第11話 LV上限突破
『グゥア゛ア゛ア゛アアァ!!!』
3メートルを超す巨体なゴブリン・キングが雄叫びを挙げながら、2人の元へと襲い掛かってくる。
心臓目掛けて銃を連射。弾丸は分厚く固い脂肪に拒まれる。
「おい、ケンジュウの武器では効かんらしいぞ!」
――熊と同様、魔物相手ではマメ鉄砲か・・・。
「魔量の少ない今のワッチじゃお手上げなんじゃが」
「依頼主を守るのも仕事の内だ。後ろに下がっていろ」
「お、おう、心強いのう、任せたのじゃ!」
★★
仰向けに倒れ、顔面が陥没したゴブリン・キング。
「キングをワンパン一発かい、エグいのう……」
ゴトーは自分の拳を見る。
――このみなぎる力。身のこなし、腕力、脚力が元の数倍。いやそれ以上か。あきらかに地球での力を凌駕しているな・・・。
「ゴトーは角はないが魔族に近しい存在じゃないんか? こりゃもう強すぎじゃろ」
「恩威の身体能力や肉体強化のおかげだ」
「チキュウでも魔物や魔族を倒してた戦士なんか?」
「地球には魔物も魔族もいなければ冒険者も存在しない。地域によっては猛獣はいる。しかしこんな化け物じみた個体などは存在しない」
「魔物や魔族がおらん?」
「人族と獣ぐらいだ」
「チキュウには世界を破滅と闇に追い込む魔族がおらんとな!?」
「いないな。それと魔王の存在、それに神も存在しない」
「はあ!?……どういうこと?」
「神話などでは崇める神教は数あるが、それは人類が創りだしたもの。少なくとも実体が目の前に現れ、神と対話することなどはあり得ない」
「いやいやいや、チキュウとはどうなっとるんじゃ?」
ゴトーは横たわるゴブリン・キングを眺める。
「俺にとっては、この世界がどうなってる、だ。お互い歴史や文化、固定観念の違う世界だと実感するな」
「……魔王もなんもかんもおらんとは、チキュウとは太平な国なんじゃのう」
「人間同士や国家間の争いはあるが、少なくとも化け物じみた魔獣に怯える事はないな」
「………」
ゴブリン・キングの頭部から幅10センチ、長さ30センチはある角を切り落とす。
――これが素材というやつか・・・。
眺めているシーナは、
「角1本で金貨5枚以上する思うわ」
――2本で金貨10枚?(日本円で100万円相当)
「キングなど、あまり出回る代物じゃないしの」
角は中が空洞。
「立派な角じゃ、ん? 洞角か……。ゴトーよ、ちょっと失礼するのじゃ」
ゴトーの股間の葉っぱを捲る。<ペラッ>
角の空洞とブツを比べる。
「ゴトーよ」
「・・・何だ?」
「収まるのう」
「・・・・・」
「大昔、ブツを角に嵌める種族が、」
「却下だ」
「なんでじゃ! 虫は集らんし、咄嗟のアクシデントでも大事な所を守ってくれるじゃろが」
「俺の中では、コレはないと言っている」
「ワッチはゴトーの為に言っておるんじゃぞ。さっきより腫れが酷いし、これ以上大きくなったら角も収まりきれんくなるわ」
「元から角に収める予定はない」
「いつ葉っぱが取れるか不安定な状態じゃろ。ドキドキハラハラするワッチの純な乙女心の心境を理解せんかい」
「そのような純な心や羞恥心があるとは思えない。いい加減その捲った手を放してもらおう」
シーナは手を離す。
「毒蛇もおるんじゃぞ。パックリ咬まれたらまずいじゃろ」
「仮定でこれを俺の股間に装着したとしよう」
「……うむ」
「他の冒険者に、嵌めた姿を見られる俺の心境を理解できないか?」
「キングの角じゃぞ。己がいかに強いかの証、象徴じゃ」
「転移人の俺は目立っていいのか?」
「……それはマズいの、そこまで考えが及ばんかったわ」
「分ればいい。俺の股間に角は不要。この話はなかった、だ」
「お、おう……」
「ただのゴブリンはたいした金にはならんが、キングならええ魔石が獲れるぞい。心の臓を取り出してみ」
ゴトーは言われた通り、胸部を裂き心臓部分を取り出す。
「中に魔石があるぞ」
裂くと手のこぶし大の石。
「魔道具に使う魔石じゃ」
