プロローグ

 桜の花びらも満開となり、春の陽気を肌で感じることができる今日、

 ここ千葉県匝瑳市立第五中学校ちばけんそうさしりつだいごちゅうがっこうにて入学式を終えた中学生たちがたくさんいた。

 安野 日向子もその一人である。

 小学5年生の頃、匝瑳市に転校してきたため、友達はあまりおらず一人でいる事が多かった。

 そのため入学式を終えた彼女は、すぐに家へ帰ってしまった。


 「明日は自己紹介かぁ~。」

 家に帰ってきた日向子はとても困っていた。

 なぜならば、次の日の自己紹介について人前で話すことを想像していたためである。

 成績ではいつも10本指に入っている日向子だが、人前で発表することに関しては、他の人よりも言葉が詰まってしまったり、上手に話すことができない。

 実は日向子は※ADHD持ちなのである。

 実は、転校前に通っていた小学校ではADHDという理由でとても多くの苦労や苦痛を味わっていた。

 そのため日向子の両親は引っ越しと転校を決意したらしい。

 彼女自身も異論はなかったそうだ。

 この経験から彼女は、『中学校でも差別されるかもしれない』という恐怖に晒されていた。

 「日向子、そろそろご飯になるから来なさい。」

 時計を見ると19時を指していた。

 もうこんな時間かと思いながら日向子はリビング向かった。

 「今日は日向子の入学祝いのお祝いパーティーよ。沢山食べて明日に備えなさい。」

 母がそう言うと父は

 「そうだぞ、沢山食べないと大きくなれないからな~。」

 と冷やかすように言った。

 「大丈夫だよ。そういえば私、明日自己紹介なんだけどどうしたらいいかな?」

 そのように言うと母は、

 「あなたらしさを出せればいいんじゃない?個性とかをしっかりアピールできればクラスの和に入りやすいと思うよ。」

 と助言してくれた。

 父も賛成しているようだった。

 「話は変わるけど、日向子。明日学校が終わったら日向子の入学祝いとして本を買ってやるからある程度考えておきなさい。」

 父からそれを聞いた日向子は、息が詰まるほど喜んだ。

 実は日向子は大の小説好きなのである。

 きっかけとしては学校での孤独に耐えるため何かないかと探していたところ、小説があったため読んでみたらしい。

 その結果、見事に小説に没頭するようになった。

 今では日向子の部屋の8割型が本棚で覆われており、ぱっと見ただけで軽く200冊を超えている。

 文学系から始まりファンタジー系など幅広く揃っていた。

 「ありがとうお父さん。しっかり考えてるよ。」

 そう言って、日向子はすぐにご飯を食べ終わらせすぐに自分の部屋に戻りスマホを開いた。

 グーグルの検索欄に(おすすめの小説)と検索する。

 すると、『レゾンデートルの誓い』や『君の膵臓をたべたい』などが出てきた。

 これもあれもいいなと思いながらいろいろなサイトを見ていた。

 それから2時間が過ぎた。

 スマホのアラームが鳴りすぐに風呂場に向かう。

 「まだ入ってなかったの?早く入りなさい。」

 そんなことを言われながらすぐに風呂に入る。

 「どうしようかな。こんなにもたくさんあると、どうすればいいか悩んじゃう。」

 風呂場でも一人でブツブツ言いながら考えていた。

 

 風呂を上がり親に寝る前の挨拶をした後部屋で寝る準備をした。

 日向子は明日欲しいものが手に入るということでずっと興奮していた。

 すっかり明日の自己紹介のことを忘れるほどに。

 そんな状態で日向子は明日に向けて深い眠りへとついた。



 ※【ADHD】とは?

 ADHD(注意欠如多動症)とは一種の精神障害であり今でも世界中で苦しんでいる人がいる。

 主に3つのタイプと症状がある。

 不注意優勢型・・・集中が苦手であり、忘れ物が多い。好きなことでは周りをシャットアウトする。

 多動・衝動優勢型・・・動いていないと落ち着かなく、無意識に動いてしまうことも。また、感情や欲求のコントロールが苦手でもある。

 両方型・・・どちらも持っている。


 このような症状があり、これが原因で差別やイジメの原因となることも多い。

 参考

 https://junior.litalico.jp/about/hattatsu/adhd/

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