第7話

 雲から雷が落ちた。

 父上は死んだ。

「あびゃあああ!」

「父上ー!」


 海に入ってたら、お父様の体が溶けていった。

 お父様は死んだ。

「うおおおおー!」

「お父様ー!」


 そこら辺を一緒に歩いていたらつまづいて、谷か崖しかない大地に体を削られていき親父は死んだ。

「ぎゃああああ!」

―親父ー!?


 息してたら空気の毒素に耐えられなくなってお父さんが死んだ。

「はっ、はっ、はーん!?」

―お父さーん!


「というわけで、今日の話し合いは、父上が隙あらば死ぬことをどうにかしたいということについて話し合いたいと思う」

 最近ミドリの協力もあって、石造りだった家に木材が加わって、ちょっと住みやすくなった家の中で、ロイとナナとクロとベルが輪になって話し合っていた。

 ちなみに、家の隅っこにはリュウもいるのだが、そんな話し合いに一切の感心がないのか大きな体を丸めていびきをかいて寝ている。

「さんせー!」

「かー」

―目を離したすきに死んでるんですよ…。無理じゃないですか?


 ロイが言い出した話し合いに、ナナもクロも乗り気だったが、ベルだけは最初っから諦めムードだった。


「何言ってるんだ。父上は僕たちと違って、体の構造が比べ物にならないくらい脆弱なんだぞ。僕たちは父上の子供なんだから、少しでも長生きしてほしいと思うのは当然だろ」

―長生きも何もお父さんは本質的に死ぬようなことはありませんし、矛盾していますが私たちと違って、こけただけで死ぬ虚弱体質ですよ。相手が悪すぎませんか?

「はいはーい!ナナ、良いこと思いついちゃった」


 ベルの悲観的な意見に、ナナが待った!をかけた。

 ベル自身も、別に真昼が死ねばいいと思っているわけではなく、むしろそんなあっさりと死んでしまう今の環境をどうにかしたいと思っていただけに、ナナの自信にあふれた言葉に耳を傾ける。


「ナナが思うに、方法は二つ。

 お父様を死ななくなるくらいまで私たちでビシバシ叩いて鍛えれば、少しはお父様も頑丈になるんじゃない?」

「ぶっ殺すぞてめえ」


 ロイの笑顔でキレてる顔に、ナナがこれはダメなのかと首を傾げた。


「じゃあ、もう一つの方法しかないね」

―次はもう少しマシな解決案をだしてくださいよ。

「ちょっとー!私は至って真面目なんだからね!次の方法はナナの自信策なんだから!」

―本当ですか?

 ベルが疑わしそうにしている。

 それに対して、ナナは胸を張って答えた。


「ずばり、お父様が死んじゃうなら、お父様に何があろうと死なない環境にすればいいのよ!」

「それは…」

「かー」

―ほう…。


 その場にいた全員が、その意見に一考の余地ありと頷いた。


「空気は清浄に、海は清らかに。硬く荒れた大地を砂と化してしまえば、お父様は死ななくなると思わない?」

「確かに…、父上の貧弱さは種族的な違いからどうしようもないだろうから、この世界の環境を合わせた方がまだどうにかなりそうだ」

―しかし、この世界は荒れに荒れてますよ。それを私たちだけでどうにかできますかね?

「ナナ達の力を使えばきっと大丈夫!その代わり…」

「その代わり?」

「全員、本気でいくよ。例え、お母様が砕け散ろうとも」

―…えっ!?

 右手がどこかで驚いた気がしたが、ナナ達には伝わっていなかった。

 ナナの決意に満ちた顔に、ロイも覚悟を決めた。


「本気なんだなナナ」

「うん。名付けて『SDGS!(すっごくドガーンガガガスペシャル!)』。皆、協力してくれる?」

「かー!」

―もちろんです。

 全員が一つの目的に向かって頷き合った。


「ところで、その肝心の父上はどこに行かれたんだ?」

「かー」

―クロがさっきリュウのそばで寝ていたお父さんを見たそうです。

 全員がリュウの腹部を見た。

 薄っすらと、中から真昼のシルエットが見えている感じがする。


「…殺すか」

「やめなよロイ。せっかくだから、お父様がお腹の中にいる間にパパっと環境を変えちゃおうよ。

 そうしたら、お父様が出てきたときにあっと驚かせることができるんじゃない?」

「…確かに」

 父が喜ぶ顔を想像して、ロイは苦渋の決断をした。


「あんぎゃあんぎゃ」

―俺は眠いからさっさとどっか行け的なことをリュウが言ってます。

「くっ…!腹立たしいけど、今回だけは見逃してやる!その代わり、次はないからな!」

「あんぎゃあんぎゃ」

―任せとけ、真昼をクソにすることは頼まれなくたってやってやるよ。…だそうです。

「それをやめろって言ってんだよ!」



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