第30話 AランクPT 「マッドネス」
野営地。
カスピス秘境、南の山脈から戦闘職のガラの悪い男たち。
4人の後に続くローブの魔術師は黒い箱を肩上へ浮かせ、
その後ろには不気味な白い仮面の男。
リーダーのシュバルツは、
「マッドネス。粗暴な奴らで有名です。アイツらの気分次第で間違いなく自分たちは狙われます」
「マッドネスって5人よね」
「仮面の男は知らないな」
先頭の男は凶暴そうな顔立ち、頭には頭形兜。
スキンヘッドと2人のモヒカン男。
魔術師と、白い仮面の男以外の装備は肩にトゲトゲ付きパットを装着。
頭形兜の男らはこちらを伺がい、大声で笑っている。
ゴトーが質問をする。
「あれは盗賊の類か?」
「冒険者ギルドに所属してますが実質盗賊と変わりません。違法麻草の売買や人身売買、数々の犯罪。真龍神教の教団とも繋がりがあると黒い噂が絶えません」
「この世界の冒険者や盗賊の装備はあれがスタンダードなのか?」
「いえ、あんな変なのはマッドネスくらいだと思います」
――個人的には肩パットは超好み・・・。
名作「○斗の拳」「○ッドマックス2」。
「絶対あの肩、重いよね」
「邪魔そー」
「ダサいの」
ガンツはその言葉にショックを受けている。
――同志よ。
「全員、自分たちと同じ半狼獣人です」
――シューティングスター同様の半獣人。
ケモ耳なしの見た目通常の人型か。
――異世界的にこの手の盗賊は、お姫様馬車か商人馬車での登場を望んでいたが・・・。
頭形兜の男を鑑定する。
――[鑑定]
◇
【【ステータス・ボード】】
【名前】チョキ
【性別】男
【年齢】42
【種族】狼人族
【ジョブ】盗賊
【LV】65
【HP】6567/6567
【MP】300/300
【攻撃力】558
【防御力】458(クレイジー・ベア毛皮(物理 魔法強化 +105))
【魔力】305
【魔法属性】
『火』『水』属性LV4
『無』属性LV6
【スキル】38
「嗅覚 スキルLV5」
「知覚 スキルLV6」
「感知 スキルLV6」
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【ギフト】2
「羅完拳」
<next page>
【履歴】
盗人→追剥→山賊→野盗→盗賊
→マッドネス・リーダー
【称号】
略奪キング
【状態】
正常
◇
――
――LVはゴブリン・キングよりプラス3。エンペラーよりは格下。
問題はないが、ギフトの「羅完拳」に要注意か?
憤慨するシューティングスター。
「獣人族の恥知らずめ」
「あんなのがいるから獣人差別がなくならないのよ」
「面汚しだな」
「屑オブ粕なの」
「サイテー」
「同族であろうが関係なく攻撃してきます。法治外の壁外、あの様子だと自分たちは狙われますね」
「標的にされるんはワッチじゃな。兜のチョキとは、ちょっとな……」
「シーナさん、知ってるんですか?」
「現役だった頃、ワッチに迫ってきおってのう」
「現役ということは、勇者パーティ以前ということですね」
「若かりし頃の大人のシーナさん、凛々しくて素敵です」
「……ん? なして昔の姿が分かるんじゃ?」
「実はシーナさんの姿絵、肌身離さずお守りに持ってます」
「………」
「後でサインを頂けないかと」
「あたし見たことない。見たい!」
「我もなの」
「見られるんはちょっと恥ずいわ」
「ぜひ拝見させてもらおう」
「ゴ、ゴトー……」
チエコはシーナの姿絵を皆に見せる。
姿絵には背が高いキリッとした美女の姿。
「これは男ならほっとかないですね」
「何じゃこの肌の露出の薄着は?こんなん着たことないわ」
「セクシーなの」
「絵師は誰じゃい、まったく……」
ウンウンと小さく頷くゴトー。
――想像通り、胸は少なめか。
「おい、なんか失礼なこと考えてないか?」
「気のせいだ」
「モテたというお話を聞きますね」
「……自慢ではないがの。それゆえ何人もの男がしつこく付きまとうての。その中でチョキの粘着は度が過ぎていて何度も何度も、幼体になっても諦めず襲ってくるのじゃ」
「うわー」
「ロリか」
「幼女の敵なの」
「さいあくー」
「出会った当初はアヤツはBランクの小童じゃったが、今はAランクに昇格、まあまあの使い手じゃろうな」
仮面の男と魔術師は少し離れた所へと腰を落ち着け、
頭形兜のチョキとモヒカンの手下が真っ直ぐとこちらへと向かって来る。
「あ、こっち来るよ」
「やはりスルーはしてくれんか」
パーティ5人は警戒態勢。
近づく男たちは女性陣を値踏みをするかのように伺う。
頭形兜の男チョキは、
「目を疑ったぜ。こんな所で会おうとはな。最高じゃねーか」
「こっちは最低の気分じゃわ。お前さんはワッチの会いたくないベスト3じゃ」
「それそれ、俺様に物怖じしないその気の強さ、そこに惚れた。オレは狙った女は必ずモノにする。やっと念願が叶うというものだ。LVの低迷したお前にランクAのオレ様が負ける道理はない」
「それでもお前さんには負けん思うのじゃが」
「ランクA、5人相手でも強がりは言えるのか?」
「サシもできんで、それ自慢することなんか?」
「うるせー! 勝ちゃーいいんだ、勝ちゃー」
「なしてワッチが逃げん思う。格上がこちらにおるからじゃ」
「そこに並んでいる役立たずどもがか? 助けになるとは到底思えんが」
「おいおい、なんだその男、毛皮にマッパって」
「股間に葉っぱ、どこの田舎者だよ」
男たちはゴトーを嘲笑。
「笑っておるのも今のうちじゃぞ」
――ゴトーよ、威嚇か殺気で追っ払ってくれい。
シーナはゴトーにアイコンタクト。<パチッ パチパチ>
「・・・・・」
――幼女は俺に演技を望んでいるということか・・・。
ゴトーは小さく頷く。
――よしよし、さすが伊達に相棒じゃないの。以心伝心は完璧じゃ。
さあ、このならず者たちにオシッコ漏らすほどの恐怖を与えるのじゃ!
