第22話 テラウスの冒険者
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ゴトーはその場を離れて野営地の常設した竈の所へと行く。
シーナは見つめ続ける若い男の前に近づき、認識阻害を解く。
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いきなり姿を現したシーナに他の4人は驚く。
「うわっ!」
「赤い目?……亜人? えーー!?」
「すごい、やっぱり見えないだけで周りに潜んでいたりするんだ」
シーナは5人組パーティの元へ、片手を振りながら近づく。
「攻撃の意志はない。ワッチらはカスピス秘境からの帰還じゃ。連れの男のお目汚し悪いのう。ちょいと衣服を燃やされてのう」
「あれはAクラス中位の「ファイヤー・グリズリー」の毛皮?倒したんですか?」
「連れがな」
体格のいい男が驚く。
「なんという強者、漢なんだ」
「最初変態かと思ったけど、そう聞くと渋いというかカッコよく見える、ふしぎ!」
背中に矢を背負う女性は、
「素敵な雄……。あたしの勘が彼は強いといっている。
あ、あの人、フリーなんですか?」
「おい、ここで婚活はよせ」
「時と場所は選んでらんない。優良物件ならなおさら!」
認識疎外の効かなかった若い男が、
「お前たち、あまり失礼な事は。すみません」
「かまわん」
「自分たちはリーチェ領地の冒険者「シューティング・スター」。自分はリーダーのシュバルツです」
「新進気鋭のBランクパーティか。噂はこの耳にも届いておるぞ」
「いえ、全然まだまだです」
「失礼ですが、シーナ・アルフレッタ様ですよね」
「え!? ドラゴンスレイヤー?」
「金髪赤眼の悪魔の異名の!?」
「おい、滅多なことを! 獣国の危機を救ってくれたオレたち獣人にとっての英雄だぞ」
「すごい! 元勇者パーティの魔術師だー」
「普段は名も姿も控えておる。お前さんらなら大丈夫と判断して晒したでの」
「分かりました。自分たちと世代が違いますが、黒竜討伐では獣人国を救った御恩は忘れません。アルフレッタ様は我が国の英雄です」
「帝国との戦争を停滞させたシーナ・アルフレッタ様か」
「様付けはええ。いまは普通の冒険者として接してくれると有り難いわ」
興奮した魔術系ローブの女性が、
「わたし、シーナさま、いえ、シーナさんが目標で、憧れています。握手お願いできますか?」
「お、おう」
「キャーー!」
一番幼い幼女がシーナに抱きついてくる。
「な、な?」
「珍しいな、エルが人見知りしないなんて」
「エルはよく、勇者さまの伝記を読んでるわよ」
シーナは歓迎を受け、男女5人のパーティメンバーを紹介される。
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リーチェ領地の冒険者
パーティー名「シューティング・スター」
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リーチェ領地の冒険者
パーティー名「シューティング・スター」
シュバルツ 男 剣士 LV60 男21歳
狼人族(半獣人)Aランク下位
ガルツ 男 タンク LV56 男20歳(脳筋)
狼人族(半獣人)Bランク中位
チエコ 女 魔術師 LV55 女22歳(常識人)
猫人族(半獣人)Bランク中位
サミン 女 狩人 LV52 女24歳(婚活女)
兎人族(半獣人)Bランク下位
エルメダ 女 狩人 LV55 女9歳(無口)
狼人族(半獣人)Bランク中位
全員 ケモ耳尻尾なしの半獣人
――
「シューティング・スター」の目的は、カスピス秘境周辺の素材採集の依頼。
シーナはゴブリン・ロード、キングの存在を語り、魔王関連の情報収集。
ゴブリン・キングの存在を聞いて、表情を引きつらせるシューティング・スター。
「ゴブリン・キング……」
「ゴブリン種100匹に囲まれたって……」
「小さな村なら全滅ね……」
「オレたちも下手したら遭遇してたんじゃないか?」
「魔王復活の可能性。街でもギルドでもそのような噂は聞いたことありませんね」
「復活してるなら耳に入ると思うけどねー」
「まあオレたち下っ端の冒険者だからな」
「自分たちは10日以上ここを拠点にしていて、新しい情報は知り得ませんね」
「あの、シーナさんはあの人の
「黙れ、サミン!」
「なんなら交尾して子種だけでも」
<パシーン>
「いてててて、いたいピョン」
「あなたは黙ってなさい!」
「それにしてもゴブリン・キングですか。厄災級の魔物ですね……」
「そんなのに出遭ったらわたしらのパーティは全滅だよね」
「うぬぼれじゃないが、今のオレたちならキングならギリギリ背伸びすればイケるんじゃないか。シュバルツもランクAになったし」
「無理だろう、いや、5人の連携で……」
「Aクラス下位ならともかく、上位だとお終いよ」
「キングはお2人で討伐を?」
「ワッチが1匹。ゴトーも1匹退治したの」
「2匹もですか!」
「あの雰囲気。ゴトーさんは相当のLVなんでしょうね」
「……まあ、常識を覆す強さでの」
「でもそんな強い人、見たことも聞いたこともないんですけど」
「噂で知っててもおかしくないですね」
「……この国の者じゃないからの」
「帝国出身ですか?」
「でも黒い髪って珍しいわね」
「ワッチも知らん遠い国でのう……」
ゴトーは少し離れた場所の簡易竈に集めた焚き木を入れている。
「ゴトーさんは戦士ですよね。武器はなんですか?」
「……武器は……物理じゃ」
「え? 素手?」
「ボブ・ゴブリンくらい弱いなら分かるんですが、ゴブリン・キングには?」
「……物理じゃ。ゴトーは魔法も使えるが、基本グーパンキックじゃ」
5人は驚愕する。
「えーー!?」
「魔法も使えるんですか?」
「ワッチも2日前に森の中で出会ったばかりでの。実力の程は、強いしか言いようないのじゃ」
「魔法の属性はなんですか?」
「おい、他人の特性の詮索は野暮だぞ」
「そ、そうね。ごめんなさい」
ゴトーは簡易竈に薪を入れ、魔法で入れ火を点ける。
「あ、ホントだ。魔法使える」
「まあ、あれぐらいの生活魔法ならオレでも、時間は掛かるが」
「けど、力に比重が傾いているなら使える方が珍しいよね」
ゴトーは黒いの空間からから巨大な肉の塊を取り出す。
「ばっ!」
シーナは慌てる。
1メートルはある解体した肉の塊。
大きさ質量を無視した光景にパーティ一同唖然とする。
「え?」
「あり得ないんですけど……」
「どうやったらあんな大きなものが」
「ギフト? あんなのあるんだ……」
「まさか、空間収納!?」
「えー!? 大昔の大賢者さまが持っていた幻と言われる、ギフト?」
「おいおい、ウソだろう」
「すごーい」
全員はシーナを見る。
「お前さんら、すまんが見んかったことにしてくれんかのう……」
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22 テラウスの冒険者 終わり
23 半獣人
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