第36話 仔龍

/   ←角


紅龍との闘いが終わり、ゴトーは仔龍を抱きこちらに向かってくる。


「ゴトーさん、ブレス、大丈夫でしたか?」


「ああ、問題ない」


『ピュイッ♪ キュピーー』


「きゃーー」

「うわー、これが仔龍ちゃん、可愛過ぎー」


『ピッピィ―♬』


無邪気な仔龍はゴトーの股間の角に勢いよくぶら下がる。

反動で、

「ウッ!」


「あー! 仔龍がゴトーさんの敏感の所に!」


仔龍は角を掴みグルグルと回りだす。


「――クッ」


「めちゃくちゃ回ってるー!」


「こりゃ、仔龍よ! 振動でゴトーがイッテしまうじゃろ!」


ゴトーは仔龍を両手で抑え胸に抱く。


『キュピ?』


「大丈夫か、ゴトー」


「・・・ああ、耐えた」


「そりゃえかったわ、子供がおるで大惨事、いやそれより、どうして仔龍がここにおる? 親はなして去ったんじゃ?」


「それだが、預かる事になった」


「預かる?」


「父親として」


「?」


「母親龍とはつがいになった」


「な、な、なしてじゃい!?」


「未亡人らしくてな。

「自分より強いのならその子の父親になれ」と。

断る暇もなくブレスを浴び、耐えたら育てろと勝手に話が進んで、飛び去った」


「……で、母親龍は育児放棄かえ?」


「いずれ人の姿となり、俺の元へと嫁ぐそうだ。いつになるかは分からないが」


「「「「「「……」」」」」」



腰蓑装着のゴトー。


女性陣にせがまれ仔龍を抱かせる。


「キャー、可愛過ぎー」

「キュートなの」


<ピュイーー♪>


「この小さいのがあのくらい大きくなるのか……」

「あーん、テイムしたーい。使役したーい」

「ゴトーさん (♡)。第3夫人でも……」


「ゴトーさんって転移人ですよね」


「・・・・・」「……」


「「浮遊」や「飛行」はギフトで、鑑定とかも普通に使えてましたし……」


「ゴトーよ、この連中なら晒してもええじゃろ」


「問題ない」


「その通り、ゴトーは転移人じゃ」


「それってチキュウから召喚された勇者様のことですよね」


「正確には勇者ではないんじゃが、チキュウからの転移人なのは確かじゃ。ゲンダラフ神から魔王討伐を頼まれ、このレイブル国に降り行動してる最中じゃ」


「帝国じゃなく、今回の転移人ってこの王国に来たんですね」


「2日前に召喚され来たらしいの」


「スゲー、本物の転移人か!」


「転移人としても強過ぎじゃないですか? 

