第16話 サキュバスの事情

――

「やめい!18Rにするつもりかい!

ただでさえ露出が多いんじゃ。よい子が読めんくなるじゃろが!」

――


「じゃあどうすればいいのよ!」


「もうおとなしく家に帰ってくれんか?」


「淫魔のプライドとして、唆らせるまで帰れないんですけど!」


「頑固な女子じゃのう。けどお前さん、ゴブリン・キングやエンペラーにも膝をつけんかったゴトーに膝を付けさせたんじゃから、けっこう凄いことしてるぞい」


「え!? 彼、何者?」


「……転移人じゃ」


「地球から!?」


「そうじゃ」


「へー、地球人とは縁があるわねー」


「どういうことじゃ?」


「まあ。いろいろって、前の転移人の勇者も、魅了できたわよ」


「は? 前の転移人と関係を持ってたんか?」


「精気は半分くらいしか吸えなかったけど」


「人族が耐えたんか? そりゃ凄いのう」


「誘惑は成功したけど、当時、私に攻撃してきた人族で生きたまま帰したのはあの勇者が初めてだったわ」


「本能や理性の抑制を抑えるとは、さすがの転移人なのかいのう?」


「最初から私のこの美貌、身体に抗えるとは……。自信をなくすわ……」


項垂れるサキュバス。


「まあそう落ち込まんでもええぞ。ゴトーは規格外の男じゃからな。お前さんぐらいの美貌でワッチが雄なら、お前さんを瞬時で押し倒しておるわ」


「えー、引くんですけどー。私、女性や子供に興味ないんですけどー」


「例えじゃい、ワッチにもないわっ!」


膝をついてるゴトーは立ち上がる。


「えっ!?」 

「お」


ゴトーは2人の元へと割り込んでくる。


「動けるんか?」


「ど、どうして魅了が効かないの!?」


「俺は巨乳至上主義者だ」


「ん……?」


「え? なにかこの人、カミングアウトしてきたわよ」


「そしてお前はストライクゾーンど真ん中だ」


「……すとらいく、ってなんじゃい?」


「超好みということだ」


「好みならどうして反応しないのよ!」


「そうじゃ!」


ゴトーは葉っぱを取る。<バサッ>


「「!!!」」


――

  (注)

