第17話 甘味

ゴトーとシーナは森の中の小道を移動。


「―じゃがエールはこの国でも作っとるし安いぞ。味はピンキリじゃがな」


――日本酒が手に入らないのが辛いな。高価だが米が手に入れられるなら個人用に酒造する手も・・・。


――ウィスキーが存在しないのも許容できない。蒸溜という概念がないのなら特殊なガラス瓶を制作。いや、時間も手間も掛かり過ぎるか・・・。


――それに砂糖の希少さ。ソントレー国からの輸入。5キロ金貨1枚 (10万円)か。予想はしていたが甘党の俺には住みにくい世界だな・・・。


――そういえば「飴ちゃん」とか幼女は言っていたな。


キャリーバッグから袋を取り出し、包みから円形のチョコレートをシーナに渡す。


「……なんじゃこのウッサの糞を固めたような物は?」


「口の中に入れ舐めてみろ」


「……バッチくないんか?」


「チョコレートという甘味だ」


「甘味とな!?」


シーナは恐る恐る口に含む。


「………うまっ! チョッコうんまっ!!

この魔法のような口どけ、甘く濃厚な味わい、苦味にアクセントを加えたような贅沢な一品は!」


女子アナの食レポのように驚くシーナ。


「口の中が宝石袋なのじゃあ!