龍と対峙して無傷とは、もう最強としか思えないですよ」


「大騒ぎになりそうだな、転移人」


「あまり目立たず行動するつもりなんじゃがな。

今回の件、仔龍やゴトーの存在、何もかも内緒にしてほしいんじゃが、ええか?」


「は、はい。このパーティなら大丈夫ですが」


「まあ歩く厄介事、これからの事を考えればいまさらじゃがな」


つがいということは、龍って人化できるんですか?」


「文献では長寿で知能ある龍はできると記されておる。他の種族と交わるのかは知らん。知らんだけで過去にはあったかもしれんが」


「紅龍とタッグを組んだら魔王なんて簡単に倒せるんじゃないんですか? いや、ゴトーさん1人でも」


「……なんか、ワッチもそう思えてきたわ」


★★


ガルツから予備の服を貰い着衣する。


「悪いな」


「これぐらい何とも。圧倒的闘いを見物させてもらいました。

子や孫ができたら自慢できる」


広場では仔龍とケルベロス、ブラックタイガーは追いかけっこをしている。


「龍族と魔獣が仲良くしてるなんて」


「……ありえんのう」


「いっぱいあったよー」


女性陣3人が紅色に光る龍の鱗を持ってくる。


「12枚落ちていました」


興奮するサミン。


「こんなのもう一財産だピョン!」 


「!」


エルメダは、サミンに対するゴトーの反応に、


「キラキラ……ガオー、なの」 


「!!」


ゴトーは語尾の言葉に頷き、満足げにサミンとエルメダに1枚ずつ鱗を渡す。


「へっ? え?」

「なの?」


リーダーのシュバルツが、


「ゴトーさん!古龍の鱗って1枚最低大金貨5枚 (500万円)の買取ですよ!さすがにこんな高価な物は……」


リーダー含む残りの3人にも鱗を渡す。


「「「……」」」


「俺や古龍と出会った事、仔龍の存在、その口止め料だ」


「……多過ぎるんですが」


シュバルツはシーナを見る。


「……まあ、ゴトーの気持ちじゃ。収めておけ」


ゴトーはシーナにも鱗を手渡す。


「この世界での今までの情報料だ」


「大判振る舞いじゃのう……」


妖精族のリンはゴトーの周りで、

<チラッ、チラッ>


「・・・・・」


<チラッ、チラッ>


「森を焼いた迷惑料だ」


妖精リンに鱗を渡す。


「アタイはマッパを信じていたぞ!」


★★


全員が帰り支度をする。


『ピュウィーー♪』

女性陣の周りを飛び回る。


「仔龍ちゃんとお別れ、悲しい!」

「名前はリュウノスケ、変な名前なの」


『ピピィー♪』


「これは婚約鱗(♡)」

「これで最高級の防具を新調できるぞ!」


「本当にいいんですか? 鱗だけでかなりの収入。ただここに居ただけで……」


「ゴトーに気に入られたんじゃからええじゃろ。鱗を売る店は心得ておるか?」


「しかるべきところで。手数料は取られますが」


「分かっとるのう」


「仔龍ですが街へ連れ出すと、大騒ぎになりますよ」


「じゃよな。大昔の権力者最強の象徴。上位種龍を手なづけられるんなら領地3つ分の価値はある言われておるからの。

卵を欲しているんは間違いなく反国王派に真龍神教。仔龍を祀り、信徒を増やす手段じゃろな」


「それにしてもアイツらよく紅龍の卵を奪えましたよね」


「闇魔は最高峰の魔術じゃからな。教団が魔人を作りだせるなら、使い捨てのよう扱い、これからも厄介なことになるかもじゃ」


「それに魔王復活ともなれば教団から新たに勇者選定があるかもしれませんね」


「教団か……これも因縁なのかいの……」


他の4人は帰り支度を終える。


「転移人のゴトーさん、英雄シーナさんと出会った事に、感謝です」


5人は感謝の意を伸べる。


「ここでお別れじゃが、縁があったらまた会おうぞ」


「はい。何か困ったことがあったら、いえ、ないと思いますが。それでも相談事があったらいつでもリーチェ領地のギルドまで尋ねてきてください」


「おう。なんかあったら頼らせてもらうわ」


シュバルツは小さな声で、


「けどゴトーさんなら教団どころか、いえ魔王討伐とて紅龍と組めば、この国、この世界でさえも手に入れる事も……」


「あまり変な旗(フラグ)を立てるでない。それはそれで現実になりそうでコワイわ……」


   ーカスピス秘境編ー 終了


  第1部 完


第2部はしばらく時間が掛かります




――

36 仔龍 終わり

37 冒険者の街 テオタビ

――


――

36.5話 キャラ編3


テオタビまでの途中。

キャリーバッグのステッカー。


「のう、今日の女子は誰じゃ?」


「○狐さんだ」


「せんこ……」


「800歳だ」


「800て、そんなんエルフでも生きられんぞ」


「娯楽本のような創作話、絵師が描いたキャラだからな」


「ゴトーが見せてくれるもんは、みんな物語になっておるんじゃろ?

チキュウではどのぐらい娯楽本が溢れているんじゃ?」


「全てを一括りにすれば何万、何十万、もしくはそれ以上か」


「……さすがにそれはないわ」


「お前が地球に来て文化に触れれば納得するだろう」


「行けんし、確かめる術はないわ」


「・・・そうだな」


――

  (ピコーン!)

危うくシーナさんの「地球行き」の「フラグ」が立つところでした。

おそらく近いうちにフラグ立つことでしょう。


この(ピコーン!)はたまに現れます。

ゴトーさんとシーナには聞こえず読者にしか聞こえません。

――


――

36.5話 キャラ編3 終わり

――

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GOTO 13 異世界に召喚された男 十里眼 @osa2117

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