第6話
2-1
●初めての宇宙旅行と俺
皇帝陛下との謁見という事で緊張していたが陛下は気さくで面白い方だった。
帰りがけに学長さんに皇帝陛下と何の話をしていたか聞かれたが、それを聞いていたミナちゃんが先に答えてしまった。
『んとね。あのお姉ちゃんが雄介に結婚してくれって言ってた。』
学長さんがぎょっとした顔で、こちらを見てきたが、俺は首を横に振りながら学長さんに答えた。
『いやいや。ミナちゃん違うでしょ。あのお姉さんの従妹の娘さんでしょ。なんか一族の血が濃くなってしまって困ってるとか言ってましたよ。』
学長さんは『むむ。それは良いかもしれん・・。』等と考え込んだ後に、俺に向かって『雄介殿はどうなのだ。』等と聞いてくるものだから、俺は苦笑いをしながら『故郷が見つかるまでは結婚は考えられないって断りましたけどね。』と返し、学長さんをがっかりさせた。
どうでもいいのだけど、こちらの人はユウスケって発音難しいのかなヒュウスケって聞こえるよ。まぁいいか。
学長さん曰く本当に困っているらしく代を重ねるごとに子供が生まれなくなってきているそうだ。
このままでは帝室が途絶えてしまう可能性もあるのだとか。
そこで学長さんは何かを思い付いたのか、ニヤリと笑って『故郷が見つかれば結婚の事を考えてくれるのだな』と妙にやる気を出している。
いやいや、学長さんそれは断るための方便ですからねって、ニヤリに凄味あってお前言ったよな的な圧力で、もう俺は何も言えんけど・・。
あっ。それと帰りがけに執事さんから、帝室の紋章付きメダルを貰った。
なんでも帝室に来る時は門番と受付で見せてほしいそうだ。
そんな話をしている間に宿泊しているホテルに付いた。
まぁ。こんな話が出来るのもこのタクシー的な乗り物に運転手がいないからなんだけどね。
タクシー的な乗り物から降りた、俺たちはホテルのレストランへ向かい少し遅めの昼食を取った。
しかし、ここのレストランまずくはないんだけど、ウマーって感じでもない。
周りの他の人たちを見ると美味しそうに食べてるから、俺たちと味覚が違うのかな。
なんかケーキが妙に食いたくなってきた。シフォンケーキ。紅茶と一緒に食いたい。
俺の携帯にシフォンケーキの作り方が入ってた気がするけど、どこ行ったのかな、俺の携帯。
後、ワンショルダーのバックも有ったはずなんだけど・・。
それとお気に入りの腕時計は、腕と一緒に地球に残してきちゃったけど、今頃実家かなぁ。元電卓メーカー製の「Gの衝撃」。
その後、俺はトァカミさんに携帯とワンショルダーのバックについて聞くために、ホテルのフロントで電話を借りて連絡を入れた。
『もしもし、トァカミさんでしょうか。お忙しいところ申し訳ございません。』
『はい。大丈夫です。何か問題がありましたか。』
『いえ。私の地元から持ってきたケイタ・・情報端末とバックを知らないかと思いましてお電話しました。』
『あっ。申し訳ございません。私が預かっております。お返しするのを忘れておりました。そう。それと、私とカムミムの実家にお連れするのに打ち合わせをしたいと思っていたのですが、今日の16時位からそちらに伺って宜しいでしょうか。』
『私は構わないのですが、佐井田さんと子供たちは確認しないと返事できません。』
『分かりました。それでは今日の16時位に雄介さんの持ち物をお渡ししに行きます。その時大丈夫であればそのまま打ち合わせに入りましょう。ダメであればその時に日時だけ決めましょう。』
『了解しました。ではお待ちしております。』
俺は早速、佐井田さんに確認し、打ち合わせを今日の16時から行う事で了承を取り付けた。
16時少し前にフロントから電話があり、トァカミさんとカムミムさんが来たことを告げられた。