おい、このような味や食感は初めてじゃ!」


「この世界にカカオはないのか?」


「……かかお、初めて聞く言葉じゃ」


「高温多湿の熱帯地域の常緑樹から採れるのがカカオの実だ。原料となるカカオの豆から抽出されるものが、チョコレートだ」


「その気候ならソントレー国の南の方が当てはまるの。漫遊したことはあるが見たことが、待てよ、そういやこんな色で媚薬とか、精力増強剤があったような気がするぞ」


「微弱だがカカオには媚薬効果の効用もある」


「あれがカカオ、チョッコだったんじゃろか?」


「カカオだけではこの甘さは出ない。砂糖を加えないとな」


「砂糖とカカオを混ぜればこのような甘味になるんか……。

ワッチが常備しておる、ほれ」


シーナは白色の飴を取り出し、ゴトーに手渡す。


「飴っこじゃ、食べてみ」


受け取り口に入れる。

――砂糖と水のみの、べっこう飴といったところか。


「これ1個で銅貨3枚(3000円)じゃ」


「想像以上に高価だな」


「金を持っとるワッチでさえも手に入らん時は入らん品じゃ」


「甘味は裕福層の嗜好品というわけか」


「とても平民が喰える値段じゃないの。貧しい者は一生喰えんかもしれん」


「砂糖の原料はサトウキビで、ソントレー国からの輸入か」


「そうじゃ。獲れる量が圧倒的に少ないで、輸入物のほとんどは王族や上級貴族行きじゃの」


「この世界に甘味の菓子はあるのか?」


「王族御用達の甘菓子のカステラ、煎餅やクッキーがあるの。平民に出回るんは質の悪い砂糖で料理や調味料。稀に飴ちゃんになるくらいじゃ。

考えてみれば、これらどれも転移人から伝えられたもんかもしれんの」


「転移人は食の文化にも影響、貢献しているらしいな。しかし原材料の不足で気軽に甘いものを食べられないのは辛いところだ」


「甘味が欲しけりゃサツマイモや果物を喰えばええ。これもまあまあ結構な値段がするが、手が出んほどではない」


「餡子はないのか? 小豆、黒や茶色い豆だが」


「……あるかもしれんが、この王国では見かけたことはないの」


「牡丹餅や桜餅、羊羹はおあずけか・・・。

ケーキやシュークリーム、プリンも・・・」


「それはチキュウの甘味なんか? どれも魅惑的な甘さに聞こえるのう」


「牛乳、バター、砂糖、これらを揃えるとカスタードクリームなど色々なバリ―エーションな甘味が出来上がる」


「その3つでチキュウの甘味が出来るんか? 牛乳、バターは手に入れやすいが砂糖がネックじゃの。それだけで銀貨金貨をごっそり持っていかれるのじゃ」


「砂糖が手に入るならプリンができないこともない。チョコレートとは違うが、これもまたとろけるような味わいになる」


「チョッコと違うとろける味わいじゃと……」


「牛乳からクリームやバター。カステラのようなスポンジを作れるなら簡易的なショートケーキも可能だ」


「なんじゃと! ケーキいうモンがここで喰えるんか?」


「さらにその周りにチョコレートを塗り固めれば、チョコレートケーキ。フルーツを添えると、フルーツケーキだな」


「なんという夢のようなコラボレーションじゃ。

チョッコとくりーむ、どっちが美味いのじゃ!?」


「甲乙付けがたいな。どちらかと問われれば、どちらもとしか言いようがないな」


「おーー! 未知な食いモンじゃが、話を聞くだけでヨダレが出てくるのじゃ」


「少量でも砂糖が手に入るならプリンぐらいなら作れそうだが」


「なんと! ゴトーはプリンを作れるとな!」


「昔、ケーキ屋さんで修行をしたことがある。地球のような完全な味の再現は難しいかもしれないが、最低限な物はできるだろう」


「ゴトーよ!」

「何だ」


「砂糖を手に入れたらそのプリンいうモンを作ってくれるか?」


「それは依頼か?」


「おう!依頼じゃ!」


「いいだろう。依頼を了承しよう」


「おー!報酬は金貨何枚じゃ?」


「報酬はプリンを食べさせてくれればいい。俺も甘味に飢えている。要は材料はそちら持ち、俺は作り手側ということだ」


「おー!それでいいのじゃ!約束なのじゃ!嘘ついたら針千本飲ますなのじゃ!」


喜び子供のように踊って喜ぶシーナ。


「プリン♪ プリン♪ プリンなのじゃー♪ のじゃー♪」


――甘味を欲すのはどの世界の女性も一緒、ん・・・?


ゴトーは道の傍の茂みに自生している野生の根菜を引き抜く。

茎の下には白く太ったジャガイモのような根。


【鑑定】

甜菜(ヒユ科アカザ亜科フダンソウ属)

ビートの砂糖用品種群


「・・・・・」


――

17 甘味 終わり

18 甜菜

――

――

次回

異世界知識無双に突入か?

――


――

17.5話 キャラ編2 


2日目 朝の出来事

(サキュバスに会う前)


ステッカー、キャリーバッグのキャラが黒髪ケモ耳の少女へと変わっている。


「のう、これは誰じゃ」


「○生したら剣でしたの、フランちゃんだ」


「転生したら、剣? ん?……んん?」


「フランちゃんは黒猫族の少女だ」


「いやいや、転生したら剣って、一体どういうことじゃ?」


「言葉通りだが」


「いや、言葉足らずじゃろ」


「主人公の人族の男は事故で死亡し、人外の剣に転生した物語だ」


「剣に転生、じゃと……」


「転生した世界は、このテラウスのような剣や魔法のファンタジー世界。黒猫族の奴隷に陥ったフランと、意思を持った剣と出会う冒険譚の物語だ」


「なんじゃ、その奇怪な物語は。

おい、その話しを詳しく話すのじゃ」


「フランは奴隷商に捕まり、呪詛の首輪を嵌められていた。

町への奴隷の輸送中に―――――― ―――――― ――――――

―――――― ―――――――と、2人で冒険をするという話だ」


「おーー、メッチャ面白そうな話じゃ!」


「うむ。この物語は俺の一押しの話だ」


「師匠と弟子のフランとの関係性がええのう」


「いずれ、タブレットにあるこのアニメを観せてやろう」


「……ん? ある……?」


――

17.5話 キャラ編2 終わり

――


――

シーナから聞いた情報。

ーゴトーメモー

――

歴代転移人により品種改良、広まった物有り。

レイブル王国の食糧事情。

主食

大麦 小麦 ライ麦 

ジャガイモ サツマイモ


調味料 

醤油 味噌 ソース

酵母(酵母菌によりフワフワパン)

ハーブ茶(ハーブによる臭み摂り)

小麦から麺類 ウドンの普及  焼うどん有り

大豆から豆腐 湯豆腐 味噌スープは定番


塩 胡椒は比較的安価。


砂糖 ソントレー国からの輸入 

5キロ 金貨1枚 (10万円)


米 ソントレー国からの輸入 

1キロ 金貨1枚 (10万円)


農業

農作 農林 農耕 耕作 畑作


畜産  

牛 豚 鶏(畜産業は数が少ない)

獣 魔獣 魔物(冒険者の狩猟)


領地によって差はあるが、

レイブル国は食糧を自給できる範囲。


ソンガリーア帝国は貧窮貧困。

ソントレー国は豊かで輸出国。


街の中4人家族の夫婦共働き1か月の平均収入。 

銀貨5枚~(5万円~) 


冒険者に関してはランクが上ほど収入増。


肉料理(主に魔獣魔物) 

一人前 大銅貨1枚~ (1000円~)


葉物野菜スープ 

一人前 銅貨5枚 ~(500円~)


主食のパン 

銅貨5枚 (500円)


小麦粉に馬鈴薯の粉をかさ増しパン

銅貨2枚 (200円)

         

牛乳一杯 銅貨3枚 (300円)

卵一個 銅貨5枚 (500円)

チーズ 一人前 大銅貨1枚 (1000円)

バター 一人前 大銅貨1枚 (1000円)


嗜好品

煙草 10本入り 銀貨1枚 (1万円)

ワイン 瓶一本 金貨1枚 (10万円)

果汁酒 一杯 大銅貨2枚 (2000円)

エール 一杯 銅貨5枚 (500円) 


米酒 瓶1本 金貨2枚 (20万円)(輸入品) 

濁酒 瓶1本 銀貨8枚 (8万円)


酒税法により酒類の自家醸造、販売は違法。

貴族、大商会の独占。


梅酒、ハチミツ酒、芋焼酎有り。

ウィスキーの存在は確認は取れず。


輸入品、嗜好品は、貴族、裕福層のみ手に入れられる。

エール、果実酒は除く。

――

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