8.おいしかった食べ物
ドイツといったら、やっぱりソーセージだろうか。だけど私はあんまりソーセージを食べなかった。
私が中でも1番気に入ったのは、Knödel という食べ物だった。
Knödel はさっき(5.勘違いの話①)もでたか。
日本語で「団子」
じゃがいも団子だったり、パン生地で作った団子だったりとあった。団子らしく、モチモチとした食感がたまらなく美味しく、レストランで何か頼むとき、特に肉料理なんかではたいてい一緒についてきた。
日本でメインディッシュを選ぶときに、米(あるいはパン)がセットでつくみたいに。
レストランの肉料理がまた豪快なものだった。
日本で見るボリュームとはあきらかに違うのである。たまに、肉にナイフがぶっ刺さってでてくるときもあった。
みんなして、「おぉ」と感嘆の声をあげる。
鴨肉というのもあった。
私は頼まなかったけれど、頼んでいた友だちは骨から肉をそぎ落とすのに苦労しているようだった。
あとパン! パンがすごく美味しかった!
授業をしている学校の近くには、ケバブ屋兼パン屋という感じのお店があった。
そこにあった、レタスとハムをはさんだ堅いパン。私は噛み応えが良いパンが大好きで、そのパンはまさにぴったりだった。
日本に帰国して気付いたのは、日本のパンは柔らかいということだった。
あんパンもクリームパンも、食パンだって柔らかい。
私はパンを買うたびに日本にいる友人に、写真を送った。時差を気にして、たいていは昼に送った。日本だと夜だからだ。
でも、それをだんだんと気にしなくなって、まれにドイツの夕飯時くらいに送ったときには。
「こっち何時だか、わかってる?」
あ、深夜の2時……。
日本食を食べたくなるという気持ちは、だんだんとわかるようになってきた。
米を食べたい、とにかく米。
じゃなかったら麺! ラーメン、うどん。とにかく何かすすりたい! どうしてドイツには麺類がないの?
日本から持ってきたのは味噌汁と春雨スープだった。春雨スープは最終週までとっておくとして、味噌汁は1日1杯、かかせなくなってしまった。
クリーム入りドーナッツをお菓子にして、味噌汁でティータイム。
味噌汁でティータイム……。
味噌汁はティーじゃない。
でもお椀なんてもちろんないから、ホストマザーにマグカップを渡されてそれで飲んでいたから、ティーだったかもしれない。
ドイツにも一応、味噌汁はあった。
「Miso Suppe?」
「Ja」
味噌汁の話をしたら、ホストマザーが突然。戸棚からだしてきたのだ。
まるでカレールーみたいな四角い固形物でできていて、それをお湯で溶かすものだった。
あっという間にできたドイツ版味噌汁を飲んでみた。
「……っ!」
ホストマザーは期待を込めた目で、「どう?」みたいに聞いてくる。
「Gut」
美味しいです。
いや、決してまずくはなかった。普通に美味しくはあったのだ。
ただこれは、味噌汁というよりかは。
オニオンスープみたいなしょっぱさ。
味噌汁にはほど遠い味だった。
日本食に飢えているのは、みんな同じだった。
お昼にパンを食べていたクラスメイトたちは、気が付くと日本から持ってきたカップ麺をすすったりしていた。
私は友人と一緒に日本食店を探して、そこでお昼を食べたこともあった。
私は海鮮丼を、友人はお寿司を食べた。
「タイ米だね」
「タイ米?」
「お腹に溜まりやすいんだよね、これ」
「そうなんだ」
たしかに食べ終わったら満腹感がすごかった。
私たちはもちろん箸で食べていたけれど、周囲にいたお客――特に子どもは、スプーンやフォークでお寿司などを食べている光景もあって、ちょっと面白かった。
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