部屋から出て、佐井田さん達を誘いフロントまでおりてきて、トァカミさんとカムミムさんと合流した。
そのままレストランに向かい今日は個室に連れていかれた。
なんでも、警戒せずに宇宙船で宇宙に出る話をしてはいけないそうだ。
稀にではあるが宇宙海賊と繋がっている者が紛れ込んでいる事があるそうで、以前、喫茶店で個人所有の宇宙船で商売しに宇宙に出る話をしてしまったところ、それを聞きつけた宇宙海賊に待ち伏せされて、当の人物は殺され商品はすべて奪われたと言う事件があったのだそうだ。
全員が個室の席に座ると、トァカミさんが切り出した。
『先ににこれを返却してしまおう』
俺はトァカミさんが差し出した、ワンショルダーのバックと携帯電話(スマートフォンとは言わないぞ。恥ずかしいから・・)を受け取った。
携帯電話の電池は切れているか、もうこっちに来て一か月半だもんな。まぁバックの中にソーラー充電式モバイルバッテリー持ってるし何とかなるか。
トァカミさんは続けて
『私とカムミムは大学を休職する事にした。既に実家には連絡を入れているので、いつ戻っても良いのだが、こちらでやらなければいけないことなどあるだろうか。』
『はい。』
俺は挙手してトァカミさんが指名してくれた。
『雄介さん、何かありますか。』
『ホテル引き払うにあたって、部屋にある荷物を入れるものが欲しいです。』
『そうですね。必要ですね。明日か明後日位に買いに行きましょう。』
『はい。』
俺は再度挙手してトァカミさんが指名してくれた。
『雄介さん、まだ何かありますか。』
『すいません。旅の間の食事等はどうするか気になっています。』
『なるほど。宇宙船には自動調理用のシステムが組み込まれていています。自動調理システムは素材の元になる物が入ったカートリッジ、フードカートリッジと言う物をから、自動で食事を作り提供してくれます。ですのでフードカートリッジを購入してストックして置き、自動調理システムに投入したフードカートリッジの中身が無くなったら、フードカートリッジを取り換えることになります。』
『分かりました。では自分で調理は可能ですか。』
『・・・。ご自分で調理なさるんですか?』
『はい。????』
俺は佐井田さんの顔をみて、2人で同時に首を傾げた。
『まっ。まぁ。自動調理器をカスタムモードで使えば出来ないことはないですが、あまりやる人はおりません。』
『いえね。今日の昼に無性にケーキが食べたくなりまして・・。ハハッ。』
『えっ。ケーキ。ケーキ、ナミも食べたい。』『あみも。あみも~。』
ケーキに反応してそれまで黙っていた幼女たちにたかられている・・。
『そうですか。では買い物に行った時にそう言う原材料も購入していきましょう。』
そんな雑談の様な話もしながら、出航の日を1週間後に決めた。
◆----------
荷物の整理や、買い物をしながら1週間を過ごし、今日、大学のあるクランドル星系クランドル主星を旅立ち、最初にトァカミの実家のあるクドラメーヤ星系惑星クドラを目指す。
クドラメーヤ星系までは3200光年と宇宙的に言えばそれほど遠くない。
同じクランドル銀河内なので、途中ワープ航法を使い順調に行けば1週間で着くらしい。
ワープ航法は場(フィールド)を歪めて航行するのだが、トァカミさんが研究している転送システムとは根本的に原理が違うそうだ。
トァカミさんが熱心に?こんこんと?いやくどくどと説明してくれたが、分かったのがそれくらいだったのは内緒だ。
まずはサトア侯爵家が納めるサトア第一星系を目指す。この侯爵家は複数の星系を持っているそうだ。
その後、スサノア伯爵家領のスサノア星系、次にトァカミの実家が納めるクドラメーヤ星系に入り、そこから惑星クドラへと至るとの事。
