GOTO 13 異世界に召喚された男
十里眼
第1話 金髪幼女との出会い
薄暗い森の中。
地面にうつ伏せの男が深い眠りから目覚める。
男の外見はスーツ姿で30歳前後。
引き締まった体型に、冷たく鋭い眼光。
手には銃が握られ、傍には自前の2wayキャリーバッグ。
冷たい地べたから起き上がると、激しい頭痛が襲う。
痛みを堪えながら、息を潜めて周辺の状況確認を行う。
鳥が囀り鳴き交わす声。見渡す範囲には巨樹が密生。
周りには色彩鮮やかな植物の群生。
――樹海? 密林?
原生林と見紛う光景に戸惑いながら、この場で昏倒していた原因を探る。
思い起こそうとすると頭痛が激化、意識が混濁し思考が閉ざされる。
――確か、ネコを助ける為に道路に、
その後にこの密林に? いや、その前に何か重要な出来事、が・・・。
胸元のスマホを取り出し電源を入れると「圏外」と表示。
遠くから獣らしき遠吠えがこだまする。
この場は危険な領域と認識。
キャリーバッグからサバイバル・ナイフを取り出し、
両手を自由にする為にバッグを背負い、警戒しながら慎重に歩き出す。
足元には得体の知れない昆虫、甲虫類が駆け巡り、
脚の生えた自立歩行するキノコが活発に動き回る。
巨樹を越えた先に雄牛並みの巨大化した2匹の芋虫が這い回り、
男を感知すると耳障りな音を鳴り響かせ、ゆっくりと擦り寄ってくる。
銃口を向けながら迂回路を思索していると、獣らしき疾走音が耳に届く。
五感を研ぎ澄ませ音が鳴る方向を注視。
目の前の藪を突き抜け、頭に角の生えたオオカミが男に迫る。
銃声がとどろき額に命中し、地面に突っ伏し息絶える角オオカミ。
死骸となった角オオカミに巨大芋虫が這い寄り、
白く尖った円形状に生えた歯でガリガリと咀嚼し始める。
――ここは、生態系が狂っているのか?
2匹の巨大芋虫は角オオカミの脚や胴体を引き千切り部位を呑み込んでいく。
ふと手肌の違和感に気付く。
ナイフの側面で反射させると、皺のない若返った顔が映り込む。
――夢か、幻覚か、それとも現実の・・・。
男は危機意識を最大限に高め、頭痛に耐えながらその場を後にする。
★★
道なき森を前進しながら、襲い迫る角オオカミを銃で射止め続ける。
所せましと群生するグロテスクな植物。
幅が3メートルを超える樹々、それらが視界や行方をくらます。
植物や枝葉を掻き分けながら進むと巨大な倒木が行く手を拒む。
残弾数を確認しながら迂回すると、
倒木の影から灰色ローブの金髪の幼女が現れる。
「!」 「うおっ!」
条件反射で銃口を向けると、驚いた金髪幼女も慌てて右の手の平を向けてくる。
お互い睨み合いが続き、空気が張り詰める。
――金髪に、赤い瞳?
膠着状態から困惑顔で幼女が語り出す。
「ワッチに、敵対の意志はないのじゃ……」
――のじゃ?
見た目の年齢が10歳以下、小柄で華奢な容姿。
長い金髪に、端正な西洋系の顔立ち。
特徴的な赤い眼に、口元から覗く1本の牙。
「腕は下ろすで、攻撃はすなよ」
年齢にそぐわない達観した言動。
聞いたことのない言語が耳に届いた時点で、日本語に変換される。
幼女は目を反らさず、慎重に腕を下ろす。
「これで攻撃はできん。理性があるならその武器みたいな物騒なモンを収めてくれんか?」
――手の平を向けた動作、これの意味するところは?
知らない言語が日本語に翻訳。これはまるで・・・。
銃口を向けたまま思考していると、
「あぁ!? こっちが譲歩しとるいうのに、それでも歯向かうんか!? それならそれでコッチにも考えがあるぞい!」
腕を上げ、再度右の手の平を向ける。
金髪幼女の威嚇と言動に、
――虚勢か実勢か?
「グルルルゥー」
唸り睨み続ける幼女の語り言葉は、精神年齢の高さを物語る。
妙な威圧感。胆力。経験則から只者ではないと判断。
――無理に火傷することはない。ここは一旦様子見か・・・。
銃を持った腕を下げる。
「ぐるぅ……」
険しい表情から緊張が解け、幼女も安堵して腕を下げる。
「そこら辺の輩とは違うの。話が通じる奴でえかったわ」
――こちらからの日本語は通じるのか? 予想通りなら変換されそうだが。
「すまなかった」
「コッチも声を荒げて悪かったわ。1人彷徨うてて気が立っててのう。ソッチも1人ならそれはお互い様か?」
「俺の言葉は通じているのか?」
「知らん言じゃが「スキル」があるでの。ワッチを視認しとるいうことは「LV」が高いか「阻害解除」でも持っとるんか?」
――LVという概念。 阻害解除とはスキルの類・・・。
「その筒みたいなモンは武器なんか? そんなん初めて見たわ。
変わった背負い袋に、けったいな格好じゃ。正装なんか?」
服装はグレイのスーツにネクタイ。
「その背負っとるのに描いておる、姿絵はなんなのじゃ?」
キャリーバッグの横面にはステッカーが貼られ、ハンドルには同キャラクターのアクリルスタンド・キーホルダーがぶら下がっている。
「これは、「○田ぺこら」だ」
「……うさだ、ぺっこら?」
「○ロライブプロダクション、バーチャル○ouTuber。俺は初配信からの古参のリスナー。関連商品はフィギュアからコンビニ商品まで全て網羅、コレクションをしている」
「………?」
幼女は理解が及ばない面持ち。
「なして、おさげにニンジンを括りつけておるんじゃ? 食いモンで遊んどるんか?」
「これはこの子の、アイデンティティーだ」
「……あいでんててー?」
「個人の素質、環境との相互作用から形成されたモノ、ニンジンはなくてはならない最重要アイテムだ」
「………???」
当惑する幼女。
――可能性は0に近かったが、ここは少なくとも地球ではないということが判明・・・。
「ニンジンが……重要?」
「これはマメ知識だが、この子の実家はニンジン農家。腹がすいた時の非常食となる」
「……飢えたときに喰うんか。それなら納得できんことも、ないわな。
普通は括りつけることはせん思うが」
「尋ねたいことがある。ここは、どこだ?」
「ん?……どこ、とな?」
「地名は?」
「……カスピスの秘境じゃが」
「何大陸だ?」
「ユルゲン大陸じゃ。お主はここをどこ思うとるんじゃい」
「俺は、日本に居たはずだが」
「にほん……? 知らんのう。
言語も帝国でもなし、小さな周辺国出身か?
いや、訳ありなら無理して明かさんでええわ。お主が何者でもワッチに危害を加えん限りどうこうする気はないからの」
――幼女は俺に対して優位性を保ち、そして敵愾心、敵対感情はなし・・・。
「これでも各地を周っとるが、まったく耳にしたことがない言じゃ。その装いも、ぺっこらも」
シーナはまじまじとゴトーを凝視してしばらく考え込む。
「ニホン、思い出したわ。「帝国」の文献にニホンいう記述があるわ。
お主、他の世界から「召喚」された「勇者」、
「
――転移人?
――
1 金髪幼女との出会い 終わり
2 転移人
――
―――――――
この作品を読んでくれて有難うございます。
下手な情景描写(ほとんど無しに等しい)、
文章ですが、よろしくお願いいたします。
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