二十首連作短歌「差異と焦り」
板谷空炉
二十首連作短歌「差異と焦り」
死にたい、と 強く思えば思うほど 心臓の音 身体に響く
周り見て我が振り直し その先に 埋まらぬ差異の高すぎる壁
日曜日 カップル、夫婦、親子連れ すれ違う度感じる孤独
インスタの 婚約、結婚、出産の投稿溢れる 二十九の夏
明日から一週間がまた始まる なぜ今週も生き延びたのか
帰宅して「ただいま」と言い電気付け 気づけば寝落ち 今は朝五時
朝起きて 隣に寝てる君にキス そんな世界はどこにあるんだ
朝食のおかずはいつも三人分 そして三食それで生活
「行ってきます」 家を出るとき呟いて 心の中で言う「行ってらっしゃい」
夕飯をカレーにしようと決め、作り いつも三日後くらいに飽きる
勇気出し マッチングアプリ入れてみた 結果は惨敗 諦め消した
本日は親友とサシ吞みに行く、だから絶対残業しない
久しぶり 親友の笑み
ふざけんな 「おめでとう」とは言うけれど 相手の存在今日が初耳
進む
食器洗い、シャワー、洗濯、すべてだるい これもう全部明日でいいや
ズボラです しょっちゅう他人憎みます こんな人を誰が好きになる?
もういいや 生きてる意味はどこにもない 一人のままで
夜の橋 水量多くない川に どうして身投げできないのだろう?
「死にたい」と思う気持ちを上回る 「誰かに愛されたい」の願い
二十首連作短歌「差異と焦り」 板谷空炉 @Scallops_Itaya
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