第5話 初めての魔法

実は魔法を使ってみたかったのだ…………

地球とは原理が異なる力……気にならないほうがおかしいというものだろう

いきなり魔法が使えるかという心配はあるが、俺にはイシュタルの記憶がある。

きっと上手くいくだろう………たぶん……


まずは初歩的な魔法で試してみるか。

この世界では、魔言を唱えて魔力を注げば魔法が発動するらしい。

すっと息を吸い込み、記憶にある魔言を唱える。


「灯火の魔法トーチ


―その瞬間、手のひらから眩い光が溢れ出す―


「まずいっ」


後悔する間もなく、まるで昼になったかのような閃光があたりを包む。

閃光手りゅう弾があったとするのであればこんな感じなのだろう。

直視していれば、後悔する羽目になっていたのは間違いない。


やってしまったな…………


本来であれば手のひらに小さく火が灯る魔法のはずだったのだが、

過剰に魔力を注いでしまったせいで暴走してしまったみたいだ……

すぐに魔力の供給を断ったため、魔法自体はすぐに消えたが、騒ぎは免れないだろう…………


……………………。

慌ただしくなる庭を余所目に、俺はこっそり床に就いた………



朝から庭がざわざわと騒がしい。

どうやら昨夜、庭で魔法を行使した不埒者がいたらしい。

騎士団が血眼で侵入者の痕跡を探しているそうだ………

………………………………けしからんやつもいたもんだな、うん。


騎士団は思ったよりしっかり調査しているみたいで、侵入経路や防犯魔道具の記録、使用された魔法の種類など事細かに現場検証している。

というか防犯魔道具とかあったのか………

映像記録とかがあったら終わってたな………………………。


肝心の調査結果だが、どうやら侵入した形跡もなく、灯火の魔法トーチらしきものを使用した痕跡はあるものの、一体何の魔法を使用したかが分からないことから、一部、妖精の仕業ではないかという噂まであるらしい…………


ヘレナに、さり気なく灯火の魔法トーチではないかと尋ねたが、どうやら低級魔法ではあんな光量は出せないらしい。

と、灯火トーチの魔法を暴走させるやつなんていないんだな…………

…………練習しよう…………。


それはともかく、昨夜の失敗で問題点は浮き彫りになった。

それは、魔法制御が甘いことだ………

通常消費する魔力量を1とするとならば、昨夜の灯火トーチには10消費されてしまっている。無駄に馬力があって燃費が悪い車といえば分かりやすいだろう。


一般貴族家庭であれば、まず家庭教師がついて魔法制御を習うはずなのだが、そんなものがついているはずもなく、ついでに学校も体調を崩してあまり行けていないため、制御する術を知らないのが問題だ。


あまり学校には行きたくないのだがな………

いくしかあるまい……………


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今度こそは奪わせない~虐げられるのはもうやめだ~ 一条 颯斗 @sssssshin

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