第6話 ステータス
――
怒りの形相、手の平を向ける金髪幼女シーナ。
――――異世界生活「モフモフ尻尾」生活の始まり、か・・・。
――
「ガルルルゥー」
唸る好戦的なシーナを前に銃を下ろす。
「すまない。少し、混乱していたようだ」
「ぐるぅ……」
シーナは大きなため息を吐きながら腕を下ろす。
「お主のその無表情の顔で武器を向けられてみ、恐怖でしかないのじゃ」
「悪かった」
「なんぞ白目で固まっておったぞい」
「どのぐらいその状態が続いていた?」
「瞬き5、6回、くらいかのう?」
「・・・そうか。その間、記憶を取り戻し、神との接触を思い出した」
「お、対話もしとったかい。神から魔王討伐の神託を賜ったのじゃな?」
「いや、依頼だ」
「は?……依頼?」
「報酬を前提とした仕事の依頼だ」
「仕事?……なんか討伐依頼みたいなのじゃ。神託と比べりゃ価値や重要性がダダ下がりなんじゃが」
「定義など人それぞれだ。それが落としどころだったということだ。気にしなくてもいい、こちらの都合だ」
「……よう分からんが、お主は勇者に選ばれ、魔王討伐を受けたんは間違いないのじゃな」
「そうなるな」
「まあ、この国に強い転移人が現れるのはええことじゃ」
「俺が強いかどうかは未知数、検証次第だがな」
「転移人勇者は強いと相場が決まっておる。先代勇者も恐ろしく強かったんじゃぞ。聞いておろう?」
「詳細は聞いていないが、勇者といっても複雑な事情があるようだな。転移人勇者の迫害や各国の自国勇者の存在と」
「まったく阿呆な話じゃ。自国の勇者の地位を誇示し、他国より優位に立たせよう国の真意が理解できん。
今の時代、本物の勇者言えるんはチキュウからの転移人だけじゃ」
「前勇者は相当、苦労をしていたようだが」
「先代勇者たちが現れたんは隣の「ソンガリーア帝国」。最初のうちは冷遇されておったが、強さやチキュウの知識などを見い出されての。
利用するだけ利用し魔王を討ち倒した後は、自国の祀り上げた勇者に手柄を横取りされおった。恩を仇で返すとはこのことじゃわ。
さらに暗部の暗殺隊を差し向けられ闇に葬ろうとした。まあ、返り討ちにしたがな。お主も気を付けた方がええぞ」
――なるほど。大きな力は恐れられる。国が認める者以外は排除、駆逐される法則だな。
「世界は変われどよくある話。古今東西、人類が繁栄する限り思惑、暗躍、裏切り、背信行為は無くなることはないな」
「どこの世界も変わらんのじゃのう」
「この世界での転移人の存在は、異端、か・・・」
「帝国はいまだに自国の勇者を排出しとるそうじゃが、この国「レイブル王国」は18年前先代王暗殺があって、勇者制度も廃止になっておる。
お主がチキュウから召喚されたいうことは魔王復活したいうことじゃろ。この国ももしかしたら制度復活で荒れるかもじゃの……」
「俺の存在は厄介ということか」
「時代も様変わりしておる。過去の先々王ならともかく、亡くなった先王や今代の「アレキシード・F・レイブル」現王は実直で仁政じゃ。
魔王不在の意味のない勇者制度を撤廃したんもアレキ王での。本物の勇者が現れ、この国に転移人がおるなら、案外理解を示してくれるかもじゃ」
――国と協力関係か。
「じゃが、王に付き従う野心を持った側近や「反国王派」の貴族、「真龍神教教団」が曲者での」
――真龍神教。神も要注意と憂いていたな。
「元々、魔王もおらんのに昔から教団が主体となり自国勇者を排出し続けておった。平民の支持や人気を得るためのプロパガンダでの。そうして信者を獲得してきたんじゃが、先代王暗殺の疑惑や、ここ数年いろいろな問題を起こしててな。
現在は落ち目で昔ほどの求心力もないが、魔王が復活するなら教団にとって、自国の、できれば教団専属冒険者の枠で勇者パーティを結成したいであろうな。
それか、昔の帝国のように転移人を利用するとかの」
――神も語っていたが、教団は人類を支配する計画を画策。このカルト的思考はある意味魔王より邪悪な存在だな。
――反国王派の存在。王国も一枚岩ではないと。主君は善政を施しているが、周りの側近や教団との弊害。
――立ち位置次第では迫害される未来しか見えないな・・・。
「この国の転移人の情勢は大方理解した。
政治体制だがこの王国は封建制で主君の下にいる諸侯たちが土地を領有、土地の民を統治する政治制度ということか?」
「そうじゃ。領有統治権いうやつじゃの」
「貴族や裕福層が特権を乱用、横行し、庶民は不平や生活苦に喘いでいる状態か?」
「領地にもよるのう。アレキ王に賛同する貴族も増えてきとるが、まだまだ反国王派の貴族がかなりの数を占めてるでの。基本平民に人権はない思うた方がええ。
アレキ王も国を変えようとしておるが、まだ若く発言力も発信力も不足しておる。
