第11話
青く澄んだ空に、眩しい太陽が輝いている。
見た目も一新され、鮮やかな植物が生い茂るようになった大地に、爽やかな風景をぶち壊しにするうんこ臭が蔓延する。
「父上消化されてるじゃないか!ってかくさっ!」
うんこの塊になっている真昼に、ロイが一歩後ずさった。
しかし、ナナはなんら気にすることなくうんこに歩みより、ためらいなく手を突っ込み骨だけになった真昼を取り上げた。
「…っ!」
その光景に、ロイはショックを受けた。
「お父様、ナナ達ですんごいことしたんだよ。見てみて!」
―へー。俺のためになんかしてくれたんだ。でも、俺も見てあげたいんだけど、なんか目が再生しないんだよね~。
「あははっ!ほんとだ!見る目がないね!よく見たら、再生する度にうんちに皮膚負けして肉が溶けちゃってるね」
―ありゃま。
「じゃあ、まずは綺麗にしないとね。
ベル、お父様についているうんちを食べていっちゃって!」
―しょうがないですねぇ!お父さんのためとあらば、仕方なく、仕方なく食べて差し上げましょう!
ベルが口だけの不満を言いつつ、真昼の骨についているうんこを瞬く間に平らげていく。
さすがハエ。
見ている者たちがそう思った。
「んー。綺麗になってきたけどやっぱり臭いもついちゃってる…。
海も近いし、水で全部洗い流して綺麗にしちゃおうか」
―でも、海に入ったら俺の骨が酸で溶けちゃわない?
「大丈夫大丈夫!いっくよー、お父様!」
ナナが走り出し、勢いよく跳んで真昼と海にダイブした。
―おわっぷ。
激しい水しぶきを上げて海に落ちた真昼は、今度は骨ごと溶けていくだろうと思っていた。
しかし、水の冷たさと汚れが流れ落ちていく感覚はあるが、いつものように水に入った瞬間溶解!ということにならないことに、少し経ってから気が付いた。
―あれ?…ひょっとして、海が前の地球と同じ感じになってる?
再生した目で海中を見てみると、少し前とはまるで違う、青に染まった穏やかな海となっていた。
転生してくる前でさえ見たことがないほど澄んだ青い海。
神秘的な光景に真昼が見入っていると、海上から声が聞こえた。
「お父様!」
真昼が見上げると、透き通った海面から降り注ぐ眩い陽光を背にして、ナナが笑顔で真昼に手を伸ばしてきていた。
(綺麗だ)
言葉にならない感情が、真昼の胸を激しく揺らした。
真昼が感情のままに手を伸ばすと、その手を取ったナナが嬉しそうな笑顔になって、真昼を海面へと引っ張り上げた。
「ぶはっ!」
真昼が海面に顔を出すと、いつものように喉や肺が空気によって焼けただれることもなく、何年ぶりになるかわからない新鮮な空気と暖かな日差しを感じた。
「…これは」
「すごいでしょ!お父様がいっつも死んじゃってるから、ナナ達でお父様死なないように頑張ったんだよ!」
ナナの言葉に、真昼は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
普段は死にっぱなしで青白かった顔に血の気が戻ってくる。
「死なないなんて、いつ以来だろう…」
「お父様…喜んでくれた?」
ナナの期待する顔に、真昼は特大の笑顔で答えた。
「もっちろん!喜びすごいよナナ!」
「やったー!えへへ、ロイとも殺し合いになるくらい全力出したかいがあったね!」
「へー」
ナナの言ったことはわからなかったけど、まあそれぐらい頑張ってくれたってことなんだろうと真昼は納得した。
青い海に明るい太陽。
遠くに見える陸地は、真っ黒だった針山から平坦で緑豊かな大地へと変貌を遂げている。
これを兄弟姉妹だけでやったというのだから、俺の子供たちすごすぎない?なんて感じで真昼は得意げになった。
「素敵な送り物をありがとうナナ」
「お父様が喜んでくれると、ナナも嬉しい!」
ナナが笑顔で真昼に抱き着いた。
むにゅ~。
食べるようになったことで、女性らしく育ってきたナナの柔らかな体が真昼に押し付けられる。
真昼の戻ってきた血の気が、ちんちんにも集中した。
「ん?なにか硬いものが当たってきてるような?」
「あっ。久しぶりに心臓が動いてきたせいか、ナナの体で勃ってきたみたい。ごめんごめん」
「お父様、これってなんで硬くなってきてるの?」
「これは興奮することで勃つように男の体はできてるんだ!けど、しばらく放っておいたら勝手に小さくなってくるから、気にしなくていいよ!」
「ふーん」つんつん
「あはは!つんつんしないでナナ」
「……」さわさわ
「あのー、ナナ?そんなさわさわされたら、くすぐった気持ちいいんだけど」
「はぁはぁはぁはぁ」
「なんだか目が怖い感じになってるよナナ」
「……お父様」
「なに?」
「好き!」
真昼にはとびかかってくるナナの目が、ハートマークになっているように見えた。
「うおっ」
水しぶきを上げて海中に沈んだ二人が何をしていたのか。
それは二人とアオしか知らない。
とはいえ、しばらくして海から上がってきたナナのお腹が膨らんでることで、何があったのかは丸わかりだった。
「できちゃった!」
ナナは頬を染めて照れつつも嬉しそうだった。
「いやー。まさかやったらすぐお腹が大きくなっていくなんて、女性の体は神秘だね~」
不思議そうな真昼。
二人を見たロイが泡を吹いて倒れた。
「ち、父上ーーー!?」
―ええっと…、この場合おめでとうでいいのか?
―いいんじゃないですか?真面目に考えると、そこで白目むいてるロイみたいになりますよ…。
クロとベルの祝福を受けて、真昼が親指を立てた。
「家族が増えるよ!やったね皆!」
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