魔石を水の魔法で洗浄する。
「ほー、大きく濃い立派な物じゃ。金貨10枚分(100万円)といったところか、儲かったのう」
「いいのか? 角も石もオレの物で」
「ワッチは何もしておらんじゃろ、持っておけ。逆にこっちの依頼料が霞むくらいじゃぞい」
「情報ほど価値のあるものはない。この石や金銭以上のものをお前から得ている」
「そ、そうか、そうじゃの、そうじゃろ」
ドヤ顔のシーナ。
「魔獣や魔物には魔石いう物が宿っておる。大きさや強さに比例して価値も上がるでのう。二双オオカミ。狂角クッマ、下級ゴブリンで銀貨数枚。魔物のゴブリン・ロード、ジェネラル、ワイバーンクラスで金貨2枚前後じゃな。
魔石や素材などギルドの冒険者カードを得てから売るのがええんじゃが、なけりゃ半分の額じゃ。売る時はワッチが手を貸そうぞ」
「助かる。その時は頼むとしよう、ん・・・?」
「どうしたん?」
◇
【【ステータス・ボード】】
【名前】後藤十三(ゴトウ ジュウゾウ)
【性別】男
【年齢】72→28
【種族】人族 (地球出身)
【ジョブ】暗殺者 (アサシン)
【LV】101
【HP】1011/1011
【MP】1011/1011
【攻撃力】1011
【防御力】1011
【魔力】1011
【魔法属性】
『火』『水』『土』『風』
『雷』『無』『聖』『闇』属性LV ALLMAX
【スキル】999
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【ギフト】99
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【履歴】
12~72歳 暗殺者 (地球)
現在28歳 暗殺者 (テラウス)
【称号】
テラウスに現れた暗殺者
全属性を所有する男
ゴブリン・キングを屠す者
【状態】
正常
◇
「LVが99から101に上がってるんだが」
「はっ? 限界値じゃろうが」
「攻撃力も1011。ゴブリン・キングを倒したからか?」
「上限突破など……いや、確か昨今の魔王が超えていたとか、そんな話も残っておるが、真偽の程は定かではないが……」
――転移人は限界を超える事ができるのか?
「やっぱチキュウでゴトーは魔王の位置づけじゃなかったんか? 見れんから気付いておらんかったとか?」
「それはない。地球での俺は人族で「暗殺者」だ」
「暗殺者……? ゴトーは国や人に使われておったんか?」
「仲間はいるが、基本俺は天涯孤独のフリーの一匹狼だ」
「ゴトーはチキュウの人族で最強だったとかはあり得んか?」
「・・・・・」
「なんか、自覚がありそうじゃのう……」
――
11 LV上限突破 終わり
12 シーナ 文明の利器に驚く
――
――
11.5話 キャラ編1
ゴトーはステッカーとアクリルスタンド・キーホルダーをシーナに手渡す。
「これは、ぺっこら……」
手触り感触に、
「軽いし、こんな材質見たことないわ。
チキュウのモン、ほんにキレイじゃの」
「貰ってくれ、俺なりの情報のお返しだと思ってくれていい」
「は?」
「この世界にはこのような女の子の姿絵はあるのか?」
「こんなんないわ。あっても自画像や本の挿絵でちょこっと描かれてるだけじゃな」
「なるほど」
「ええんか、貰っても?」
「問題ない。各グッズは「鑑賞用」「布教用」「保存用」と複数持ち。これは布教用だ」
「………?」
キャリーバッグの中から別物のキーホルダー、ステッカーを取り出し、バッグの横面、ハンドルに付ける。
「日替わりでキャラを変える。これが俺のルーティンだ」
「……それは、誰じゃ?」
「何でも知ってる委員長、○川さん。この白髪バージョンはブラック○川だ」
――
(注)
○物語のメインキャラ
――
「…………」
――
11.5話 キャラ編1 終わり
――
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