第4話
1-3
●クランドル大学病院とテンシとカミ
俺はベットの上で目を覚まし、「知らない天井だ」とお約束の言葉を吐いた。
と、ベットの脇から知らない女性が声を掛けてきた。
「目が覚めました?」
「あっ。はい。覚めました。」
振りむくとバッチリ目が合った。
「あっ。あの~。ここは何処でしょう。」
女性は困った顔をして
「え~。私もわかりません。病院なのは確かですが・・。」
雄介はおかしな事言う人だな~とぼんやり思ったが、
ベットの脇から顔の上半分しか見えない幼い子供が
「おじちゃん、たいじょうぶ」と、たどたどしく言ってきたので気が付いた。
そうだった。ゲームショーに行く途中で訳の分からない現象が起きたんだった。
「おっ。おじ・・ちゃん・・・。」
俺って死んだのか・・・。
変な顔をしていたのか、その女性がフォローしてくれた。
「こら。ミナちゃん。おじさんじゃないでしょ。お兄さんでしょ。」
「えー。だってお兄ちゃんじゃないよ~。」
まっ。まぁ、この子の年齢なら俺はおじさんかぁ。グサッとくるな~。泣いていい。
こういう時は話題転換っと。
「とっ。ところでお名前伺ってもいいですか。俺・・。僕は草薙 雄介と言います。」
「あっ。はい。私は佐井田 奈美恵といいます。」
「あたしね。あたしね。ミナだよ。」「あたしは、あみって言うの。」
2人ともぴょんぴょん跳ねながら元気に名前を教えてくれた。
「ミナちゃん。あみちゃん。名前を教えてくれてありがとね。僕は雄介だよ。」
俺はべつに幼女趣味の紳士ではないが、幼女はかわいいな。見ていて自然と笑顔になるよ。
やっぱり女性はあばらが浮いてるより、少しポヨンと幼児体系が良いよねって、紳士じゃありませんから。
しかし、今の俺の状態はベットに左腕が固定されていてほとんど体を動かせない。
と言うか俺左腕があるじゃん。今は指がピクピク位しか動かないけど・・。
しかも、肘から先が天井を向いて固定されてるんでほんとに首と足しか位しか動かせない。
佐井田さんは思い出したように、「そうだ。看護師さん呼んできますね。」と病室を出て行った。
ミナちゃんと、あみちゃんはベットで見えないけどきゃっきゃっと楽しそうだ。
というか、「雄介~」って名前呼びされてるし・・。まぁ。おじちゃんよりは良いか・・。
少し待っていると佐井田さんが看護師と戻ってきたんだが、耳が長いし先端がとがっている・・。
エルフなのか?でも巨乳?エルフはまな板って法則は何処に・・。
俺は彼女の耳と胸を交互に確認し結論に至った。
わかった。ナースの制服に巨乳。エロフだな。うん。
『はい。左腕を確認しますので、固定具を外しますね。』
エロフはベットの反対側にある俺の左腕を拘束している器具を外すために俺に覆いかぶさってきた。
この病院のベットはなぜ左側が壁に寄せられている。普通は作業するために両側開けてベット置いとくだろう。
て。ちょっ。顔、顔に胸が・・。息が・・。天国に行ける・・か。
『固定具外れましたよ。ただ、まだ動かさないで下さいね。』
胸が離れて・・。ぷはー!やっと息が出来る・・。
・・俺はなぜ女性の胸が顔に触れると息を止めるのだろうか・・。
美容院のシャンプー時に苦しい思いをしたのは俺だけなのか?
無理すれば息できるはずなのに・・。
『じゃぁ。次は右腕で左腕を支えるように持って体を右に向けて下さい。』
言われた通り、体を右に向けたが、も少し息を吸わせてくれ。
『ご自分の右手で左手を触っているのわかりますか?』
「はい」
『いいですね。次は私が指先から肘にかけて順番に触っていきますから、触られた感覚がない部分があったら言ってください。』
『指先から行きますね。』
指をむぎゅっと掴まれて、ウム感覚あるね。
次に手の甲を軽くつままれ。ウン大丈夫。
次に手首のチョイ肘側。問題ない。
次に肘の少し上で手首より。って。手を引っ張らないで、左手の手の平があなたの右胸にがっつり触れてるから・・。
わざと?わざとなの。
わかった。ここで、もみもみしたい感情を沸き立たせてリハビリの効率化を図っているんですね。
くそー!左手ピクピク位しか動かねー!