そして今、俺たちは宇宙港に来ている。
基本ここの宇宙港は皇帝陛下がいる主星なのでこの星に滞在してる貴族やその子弟の宇宙船しか停泊出来ない。
寄港を申請して許可が下りれば民間の宇宙船も停泊できるらしいが、一般の民間人には許可はあまり下りないらしい。
その他の船がどうしているのかと言えば、コロニー型宇宙港がこの星の衛星として存在するそうで、そこに船を預けシャトル船で地上に降りるらしい。
まぁ、貴族の船も実際には武器の封印や荷物の検査があるので、このコロニー型宇宙港には寄る必要があるとの事だ。
我々も一旦ここに寄って行くとの事だが、ここでトァカミさんが所有する宇宙船が駐機上から運ばれてきた。
駐機場自体はこの宇宙港の地下に立体駐車場のように存在するらしく見ることは出来ないんだけど・・。
トァカミさんの宇宙船が搬出口から自動の誘導車両に引っ張られ、搭乗口近くにに停車させると、自動でタラップが接続された。
ただ、その機体を見た俺は感動?驚愕?な状態で搭乗口につながるラウンジのガラスに顔を付け機体を眺めた。
トァカミさんが所有している宇宙船は、個人向けのクルーザー級宇宙船「LadyB-305L」と言う機体なのは聞いていた。
しかし、目の前にやってきた機体は、俺がやっていたゲーム「ギャラクティカ スクランブル」の初心者が最初に搭乗する機体「MK-113(通称:お饅頭)」にそっくりだ。
形状は通称が示す通り、お饅頭型、この機体は積載量を確保するためのL型で前後に多少長いため、小判型のお饅頭だ。
上面に4個、下面に6個の姿勢制御用スラスターが付いている。前方に操縦室の出っ張りがあり、後方にはメインの大きな2つのスラスターと補助の4つのスラスターがメインスラスターを囲むように配置されている。
上から見ると手足の短い6本足のカメ○クスのようにもみえる。ただ、こっちのは砲塔が細いけど・・。
俺はトァカミさんを捕まえて、搭載武器について聞いてみた。
すると、トァカミさんが前方パルスレーザー2門に、下部ミサイルポッド1基(10発搭載)だと教えてくれた。ついでに使った事がないことも教えてくた。
これは、この機体のドノーマル仕様で、ゲームでも同じだった。
しかし、ゲーム内では後付けで武器ユニットを増設して固定式レーザー砲が2門、それとミサイルポッドかシールドの増強をしているのが普通だった。
まぁ。この辺は戦闘ゲームと現実世界との違いで、戦闘なんてほぼしないのだろうなぁ。
続いて、俺はトァカミさんの背中を押しながら乗船し、ブリッジに連れて行ってもらい、操縦方法を聞いてみた。
右手にジョイスティック型昇降ロール操舵機とジョイスティックに埋め込まれたスイッチ、左手にスライド式出力制御装置とタッチパネル上に並んだスイッチ類、フットペダル式左右操舵機、全部同じだけどこの辺は人間工学と航空機から発展したらこうなった的な感じで「同じだー!」とは一概に言えないだろう。
ただ、モニターに映し出された計器類の配置が違った。これは個々の好みで配置を変更出るらしい。
トァカミさんはこの機体を中古で13億Gで購入したそうだ。以前は駆け出しの商人が使っていたものらしい。
13億Gと聞くと物凄く高価なものに聞こえるが、宇宙船の中では格安だそうだ。
荷物の搬入も終わり、安全確認を計器類で行い、タキシング、発進許可が下りれば出発できる。
これから初めての宇宙を駆る旅に出られる。
ニコニコが止まらない俺は他の皆に変な目で見られているが、まぁ仕方ないか。
と言うか、トァカミさん物質転送システム持ってきたのね。しかも大中小の三種類・・。
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