第34話 龍の卵

――

ゴトーさんは、チエコとエルメダが作った「腰蓑」(New)を装着、防御力が4上がった!

(ちなみに葉っぱは防御力が1しか上がりません)

――


野営地。

マッドネスの5人は縄で縛られグッタリと地面へとうなだれている。

その内の一人を尋問するガルツ。


リーダーのシュバルツはシーナに銀貨10枚 (10万円)を差し出す。


「ボクたちだけではマッドネスの連中に殺されてました。これ少ないですが謝礼です」


「律儀じゃの、冒険者の恩義かい。今はワッチの警護の一環じゃ。気にせんでええ、のう、ゴトー」


ゴトーは頷く。


「感謝です」


「アイツらの武器防具はけっこうな値になります。さすがAランク、高価な装備です」


武器と防具、アイテムの持ち物をひとまとめにしている。


「そうじゃの。売っぱらうもええかもじゃのう」


ガルツが来る。


「隠蔽の箱はドラゴンの卵だった。依頼者も用途もキリーヤさん以外聞かされていなかったと。

あと、龍はこの秘境に棲息している「紅龍」、その卵……」


「やっかい事じゃの。今頃、親は怒り狂っとるじゃろうな」


「箱を開けた瞬間、我が子を感知して飛んできますからね。それって開けた者の死を意味しますよね」


「……即死確定じゃのう」


「ギルドに箱ごと持っていきますか?」


「ギルドも迷惑じゃろ」


「……見なかったことにしてほっときます?」


「うーん、さすがにそれはのう……」


「ダメよ! 仔龍や卵は保護の対象でしょう?」


「亜竜や中竜種じゃない上位種古龍、さすがに手に余る。それに保護って大昔の決まり事で今は適用外じゃないのか?」


「それでも、ほっとけないでしょうに」


「返すとしても親龍から攻撃を喰らうだけだ」


「どうしましょう? ドラゴン・スレイヤーのシーナさん」


「んー、古龍の生態は謎が多くての。ワッチは中位種しか相手にしておらんし、上位は対処はよう分からんのじゃ」


「ねー、あの子なら知ってるんじゃない「激怒のリン」」


「激怒のリン……?」


「この領地、秘境を縄張りにしている森の妖精です」


「アヤツ、そんな呼ばれ方しとるんか」


「龍族と妖精族は交流があると、伝聞とかで聞いたことがあります」


「ちょっと関わりたくないよねー。雷小僧とか噂でしか知らないけど」


「んー、聞くだけ聞いてみるかの……」


★★


魔術師のチエコが空に向かって炎。

<ゴオオオオオオオオオオ!>


サミンがビクビクしながら、


「雷攻撃してきたらお願いしますよー!」


「天敵がおるから平気じゃ」


<パタパタパター>

羽がはためく音。

「ゴラァーー! 誰だぁ! 放火魔のヤローは!!」


妖精が野営地に飛来してくる。


「どこのクソガキん子じゃああ!」


「これが妖精……」

「口悪っ!」

「フェアリー、初めて見たの」

「かわいいー」


「アーン、可愛いは知ってるわ!」


「心配すな、草木は燃やしとらん」


「うわっ!この鬼が、今度はなにしてるんだ!いいかげんにしろよー!」


「尋ねたいことがあっての」


「ふざけるな!」


「ゴトーが睨んでおるぞい」


<ビクッ>


「マッパの「すまほ」は、やめさせろよ。……なんでまだマッパなんだよ」


「話とは龍族のことじゃが、お前さん龍に知り合いはおらんか?」


「龍族? アタイは会ったこともないし、種族同士仲はよくないぞ」


「そうなんか?」


「紅龍だろう。アイツら平気でアタイ達にファイヤー・ブレスを吐くからな。昔から何度も森を焼くなと言ってるが、言うことを聞かないヤツだ。さすがにアレにはアタイらはなにもできない。くやしいが」