これでもだいぶ良くなってはいる。昔は酷く、悪徳貴族や教団も幅を利かせ滅茶苦茶じゃったんよ。
ワッチもまあ、いろいろとあってのう……」
――平民と貴族社会の格差は想像通り。今後の行動は領地を見極め、内政次第といったところか。
「この王国の政治体制は理解した」
「どれも理解、早過ぎるじゃろ。さすがは転移人と言ったところなんか?」
「転移人の勇者と明かさず、無名を貫き行動するなら問題はないな」
「目立たん限り安心かもしれんの。平民もチキュウからの転移人の存在を知る者も多くないでの」
「転移人を認識していない?」
「一昔前まではそこそこの地位まで上らんと、転移人の実情は知らんくてのう。徐々に認知、浸透されておるが、それでも大概の平民らは今だに魔王討伐の役目は自国勇者と教えられ、信じておるからの」
「お前が転移人の存在を知ってるということは、ただの平民ではないということか?」
「……ワッチは、元先代王直属、宮廷魔術師の訳ありじゃからの」
「・・・・・」
「ん? ワッチの訳ありを、ご所望か?」
――訳ありか。この手の者はトラブルの元。
関わらない方が無難だが幼女は今のところこれ以上のない情報に適した存在。
金髪赤眼幼女(アホ毛、犬歯付き)は異世界道中としては、望ましくキープが妥当。
「んー、しかしのう、ワッチの過去を曝け出すのはのう。うーーん」
――とりあえず勇者やその辺の考察は後回しだな。
今のこの現状は情報収集。ステータス。魔法の確認。
この森からの状況を抜け出すことが急務といったところか。
シーナはやれやれという仕草、表情で、
「まあ、どうしてもというのなら、ワッチの波乱に満ちた人生を語らんこともないぞ」
「この世界にはステータスと言う概念があるらしいな」
「えっ!?」
「・・・・・」
「……え?」
「ステータスだが」
「……」 「・・・・・」
「えーー!? おい、今の流れは……えぇーー!」
無言を貫くゴトーに、シーナは諦めたように、
「もうええわ! で、なしたって、概念がなんじゃい」
「この世界にはステータスと言う概念があるらしいな」
「チキュウではどうやって特性を見てたんじゃ?」
「そんなものはない」
「ない、て、どうやって己の強さを見極めるんじゃ?」
「認識、判別する数値化など地球上には存在しない」
「……チキュウは、そうなんか? それは、信じ難いのう……」
「ステータスのある世界観は物語の創作物、ゲームにアニメだけだ」
「……あにめ?は、分からんが、特性が見られんとは驚きモモの木じゃ。普通唱えりゃどの種族でも見られるぞ。
歴代勇者の記録も残っとるからお主も見られるんじゃないんか? 見てみたらええ」
警戒するゴトー。
「心配せんでも「鑑定」ギフトを持っとるのは、ワッチが知る限り帝国の「聖者」(聖女)か、あとはチキュウから来た歴代転移人くらいじゃ」
「お前には鑑定のギフトはないんだな」
「その目は疑うておるんか? 鑑定持っとるもんがそこらにゴロゴロしとるかい」
――この幼女の性格は実直。偽ってるようにはみえないが・・・。
「分かった分かった、ワッチはオシッコしてくるからその間に特性を見んかい。言うとくがLVやギフトの内容は晒さんでええからな。切り札を他人にホイホイ語るんは長生きできんからのう」
シーナはその場を離れて藪の中へと消える。
――適切な意見に配慮。理想的なデキる幼女。信頼に値する人物。
これで、○ランちゃんや○フタリアなような、
ケモ耳尻尾があるのなら文句はなかったんだが・・・。
――
(注)
「○生したら剣でした」
「○の勇者の成り上がり」
――
ゴトーは周囲を伺いステータスを唱える。
「[ステータス・オープン]」
◇
【【ステータス・ボード】】
【名前】後藤十三(ゴトウ ジュウゾウ)
【性別】男
【年齢】72→28
【種族】人族 (地球出身)
【ジョブ】暗殺者 (アサシン)
【LV】99
【HP】999/999
【MP】999/999
【攻撃力】999
【防御力】999
【魔力】999
【魔法属性】
『火』『水』『土』『風』『雷』『無』『聖』『闇』属性LV9
【スキル】999
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【ギフト】99
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【履歴】
12~72歳 暗殺者(地球)
現在28歳 暗殺者(テラウス)
【称号】
テラウスに現れた暗殺者
全属性を所有する男
【状態】
正常
◇
――ジョブが、「暗殺者」?
――「勇者」ではないのか・・・・・。
――
6 ステータス 終わり
7 初魔法
――
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