ゴトーはシーナの肩に手をポンと乗せる。
「お?」
「愛するマイハニー、どうした?」
「え?」 ←シーナ
「!」 ←チョキ
「「「!」」」 ←シュバルツ チエコ ガルツ
「……」 ←エルメダ
<ガーン> ←サミン
「お、おい」
「俺はシーナの旦那だ。シーナとはラブラブ・パッションだ」
チョキは肩を震わせ、
「ほう……」
予想外の言葉に動揺。
「……そ、そういう訳での。わ、ワッチの、マイダーリンなのじゃ。強いぞい、怪我しとうなかったらとっととこの場から立ち去れい」
「萌え萌えキューンの、ラブ注入だ」
チョキの周りの空気が変わる。
「お、おい、煽り過ぎじゃ」
「ラブ注入ってなに?」
「やっぱりあの2人はそういう関係だったのか」
「お似合いと思ってました」
「あれは演技なの」
「ホント? フリーならあたしにもチャンスある?」
「ないの」
「えー」
「愛するハニーが欲しかったら、俺を倒すことだ」
怒りのチョキ。
――よし、ここで幼女の、
「やめてー! ワッチの為に争うのはやめるのじゃ」
このセリフまでがテンプレート。
シーナを見つめて目線で促す。
「……ん?」 凝視。 「???」
――ダメか・・・。なかなかの逸材の金髪亜人幼女だが、地球でのノリは一から教え込まないとならないか・・・。
「初めての対人戦。俺は手出しはしない。身体強化で防いで見せよう」
「……フン、虚勢を! オレ様が手を出すまでもない、おい!」
手下の3人は剣を抜く。
「殺れ!」
無防備に立ち尽くすゴトーに大剣、小剣で襲い掛かる。
「ヒャッハー!」
「木偶の坊めー!」
「死ねぇー!」
それぞれの剣が心臓、首筋、急所に剣を突き刺す。
<パキン!> <ペキン!> <ポキン!>
ゴトーの肉体は刃を跳ね返し、刃には亀裂が入り砕け散る。
「えーーー!」
「なんだってー!」
「跳ね返して、刃が!」
「メタリック・スライム並なの」
「ヒエエエー、化け物か!」
「ちくしょう! 鋼の強化か!?」
「チョキ様!どうします!?」
「―クッ!」
――Aランク級、剣での攻撃ではこの肉体を貫くことはできないと。
――気になるのはチョキのギフトの「羅完拳」。
どれぐらいの脅威なのか。未知数だが試させない手はないな。ここも挑発か。
「Aランクの力はこんなものか? ギフトでも使わなければ俺を倒すことはできないだろう」
「………」
「羅完拳とやらは飾りか?」
「………」
「警戒しなくてもいい。先ほど同様、俺は動かない」
「ホントだな!動くなよ、動くなよ、絶対動くなよ!」
――いい返しだ。
「なら、喰らわせてやるぜ」
チョキの右腕から闘気のオーラ。
「ハアアアアアアアアアアアアア! 羅完拳!!!」
立ちすくむゴトーのボディにグーパン攻撃。
ボデイに拳がのめり込む。
<ボギッ!!>
右の拳の骨が粉砕。
「ギャアアアーー!!!」
地面を転げ回る。
「チョキ様ー!」
「うわああ! 手があ! 手がああああああ!」
残りの男たちは気圧され、チョキを担いで魔術師の場所へと。
「おい、回復薬、回復薬!」
「痛えええええ!」
「チョキ様ー!」
――なかなかの逸材、リアクション芸人。合格。
シューティング・スター、シーナが駆け寄ってくる。
「相変わらず敵なしじゃの……」
「さすがです!」
「無敵なの」
「あなた、す て き(♡)」
「しかし、こんな強化、見たことないですよ。本当に、まさか転移人……?」
「・・・・・」 「……」
――
30 AランクPT 「マッドネス」終わり
31 魔人キリ―ヤ
――
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