第2話 転移人
――
「ニホン、思い出したわ。「帝国」の文献にニホンいう記述があるわ。
お主、他の世界から「召喚」された「勇者」、
「
――転移人?
――
「昔から実例があっての。転移人は僻地や森にほっぽかされるんじゃ。なんじゃったかな、「始まりの試練」言うたかの、意味はよう分からんが。
先代転移人は70年前、ワッチが生まれるちょっと前、帝国に転移されておる。お主も同じ転移人なんじゃろ?」
――「転移人」「召喚」「勇者」「始まりの試練」・・・。
顎に手を添え考え込んでいると、
「そう警戒せずともええ。この世界にとっては「異端」かもしれんがワッチ個人的には含むこともないでの。
ワッチは「シーナ」。名はなんじゃ?」
「・・・・・」
「名乗ったんじゃからダンマリはなしじゃろ、礼節がなってないのう」
「・・・ジュウゾウ」
「ジュ、ジュウ。ジュ、ジョオ? なんか言いにくいのう」
「ゴトウ。「ゴトー」でいい」
「名はゴトーか。確か「チキュウ」いう所から来とるんじゃよな」
――地球、か。ここは別世界。「異世界転移」「ファンタジー世界」、確定、か。
「どうなんじゃ? 違うなら違うでええんじゃが」
「俺は、地球人だ」
「やはりか。まさかこの「王国」に本物の転移人がやってくるとはのう。
先代らは魔族の多い帝国側に降り立つんが定説になっとるんじゃがな」
頭痛に悩まされながら情報を整理していく。
――「転移人」とは自身のこと。
地球から「召喚」された「勇者」?
この地は「王国」。「魔族」に「帝国」という単語。
――見た目に反し、幼女の年齢は高め。
――総合的判断からして、100%異世界へと突入。
――確定ならケモ耳「獣人」の存在、把握が個人的優先事項だが、
さすがに今この状況下では性急か・・・。
――今すべきことは、目の前のこの幼女の存在。現状の置かれた状況の確認。
「まさか、本物の勇者を見れるとはの、こりゃ驚き桃の木じゃわ」
キャリーバッグ、ステッカーを見て、
「ほんに変わった形状の背負い袋じゃ。ぺっこらも、めんこいのう」
――この中世のようなローブの服装。
幼女の犬歯、赤い眼。
さしずめ「吸血鬼」「亜人」という異人種、種族か?
――角の生えたオオカミ擬きは「魔獣」の類か。
「ところで、その持っとるモノが気になるんじゃが」
シーナは手に持っている拳銃に興味を移す。
「ワッチに向けたいうことは武器なんじゃろ。
チキュウの「魔道具」なんか? まさか炎や氷が出る言わんじゃろうな?」
――異世界定番の魔道具・・・。
「知りたいのじゃ」
「弾丸が出る」
「だんがん?」
「そうだ。この世界には拳銃や弾という概念はないのか?」
「……ケンジュウ、それは、
――火薬と弾を込めて着火する鉄突火槍か。
この言葉ひとつでここの文明度が低いと予想されるな。
「それと類似するような物だ」
「随分と小作りじゃの、こんなん見たことないわ」
小振りな武器に驚き感心するシーナ。
出会い頭での挙動を思い出す。攻撃態勢は魔法攻撃と推測。
「お前が俺に手を向けた動作は、」
茂みから2つの頭部を持つ犬が2体現れる。
『『ウゥゥゥ――』』 『『グルルルゥゥーー』』
二つ首の犬はお互いに同調しながら唸り声を上げ襲い掛かってくる。
「雑魚の双狼か、左側の1匹はソッチに任せるぞい」
シーナのかざした手の平から槍上に変形した炎が噴出、胴体を貫く。
銃で狙いを定め、頭部の額に向けて2発発砲。
2匹は地面へと転がり動かぬ死骸となる。
魔法の攻撃に目を見張り、シーナも銃の威力と音に驚いた様子。
「それがケンジュウの威力なんか?」
「それは火の魔法か?」
「「炎槍」じゃ。ソッチも急所に2つ、けっこうな威力らしいの」
「攻撃手段はそれだけなのか?」
「……まあ、そこそこは、持っとるのう」
――正体不明の男には手札は明かさず、魔法属性は多種に渡るということか。
現状俺の武器は2本のナイフと銃のみ。これが今の俺の生命線。
異世界的にこの場の優位性は、魔法のある幼女の方が格上。
格下はこちら側で間違いはないだろう。
「この森には他の獣も多く存在するのか?」
「メッチャおるぞ」
――地球とは異なる世界。巨大芋虫やオオカミ擬きばかりではない。
魔族という単語があるなら、魔物の存在も視野に入れなければならないか・・・。
――危険水域MAXで行動、及び情報収集に徹する。
銃の弾倉には残り3発。弾丸を補充する。
シーナは興味深くそれを見守る。
「小さな円柱じゃ、連続して対象を射止めるなど初めてな代物なのじゃ」
「飛発と同じ熱や衝撃によって爆発する物質、火薬を使用している」
「これがチキュウの武器、そこら辺の獣なら瞬殺するのう」
「弓、矢は存在するのか」
「あるぞ。他に矢爆いう矢に爆薬を仕掛け射るんのもあるわ。コレと比べれば使い勝手ははるかに劣るがの」
――炸裂矢に近しい物か。
日本での飛発は天文時代に伝来された物。
ここの文明度は16世紀前後。
異世界テンプレのような中世の世界観と予測。
「のう、ちょこっとでええから触れさせてほしいのじゃ」
「・・・・・」
「ダメなんか?」
「お前は人を殺せる武器を他人に預ける度胸はあるのか?」
「……そうじゃの。信頼関係もなく他人に武器は手渡せんわな。ただの興味本位じゃ。気い悪くしたんなら謝るわ」
「・・・分かればいい」
「ところ変われば武器も変わるんじゃのう」
「尋ねたいことがある。転移人とは何だ?」
「ん? お主はチキュウから召喚され、
「神」から「魔王討伐」を頼まれたんじゃないんか?」
――魔王討伐に、神・・・?
頭痛が襲う。
「――ッ!」
「どうしたん、具合でも悪いんか?」
「気付いたらこの森の中。少し記憶を忘失しているようだ。
召喚や転移人の言葉も、初耳。
記憶を思い出そうにも頭痛が病み、止まらない」
「そうだったんか? 頭でも打ったんかの、この森でそれは難儀じゃわ」
「・・・魔王討伐、とは?」
「召喚された転移人は最初に「神の白い部屋」で「神託」を受ける言われておるのじゃ」
頭痛が激しく痛みだす。
「神託を受け、魔王討伐を――--
(街中)
(子猫)
(目の前に迫るトラック)
激痛が頭の中を支配するなか、それらの情景がフラッシュバックする。
(白い部屋)
(龍の冠の青年)
――記憶が・・・‐‐--―――
――
2 転移人 終わり
3 召喚
――
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