったー!」とやる気満々だ。

俺は佐井田さんに「すいません。型が無いんで、ナイフか何かで生地を切ってもらっていいですか。」

佐井田さんも「お手伝いします。」と何故か嬉しそうだ。

カムミムさんも『何をされているのですか。』と聞いてきて、興味があるようだ。

ちなみにトァカミさんは情報端末を眉間に皺を寄せて読んでいてこちらに興味は無いようだ。


俺は生地を切るのを一旦佐井田さんとカムミムさんに任せ、自動調理器をカスタムモードにし、動作をオーブンに設定、温度を170度に設定した。

そして、自動調理器の中にオレンジ色の光に変わり、扉のガラスが暖かくなるのを確かめてから、生地を切るのに参加した。


最初の内は俺も佐井田さんやカムミムさんのように花形や動物型に切っていたが、だんだん疲れて(いえ、飽きて)きてしまい、四角に切るだけになってしまった。


俺は説明にある通り天板にクッキングシートを引こうとして、そんなもがない事に気が付いた。

クッキングシートがない昔はどうしてたか思い出して、天板にバターを薄く塗り、その上に小麦粉を薄く撒いた。

その上に切り抜いて絵を描いたクッキー生地を並べ、オーブンに投入した。


この自動調理器、クッキーに焼き色が付き始めたらピーピーなって教えてくれる。優秀だ。

第一陣が焼き上がり、子供たちがミルクと一緒に食べ始めた。

俺も1枚貰って食べてみたが、まぁ、良くできたと思える味だった。

その後、俺は焼き係に徹していたが、すべて焼き終えて戻ってくると、トァカミさんは情報端末を読みながら機械のようにクッキーと紅茶を飲み食いし、カムミムさんはなぜかクッキーの皿を抱えて、紅茶と一緒に食べていた。

聞いてみるとトァカミさんがカムミムさんの皿のクッキーを間違えて食べてしまったそうな。

まぁ、自分で作ったお気に入りの形のクッキーを無断で食べられたらショックだよな。

トァカミさんは情報端末だけを見ていて手探りでクッキー摘まんでるからな。そうなるわ。w。


そんなこんなで、4時間はあっという間過ぎていった。

そのころには、子供たちはお昼寝の時間で、夢の中に旅立って行った。


最初の経由地サトア第一星系のワープ出口ポイント、特に何かあったわけではないがワープの後は機体のチェックをしないといけないルールだそうだ。

トァカミさんが操縦席でタッチパネルのボタンを幾つか押すと、操縦席前面のモニターに映し出されたチェック項目背景がライトブループに変化していく。

以上があると背景が赤く点灯するそうだ。

全ての項目にライトブルーが点灯し機体に問題ないことが確認された後、俺たちはサトア第一星系惑星サトアのコロニー型宇宙港へ向けて出発した。

今日はこの宇宙港に接舷し一泊するそうだ。ただ、宇宙船の中での宿泊なので宇宙港の中には足を踏み入れないとの事。

今度は2時間で着くらしいが、やはりやることがない。

明日の朝食用にクロワッサンでも仕込んでおくか。

それじゃ、携帯を起動して、作業していくか。


まずは、強力粉、薄力粉、砂糖、塩、ドライイースト、無塩バター、牛乳、ぬるま湯を用意する。

そう。ドライイーストがあったんですよ。速買いしました。

ショートニングは無かったので、仕方なく重曹を買っておいた。


無縁バターをラップの上に置き、伸ばして四角くする。

小さい容器でドライイーストに牛乳とぬるま湯をいれて戻しておく。

強力粉、薄力粉、砂糖、塩をボールに入れ、混ぜ、戻したドライイースト投入し混ぜる。

生地をまとめてラップをかけ、室内に30分放置。

生地が膨らんだら、四角く伸ばして、先に四角く伸ばしておいた無縁バターをおいて、生地で包む。

麺棒で伸ばす、生地を半分に折り、また伸ばす、今度は3つ折りにしてラッチを掛けて冷蔵庫に放り込む。

これで今日の作業はおしまい。

明日の朝、生地を取り出して、また伸ばして半分に折って伸ばしたら、生地を東京タワーのような二等辺三角形に切る。

・・おしゃれな感じにエッフェル塔と言った方が良いだろうか。

三角形の底辺をちょっと引き延ばし、引き伸ばした方から頂点に向かってくるくる巻く。

天板に並べて、ラップをかけて、2時間待つ。って2時間。俺、明日何時に起きればいいんだ。

大体、標準時で8時位が朝食で、自分の支度と、生地を伸ばすのと焼く時間があるから・・。標準時で4時半位・・。

うん。今回だけで終了。もうクロワッサンを作るのはやめよう。


翌朝、クロワッサンは大好評であったが、なにせ眠い。もう一回寝ていい。



俺がクロワッサンと格闘している間に、サトア第一星系惑星サトアのコロニー型宇宙港に着き一晩過ごしたわけだが、朝食を取って二度寝した俺の起床を待たずに宇宙港を出発していた。


今度も2時間行ったところにワープポイントがあり、現在そこに向かっている途中であるが、俺の二度寝で後30分位で着くそうだ。

その後のワープで5時間、そこからスサノア伯爵家領のスサノア星系惑星スサノアのコロニー型宇宙港まで2時間だそうで、また暇な時間が出来てしまう。


トァカミさんに何か時間を潰せるものはないか聞いてみたが、情報端末を見せつつ「量子力学入門」を進められた。

情報端末ごと受け取って、ぺらぺらとって情報端末だから指でスライドさせてるだけだけど、目次を見ると「量子のスリット試験の考察」?

なんじゃこりゃ。量子って服着るのか?スリットの深さで見せる生足の出し方が違うとか?見てないと出した足で勝手に動き回るとか?

訳が分からないので、俺はトァカミさんに情報端末を返しながら、他にないか聞いてみた。


トァカミさんは『宇宙船のシュミレーション訓練なんてどうですか?』と言うので、即答で、いや食い気味に『やります!』と答えた。

宇宙船のシュミレーションは初歩の操舵方法から最終的に戦闘訓練まで出来るそうだ。

ワープポイントまで後20分位、ARグラスを掛けた俺はシュミレーションモードにした副操縦席でトァカミさんにレクチャーを受けながら仮想の機体を動かしていた。

その後はワープに入るため、トァカミさんは主操縦席に着きワープ設定を終えてワープに入った。

俺は、一旦はシュミレーションを中断しトァカミさんのワープ設定を見学していたが、ワープに入るとまたシュミレーションを再開した。


ワープに入って4時間後、俺はシュミレーションで最終的な戦闘訓練を行っていた。

昼食も取らずにシュミレーションをしていた俺に皆は変態を見るような眼を向けていたが、ふっふっ、最高スコア98点を叩きだしたぜ、戦闘自体は100点だったけど、入港手続き、接岸、出航手続き、離岸で、もたついて減点されたんだよ。そんなのゲーム「ギャラクティカ スクランブル」にはなかったからな・・。

今度は絶対100点取ったる。


そんなこんなで、ワープを終了し、今なんか3機の未確認飛行物体に囲まれている。

未確認飛行物体でいいよね。船の識別ポンダー発信してないし・・。


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