第35話 紅龍

大型龍、紅龍が上空を飛来。


「シーナさん、アレって……」


「お、おう……」


ゴトーの元へと巨大な紅龍が降り立つ。


「これが、紅龍……」


ゴトーは睨む紅龍と対面。

仔龍はパタパタと両者の間を行ったり来たり喜んで飛び回っている。


両者睨み合いの沈黙。


「紅龍のオーラが凄すぎなんですが……」

「圧倒的存在感なの」

「ゴトーさん、魔法攻撃も使えるんですよね。けど……」


「ゴトーなら、いや、さすがに……」


「さすがのマッパもお陀仏だろう。なんまんだー なんまんだー」


激昂する紅龍は両翼を開き、怒りに満ちた雄叫びを上げる。


『GYOOOOOOOO!!!』


全身からの怒り。

威嚇と咆哮。


ゴトーはその挙動に動じず、紅龍に向かって手を上げ静止の構え。

一言二言声を掛けて紅龍に背を向け、仔龍を抱きこちらに駆け寄ってくる。


「え!?なになに?」

「なんでこっちに向かって来るんだ!?」

「コワイコワイ!」


「マッパ! こっち来んな!」


紅龍は呆気にとられ硬直しその場に留まっている。


「ま、まさか、またアレをワッチに……」


「アレ、ってなんですか?」


ゴトーが手にしているのはスマホ。

シーナの元へと。


「うわっ!」


妖精リンはスマホを見てエルメダの背中に隠れる。


「動画の撮影を頼むのを失念していた」


ゴトーはスマホを撮影モードにしてシーナに渡す。


「また闘うんを、「ドウガ」させるんか?」


「これほどのイベントは滅多にないだろう」


「こんなん一生あってたまるかい!」


スマホの録画を起動。

●REC


ゴトーは再び仔龍を抱え、紅龍の元へ駆け走る。


「なんかスマホ、高価そうでイヤなんじゃが……」


ゴトーと紅龍にカメラのレンズを向ける。


「お、おい、マッパはもう魂をこの「すまほ」に吸われてるのか?」


「魂うんぬんは関係ない言うておろう」


「なにこれ!? この小さい箱にゴトーさんと紅龍が入ってるんですけど!」


5人はスマホの画面を覗き、動画中の画面と実物を交互に見る。


「こんなの初めて見るんですけど」

「摩訶不思議なの」

「魔道具?」


「これはスマホいうもんで、魔道具みたいなものじゃな。ドウガというやつで後で繰り返して、今のこの出来事を見れるのじゃ」


「……すみません。よくわかりません」


「まあ、そうじゃわのう」


ゴトーは小さい仔龍を少し離れた場所に置き、再び紅龍の元へと駆け寄る。


待たされた紅龍は咆哮。

『GYOOOOOOOOOOOOO!!!』


紅龍は腕を振りかぶり、巨大な爪を振り下ろしてくる。

ゴトーは冷静に見極め、素早く横に動いて攻撃をかわす。


空振りし無防備になった龍の下腹部、胴体に素手でカウンターを当てる。

攻撃の衝撃で膝をつき、顎を下げ身体全体をプルプルさせる紅龍。


「えーー!?」

「紅龍に素手って、あり得ないんですけど!」

「おいおい! 何を見せられてるんだ、俺たちは!?」

「普通、魔法付加の掛かった剣とか攻撃魔法ですよね」


「……お、おう」


紅龍が衝撃から立ち上がり二撃、三撃と爪攻撃を加えるが敏捷に避けるゴトー。

隙を見て、脚、胴体を抉りダメージを与え、攻撃を繰り返す。


紅龍はいったん後退して尾を薙ぎ払い、目にも止まらない勢いで攻撃。

それを片手で抑えたまま維持。

ビクとも動かない尾に焦りをみせる紅龍。


「ち、ちょっと、シーナさん、あの攻撃で薙ぎ飛ばされないなんて!」

「それどころか止めた!」


「……ゴトーは、けっこう……頑丈なんじゃ」


「頑丈で耐えれるレベル?」


「逞しい(♡)」

「天下無敵なの」


「ゴトーさんってもう、魔族、魔王の領域じゃないですか!」


「本人は人族言うとるが……」


紅龍は引き下がり、大きな口を開けると中に光が灯る。

光は炎へと変化していく。


「ファイアーブレスです!」

「アレを喰らったら、さすがに!」

