第4話 魔王討伐
神と名乗るゴンダラフは三度、傷を癒す。
「殺意むき出しって、マジでお願いしますよ。
遮らずお話を。事情を説明しますから……」
「・・・・・」
「まず、地球での貴方ですが、ご安心ください。現在死に瀕した状態を私が庇護し助命いたします。貴方が元の地球に戻った時の為の延命処置、それまでの生命活動維持は保証させていただきます」
「・・・・・」
「後藤さんですが、これは召喚を行うに対して幾度かありましたケースなのです。通常は肉体と精神そのままでここに召喚されてきますが、後藤十三さんの場合肉体は地球、魂の霊体だけがここに転移されてきました。
ここは宇宙の全てを司る「神の白い部屋」。特異な空間故、魂だけの存在から肉体は補修、再生されたのです。
現在後藤さんの実体は2つ併存となりますがご心配は不要。地球への帰還の際、元の肉体へと原状復帰となりますので」
「・・・事故はお前が仕組んだのか?」
「仕組んではおりません。事故を避けられなかったのは年齢による身体の衰えの低下が原因かと。自覚はあると思いますが若かりし頃なら猫を保護したまま、トラックを避け反対の歩道へと無事辿り着いていたはずです」
「・・・・・」
「話を続けさせてもらいます。元々事故の件がなくとも6日後に地球で神隠しの類で、貴方はここに召喚される予定となっていました。
しかし予定外の事故で召喚予定日が前倒しとなり、行き場のない魂が引き寄せられ、ここへ早まって訪れたという訳です」
「事故がなくとも俺はこの場に来た?
それは仕組んでいるのと変わらないのではないか?」
「その辺の概要はこれから要説いたしますから。本題に入ります。
この世界「テラウス星」には巨悪なる「魔王」が存在し、何万何十年も昔から人類との闘いが繰り広げられてきました。テラウス星の人族VS魔族。そして「勇者VS魔王」の図式です。
魔王は数十年毎に復活し、何代にも渡りこの世界での勇者側が勝利を収めてきました。ですが復活する度に魔王は強力な力を、または世代交代で、力や魔力の差が徐々に生じ、勇者は対抗するだけの手立てや手段を失っていきました。
それでも危機を乗り越え辛うじて勝利を続けてきましたが、このままでは次世代の魔王との敗北は濃厚。この世界は魔族の存在によって闇に覆われてしまいます。
そして500年前、勇者一行は闘いに敗れてしまいました。
この世界、テラウス星が闇に覆われ滅ぶことは我々神として本意ではありません。そこで苦肉の策として「勇者」「賢者」「聖者」の召喚です。
別世界からの魔王に抗える実力者。身体能力、魔力を底上げできる者の召喚を実行し、そして選定されたのが、地球という星からの人間でした」
「・・・・・」
「これが功を奏し、6代前から地球の召喚者たちは「転移人勇者」として「魔王討伐」を果たし勝利。
そして今代7代目の勇者に選ばれたのが後藤十三さん、貴方です。勇者に選定されし者。この世界を救う為の救世主。魔王討伐を果たす者です」
「・・・・・」
「今の時代「異世界転移」と言えば得心するでしょう」
「・・・そうか。妄想は十分聞かせてもらった。そろそろ地球に返してもらおうか」
「拒否するのなら地球上での肉体は直に息を引き取り、生涯を終えてしまいます。そうなると今現在ここに居る貴方の肉体も魂も消滅してしまいますが?」
「・・・・・」
「ですが、そんな後藤さんに朗報です。勇者としてこの世界で魔王討伐の要請を引き受けるのなら、討伐後無事に地球に帰還し、身体の全癒を約束いたします。希望するのならトラック事故前の時間に戻す事も可能です」
「・・・この話が本当だったとしても、過去に遡るとは思えないんだが」
「そこはこの宇宙を創りし者、万能なる宇宙神の成せる技ということで納得を」
「万能なら魔王討伐とやらは、神が実行すればいいのではないか?」
「私たち神は宇宙での星や生物への干渉は禁令となっておりますので」
「禁令? 宇宙を創った万能の神とやらがか? それに縛られる道理はあるのか?」
「宇宙はひとつではないのです。理も、そして神も……」
「勇者と言ったな。それがどうして俺なんだ?」
「屈強な者。強靭な精神力、素質や資質で地球人が選定されます。ここに転移されたのは使命と言っても過言ではありません。栄光なこと、誇ってよいのですよ。
さて、神から神託を行い魔王討伐を要請いたします。後藤十三さん、引き受けてくれますか?」
「どうやらお互いに価値観の相違があるようだな。俺は栄光など興味はない。断る。今すぐ元に戻せ」
「先ほども述べましたが、戻るのなら貴方は元の事故で生命が途絶える事になりますが、それでいいのですか?」
「それは俺に対する脅しと受け取るが?」
「いえいえ脅しなど、そこは誤解なきようお願いします。断った時点で事故により貴方の人生は消滅、死、無になるのです。
私は今後の人生を継続させる機会を与えているのです。新たな人生の一歩を」
「・・・・・」
「それに魔王討伐の要請は無償という訳ではありません。
先ほど申し上げた、不利に働かない。これは垂涎モノの褒美のことですよ」
ゴンダラフは満面の笑み。
<イラッ>
「失礼ですが後藤さんの今までの過去をダウンロードさせてもらいました。稀に見る大物です。
後藤十三72歳。地球では一流の「暗殺者」。自身の信条や価値観に照らし合わせ暗殺を生業とする職業。
殺めてますね。貴方の歩んできた道には屍の山が築かれていますね」
「・・・・・」
「原罪を責めているわけではありません。過去の贖罪など些細なこと。それほどの非情さ、精神力でなければこの過酷な世界を生き抜き、勇者としての責務は務まりませんからね。
それに貴方の仕事の理念には弱者には手を掛けないという一定のルールが存在します。見かけによらずなかなかの人格者。これも勇者に選定された要因かもしれません。
LVからして歴代転移人に劣らぬ今までにない超人の類です。
体力、身体能力、精神面と地球人とは思えぬほど発達。
知識も多義に渡り各方面のジャンルに精通。膨大な知識量、知性と教養。
聖書から歴史物、民族学、風習、芸術、医学、科学、化学、雑学、
ほう、ラノベ、○クヨム、○ろうも嗜んでいますか。
好きな小説は「○生したら剣でした」。
「○の勇者の成り上がり」。
「○職転生」。
今、継続中の作品は、
「○まクマ熊ベアー」ですか」
「・・・・・」(汗)
「次作候補に挙がっているのが、「異世界でモフモフ―」」
「それ以上、その口で俺の趣味や嗜好を囀るな」
銃口を向ける。
――
4 魔王討伐 終わり
5 交渉
――
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