 モザイクでお願いします

――


さらけ出した股間のブツは青く被れている。


「えー、なになに? 枯れてる? フンニャリしてるんですけど」


「おい! 昨日まで赤黒く腫れておったろう!」


「この葉に毒性なものがあるのかもしれない。朝起きたらこの状態。さすがに限界か・・・」


「言えや! 使われんくなったらどうするんじゃい! だからあれほど角を付けろ言うたじゃろうが! 付けさすぞい!」


「これでもいいなら相手をしてもいい」


「ん!? この状態でも唆るんか?」


「問題ない」


「じゃが淫魔じゃから精気を抜かれるぞい。のう?」


サキュバスはコクコクと頷く。


「「魅了抑止」「状態異常耐性」「精神耐性」のスキルは万全だ」


「魅了抑止、そんなスキルもあるんか」


「えぇー、わたし「魅了」MAXだから、勝てないはずないんだけどー」


「俺もMAXだ」


「え!? でも、同じなら妖魔補正で私の方が上なはずなんですけど……」


「あー、そういうことかい。ゴトーの方がLVが上なんじゃ。上限突破しとるからの」


「えぇーーー!」


「ん? 抗えるならなんで膝をつき固まってたんじゃ?」


「巨乳をより至近距離で堪能する為だ」


「「………」」


「上限突破なんて、そんなの魔王様しか聞いたことがないわよ」


「お、そうじゃ、お前さん魔王が復活しとるか知らんか? 同じ魔族じゃろ?」


「え? そういえば復活の儀式をやるとか、デモさんが言ってたわねー」


「……デモさんって誰じゃい?」


「魔王四天皇デーモンのデモさんよ。3カ月前に遊びに来てね」


「……四天王と知り会いなんか?」


「まあ、妖魔だからね」


「これは信憑性は確かじゃのう。で、魔王の復活はもうしとるんか?」


「復活したかは知らないけど、3ヶ月あれば、ね」


「どこにおるか分からんか? 前回と同じ帝国じゃ思うんじゃが」


「ごめん、それは聞いてないわ。もう抜けた身だし」


「抜けた身?」


「わたしね、昔、10柱のなかの1人だったの」


「……10柱いうたら、お前さん魔王軍の一味かい?」


「元よ、元。魔王軍は引退したの。ほら、さっき勇者のこと話したでしょう。

当時私の前に現れて、闘う前に速攻で淫魔の誘惑をしたんだけどね。抜くだけ抜いて散々弄ばれたあと、ケロッと正気に戻ったの」


「……その勇者、最初から正気だったんじゃないんか?」


「はぐらかされたけど多分そうだったかもしれないわね。まあ生気を半分吸わせてもらったから私も満足だったけど。

それで愚痴も聞いてくれてね。当時魔王様はセクハラが酷くてね。助平で、いやらしい卑猥な目で見られたり、ボディタッチしてきたり、我慢の限界だってのもあってね」


「魔王ってそんなキャラなんか? イメージが壊れるんじゃが」


「それで勇者から誘惑行為を説教され、諭され、魔王軍引退を決意して真っ当な身体になったのよ」


「真っ当な身体って、ゴトーを誘惑してたじゃろ」


「まあ、そこはね……。私に闘いを挑んだり、性的目的で襲う乱暴者には容赦なく生気をいただくけど、善良な旅人さんからは半分吸ってっサヨウナラって感じね。彼はもちろん後者のつもりだったわ」


「……なるほどのう。害はなさそうじゃが、ゴトーは魔王を倒す目的での。討伐対象には魔族も挙がっとるんじゃ」


「えー、私、真面目になってひっそりと生きてきたんだけどー」


「それは、まあ、ゴトー次第じゃけど」


シーナとサキュバスはゴトーを見る。


「俺に対して害意がない限り、こちらから攻撃することはない」


「でも誘惑しようとしてきたじゃろ」


「この行為は目の保養、ご褒美だ」


「褒美なんかい……」


「転移人、あの人と同じ懐かしい匂いする。外見や雰囲気が似ているわね」


「チキュウ人はゴトーみたいな奴ばっかなんか?」


「また彼と会いたい……」


遠い目をするサキュバス。


「あの夜の事は今でも鮮明に思い出すことができるわ。誘惑したけど逆に彼が壁ドンで迫まり、そして熱い口づけ。私の身体は昂ぶり、火照り、彼の手が、」


「性的描写はええて。欲求不満なら双方同意いうことで関係を持ってもええじゃないんか?」


「え!? ちょっと待って待って!アレとヤルの?」


「お前さんから誘ってきたんじゃろう」


「いやいやいや、アレよアレ!色色!」


「別にブツに貴賤はないじゃろ」


「えー! でもこのマンドラゴラが萎びたようなシナシナのモノを見てよ!」


2人はゴトーの股間を凝視する。


「なんか毒々しくて、性病を移されそうじゃない?」


「確かに触れるのも躊躇うの。なんかこう毒が発射されそうな感なのじゃ」


「感染とか変な病気貰ったら責任とってくれるの?」


「それを生業としとるんじゃ、リスクは自己責任じゃろ」


「……さすがに、ちょっと、今回は、遠慮しようかなー。

ほら、可愛らしいつがいもいることだし、ね」


「関係ない言うておろう。ゴトーよ、野外プレイを所望ならワッチはしばらく席を外すぞい?」


ゴトーの鋭い眼がサキュバスを捉える。


「いえいえ、お気持ちは、心遣いだけで。今回は、もう、はい、また機会があったらと。彼が万全な体調な時にでもいただけたら、と、はい」


サキュバスは逃げるように屋敷の中へと駆け、扉が閉まる。


「行ってしまったのう」


「眼福な光景だったな」


「ゴトーはゲイでも朴念仁でもないんじゃな」


「ああ、野郎に興味はない。グラマラスな体系が好みで、人並み以上に精力はある」


「そ、そうか」


「俺は性欲の権化だ」


「そこまでは聞いておらんがの。溜まってるなら押しかけてヤッてきてもええぞい」


「非常に魅力的な提案だが、今は依頼中だからな。お前の護衛任務が最優先事項だ」


「ゴトー……」


「仮に同意を得ていたしたとしても、護衛対象には見える位置に居てもらう」


「交わってる姿など見とうないわ……」


★★


5分後。

全裸のゴトーは自分の股間に聖魔法「ヒール」を掛ける。


「[ヒール]」 <ピカーーー>


「眩しっ!」


白く眩い後光が人王立ちのゴトーの股間を包み込む。


――ムダに神々しく見えるのがイラッとくるのう。

しかしこの癒し、聖者クラスじゃないんか? ゴトーはもう何でもありじゃわ……。


徐々に元の色、形に戻る。


「おー、元の色のブツに戻ったのう」


「ひとつ言っておく」


「……なんじゃ?」


「俺は不能ではない」


「お、おう」


「そして絶倫だ」


「そこまでは聞いておらんわ……」


「唆る証拠を今から披露しよう」


「いらんわっ! 見せんな!」


――

16 サキュバスの事情 終わり

17 甘味

――

――

次回

地球の甘味事情を知ったシーナの反応

――

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