「ちょこっと間に入って紅龍と話し合いしてくれんか?」


「とち狂ってるのか? そんなことできるか!!」


「仲は悪うても交流はあるんじゃろ」


「アタイは「古言語」なんて知らないぞ。ギフトを持ってたヤツも30年前に死んだ」


「……古言語か」


「持っとる人なんて聞いたことがないわ」


「古言語っていっさい文字が残されてない幻の言語ですよね?」


「オマエらなにを好き好んで龍に関わるんだ?」


「あの馬鹿な5人組が龍の卵を盗んでの。隠蔽の箱に入っておる」


縛られ地面に伏した5人。


「卵か、命知らずだな」


「卵をそのまま放置するのも酷でのう」


「……それはカワイソウだな。いくら龍がキライでも、生まれてくる子に罪はないよな」


「知らんふりして死んだら夢見が悪くなるでの」


「じゃあ、あの馬鹿どもの前で蓋を開けて、その隙にピューっと逃げるのはどうだ?」


「ワッチらは遠くから見守るから、妖精よ、それやってくれい」


「ふざけんな! そんなことやれるか!」


「頼むや。ほれ、飴ちゃん2個やるで」


「いるかー! お前がやれー!」


「さすがに龍のブレスは喰らいたくはないでの」


「アタイだって喰らいたくないわっ!!」


「お前さんなら素早いし、小さいし、目立たんし」


「やるか!ボケー!!」


やり取りを聞いていたゴトーが割り込んでくる。


「古言語のギフトなら俺が持っている」


「ゴトー!」

「マッパ!」


「親と子を引き離すこともないだろう。引き受けよう」


「お、おい、アタイはなにも頼んでないぞ!」


「ええのか? ゴトー」


「ただの興味本位、龍を拝める機会ならやってみよう」


「おいおい、古言語のギフトって」

「今そのスキル持ってる人族なんて存在しないんじゃないの?」

「武力、魔力、言語、完璧ですね」

「無敵なの」

「す て き(♡)」


「ゴトーさん、カッコイイです!」

「龍を恐れない姿勢、これが漢気!」

「ナイスガイなの」

「抱 い て(♡)」


褒めたたえるパーティの面々。


「おい、この獣人どもはマッパに心酔してるようだが裸に抵抗はないのか? どう見ても見た目変質者だろう」


「ゴトーよ。事の前にアヤツらの服を剥ぎ取って着んかい。龍に服の概念があるかは分からんが、できるだけ失礼なく怒らせたくないでの」


★★

――

 ゴトーは服を装着!防御力50up!

――


冒険服を着衣したゴトーは野営地の真ん中で隠蔽の箱を置く。

傍のマッドネスの男たちはギャーギャーと奇声を上げ喚いている。


その姿を遠くから見守るシーナ、

妖精リンとシューティングスター。


「まあ、隠れてても龍には察知されるんじゃがな」


「ブレスがこっち来たら、アタイは逃げるからな!」


「ゴトーなら大丈夫な気がするんじゃが」


「エンペラーごときとは格が違うだろう。アタイの爺さんの話だが、300年前に紅龍にちょっかい出した魔王は大ケガを負って、逃げ帰ったとか言ってたぞ」


「強い言われておるが、そんな言い伝えがあるんか……」


「え? もしかしたら紅龍、最強?」


「あっ、開けるよ!」


遠くのゴトーは膝をつき両手で隠蔽の箱の蓋を取り中身を覗く。

しばらくすると箱の中から小さな物体が飛び出す。


小型犬くらいの大きさの仔龍が小さい両翼をパタパタとさせ、空中で羽ばたきゴトーの周りを飛び回る。


「龍の仔? 雛? 孵化した!?」

「ということは……」

「擦り込みなの」

「えーー!?」


小さい仔龍は胸に飛びつき、ゴトーは抱きかかえる。


「すげー、懐いてる!」

「仔龍ちゃん、可愛い!」

「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!」


「シーナさん、この場合は?」


「……どうじゃろ?」


「妖精族のリンさん?」


「親、激オコ?」


「最悪じゃないですか!」


仔龍はゴトーの周りをクルクルと飛び回る。


「じゃあ、アタイはこれで、バイバイ」


シーナは逃げる妖精リンの脚を掴む。 <ガシッ>


「なっ!なにする!」


「一応、龍族とは関わりはあるのじゃろ。居てくれ」


「アタイ自身にはない!」


「頼むや。縁もゆかりもないワッチらよりは妖精のお前さんが居てくれた方がええじゃろが」


「イヤだ! 離せ! 雷かますぞ!」


「可愛いいねー」

「仔龍ちゃん触りたーい」


「はーなーせーっ!」


野営地の広場全体に影が落ちる。


<バッサアァー!!! バッサアァー!!!>


全長10メートル、両翼は20メートル、全身を紅色の鱗に覆われた大型龍が飛来して来る。


「「「「「「「!!!」」」」」」」


――

34 龍の卵 終わり

35 紅龍

――

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