「絶対絶命なの」


ゴトーは宙に浮き、紅龍の下顎向けて飛翔し一撃を与える。


紅龍はむせて地べたを転げ回る。

口から黒い煙が排出。何枚かの鱗が剥がれ、四方に飛ぶ。


「えーー」

「どういうこと?」

「なんで、飛べるの?」

「浮遊? 飛行?」

「大昔の大賢者並みなの」


咳をしながら落ち着きを取り戻す紅龍。

攻撃を諦め、警戒しながらゴトーを睨み込む。


仔龍はゴトーと紅龍の周りをパタパタと飛び続け、

睨み合いのなかゴトーの頭にポンと乗る。


「圧倒されてません? 紅龍が」


「う、うむ……気圧されてるの……」


「アタイはマッパならやると信じてたぞ!」


「仔龍ちゃんにとってゴトーさんはもうパパなんじゃない?」


「恐いこと言わんでくれ……」


紅龍にひるまず堂々と話しかる。

耳を傾ける紅龍。


「会話しちゃってる」

「スゲーー!」


ゴトーは縛られているマッドネスの5人を指さす。


紅龍はギロリと睨み、口を大きく開けてファイア・ブレスを浴びせる。

<ゴオオオオオオオオオオ!>


「「「「「「「!!」」」」」」」


5人は焼かれ骨も残らず消滅。


「うわーー」

「これが龍のブレスか……」

「焼き尽くした……」

「跡形もないの」

「ゴトーさん、動じてねー。大物過ぎるだろう」


引き続き紅龍とゴトーの話し合い。


「対等というか、この場合ゴトーさんの方が実力が上?」

「ゴトーさん、格上かよ、マジ、スゲー」

「覇者風格なの」

「あの、シーナさん。あっ、シーナさんと結婚してるなら、私、第2夫人でも」

<パシーン!>

「サミン、いいかげんにしろ!」


その時、紅龍の口が大きく開き、口の中で光り炎が膨らみ始める。


「またファイアーブレス!?」


立ち尽くしたままのゴトー。


「え? 攻撃は?逃げないの?」


灼熱のファイア・ブレスがゴトーに向かって放たれる。


<ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!>


「「「「「「「!!!」」」」」」」


ゴトーは至近距離から炎を受け、広範囲に広がる炎の熱風はシーナたちにも迫ってくる。


シーナは瞬時に呪文を唱え、周囲に防御結界を張り巡らせる。


「凄い!高位の防護壁だ」


「熱っ!」


「これでも熱いってどんだけなの?」


炎を浴び続けるゴトー。


「古代龍の炎は鋼鉄さえ蒸発させるって聞きますよ!」


「マッパもアレには耐えられないと思うぞ……」


「さすがにゴトーさん、マズくはないですか?」


「お、おう……」


紅龍の炎が途切れ、立ちこめた土煙が収まると、

衣服が燃えて人王立ちの裸体のゴトー。

――

 (注) 

 モザイク推奨

――


「耐えた?」

「あの煉獄炎のような炎を……」

「あれに耐えるなんて魔王レベルですよ……」


「マッパは無事とアタイにはわかってた」 <キリッ>


シーナは防護結界を解く。


「助かりました、シーナさん」


「また魔量が空っぽになったのじゃ……」


紅龍とゴトーは再度対話、しばらくすると話し終える。

紅龍は人差し指の爪で仔龍の頭をポンと触れ、


<バッサアァー!! バッサアァー!!!>


上空へと飛翔し、山脈の方へと飛び去って行く。


「え? 帰っちゃったよ。仔龍ちゃんはそのまま?」

「ゴトーさん、追い返した?」

「マジかよ……」


「なんとか、危機が去りましたね」


「なんで飛び去ったんじゃ?」


ゴトーは空間収納から角を取り出し股間に装着。


「子供がおるで、一応、配慮はしてくれるんじゃな……」


「インパクトが強過ぎ」

「あーん、なくてもいいのにー(♡)」

「王者風格なの」


「なんというか、いい具合にせり上がってますね……」  


/ ←角


――

35 紅龍

36 仔龍

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