そんな馬鹿な感情が爆発していたが、看護師の胸に名札が付いているのに気が付いた。
「てんし・・。」
やっぱり俺は死んでいるんじゃないだろうか・・。
その時、がしゃりと音がして白髪、白髭で白衣のイケメン老人が部屋に入ってきた。
イケメン老人・・。略してイケおじで。
イケおじは看護師のテンシさんに声を掛ける。
『どうじゃ。問題ないか?』
『はい。先生。腕の方は問題なさそうです。』
イケおじはお医者さんでした。
『そうか。そうか。それはよかったのう。次はインプラントの方を確認するから、腕は固定具に戻してくれるかのう。』
『はい。先生。』
そう言って、看護師のテンシさんに苦行と言う天国に誘われるのであった。
今度はイケおじが紙に書いた絵や発した言葉に回答していくように言われた。
まず、イケおじが紙に書いたのは地面の上に立つ、家と木だ。
イケおじは地面の部分を指して、『この部分は何とかのう。』と聞いてくる。
俺は地面と答えたつもりが、口から出た音は『あなる』だった。
俺の脳は「あ・ぬぁる」と書くのだと言っている。
「あ」は一つので「ぬぁる」は大地であるらしい。
次にイケおじが紙に書いたのは背の高さが大中小の女性だ。
大は細い線の女性。中は普通の女性、小は太った女性。
イケおじは大の女性を指して『この人を形容する言葉はなにかのう』と聞いてくる。
俺はちょっと迷ったが「スマート」と答えたが、口から出た音は『すまた』だった。
俺の脳は「すまたぁ」と書くのだと言っている。
この言葉は形容詞であって、1文字毎の意味は無いようだ。
しかし、イケおじの書くこの絵はセクハラにならないのだろうか。
なぜ女性で書いたイケおじ。
あと、スマートフォンならぬスマタフォンはちょっといやだ。
次はイケおじが言葉で問題を指してくる。
『儂に今の時間を聞いてくるかのう』
俺は「今何時ですか?」と聞いたつもりだったが、口から出た音は『ぼっきいじくるな』だった。
俺の脳は「ぼっく・きぃじ・くる・なぅ」と書くのだと言っている。
「ぼっく」が何々ですか?、「きぃじ」が時間、「くる」が接続詞、「なぅ」が今現在、だと言っている。
「なぅ」は英語と同じなのか?
昔流行った日本語にもあったな。あれって「今時の」って意味じゃなかったっけ?
そういえば「今何時だい」って落語もあったな。代金誤魔化すやつ。
次はイケおじも言葉で問題を指してくる。
『儂にお主の名前を教えてくれんかのう』
俺は「私の名前は草薙雄介です。」と言ったつもりだが、口から出た音は『いんけいたってるユースケ・クサナギ』だった。
俺の脳は「いんぐ・けぃ・たって・るぅ「ユースケ・クサナギ」」と書くと言っている。
「いんぐ・けぃ」が私自身、「たって」は名前、「るぅ」は接続詞、後は自身の名前だと言っている。
何だこれ。気持ち悪い。考えていることと口から出る言葉が違う・・。
『うん。問題なかろう。』
最後にイケおじの白衣に付いていた名札を読んだ。
「かみ・・。」
やっぱり、俺死んでるよね。
ちなみに看護師のテンシさんはナースキャップを付けていなかった。
その代わりのカチューシャなのかプリムなのか頭に付けた輪っかを光らせていた。
それと後で聞いた話では、カミさんはこの大学病院の医院長をしている方だそうだ。
そして、イケおじのカミさんと看護師のテンシさんが部屋から出ていくと、真っ赤な顔をした佐井田さんに子供達の教育に悪いと超痛い拳骨をもらった。
そして俺は「解せぬ。なぜだ・・。でも生きててよかった~。」と右手で殴られた頭をさすりながら呟くのであった。
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