第4話 目覚め
……………………ハッ…
―急激に意識が覚醒する―
あたりを見渡すと月明かりが差し込んでいる。
あの後、部屋に戻った俺は、ヘレナに強制的に寝かしつけられたんだったんだ……
それで、こんな真夜中に目が覚めたのだろう。
二度寝するには目が冴えすぎて、失敗することは想像につく。
「夜風にでもあたるか……」
初夏に差し掛かるといえども、夜はやはり冷える。
いそいそと長袖を着込んだ俺は、庭に出て夜空を見上げる……。
庭は静寂に包まれおり、私を咎めるものはいない。
―俺もイシュタルも死んでしまったんだな―
死を実感したからこそ分かる……
イシュタルは死んだと。
この身体はいわば亡霊のようなものだ……なぜ生きているかも分からないし、何のために、俺の意識はこの身体に宿っているのかが分からない……
葵はどうなったのだろうか……
俺は何をなすべきなのか……
そんな時、ふとクリスタの顔が浮かぶ。
―俺はやり直しの機会をもらったのではないか―
そんな荒唐無稽な仮説が脳裏を駆け巡る。
……馬鹿な話だ……そんな都合のいい話があるわけがない
百人中百人が何を
けど…………
俺はこうしてここに生きている。
後悔ばかりの人生だった……。何度もやり直したいと思っていた……
殴られてばかりのクソみたいな人生だったけど………
「今世こそはっ…………」
とめどなく涙が溢れてくる。泣かないと決めていたはずなのに、涙が止まらない
「じゆうにいぎてやるっ…………」
―そう心に誓った―
◇
……………………。
いつの間にか涙は枯れていた。
前世の自分と決別できた………と思う。
それに俺には新しい目標ができた。
前世では道半ばに終わってしまったが、今度こそは………
今度こそは誰からも縛られず自由に生きてやる………
そのためには、力、権力、金どれもが足りない。
それに早急にお金を集めなければならない………
何故ならばそう遠くないうちにクリスタは死ぬからだ。
これは疑惑でなく確信に近い。
魔力量が増えるにつれ、体調が悪くなり、やがて死ぬ……
クリスタとイシュタルの病状はほぼ一緒だ。
それにクリスタはイシュタルより魔力が多い………
あと一年、もつかもたないかだろう………
父に土下座して、かかりつけ医を呼んでもらうか………?
いや、俺は本館には入れない………
仮に侵入したとしてもつまみ出されるのが関の山だ。
門で父の馬車を待ち構えるか………?
門番の存在を考えるとそれも無理だろう………
俺が倒れた時でさえ、まともな医者を派遣してくれなかったことを
「やはり民間の医者を探すしかないな………」
この世界で健康保険などどいうものは存在しない。よって良い医者に見せるためには高額の治療費が必要だ。何とかしてお金を稼ぐ手段を考えねばならない……
…………ひょっとして魔法で稼げたりしないかな…………?
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