ドイツ留学記

はじめに

 私がどうしてドイツへ留学を決めたのか、その経緯を話す前に私の今までの失敗談というか、不幸談というものを話そうと思う。

 人によってはどうだっていいことかもしれないが、私としてはまさに「不幸」な話だった。


 私はいつ頃からか、外国に対して、とりわけヨーロッパに、強い憧れを持っていた。だから留学の機会があるならそれに参加してみたいという願望が人よりいささか強かったかもしれない。


 ところが、これが実に空回りの連続だった。


 まず、中学2年生の頃のことだ。


 私が住む地域では中学校と市の共同企画として、中学2年生になると、姉妹都市への留学をすることができた。夏休みのほんの2週間ぽっちのあいだだけだが。それでも中学生にとって2週間の海外留学というのは、相当に大きなものだった。

 中学生になったばかりの頃、私はそれを知って「来年になったらこの企画に参加しよう」と決意をかためていた。

 ところが2年生になっても、その留学の詳細は一切音沙汰がなかったのである。

 気になって先生に確認をとってみたところ、市のほうでお金の工面ができなくなってしまい、今年から県内にある山でキャンプをしようという企画に変わったのだとか。


 姉妹都市への留学からの、県内にある山でキャンプ。

 雲泥の差である。


 たまたま運がなかったんだ、と私は諦めるしかなかった。


 次に海外を断念せざるを得なかったのは、高校2年生の頃だった。


 行き先はヨーロッパではなくオーストラリアだったが、だいたいこちらも2週間ほどの留学だった。

 あれはたしか――、そうだ。部活のほうから「行くな」と言われてしまったんだ。

 県内でもそこそこの強さがあったため、練習量も多かった。部活の顧問は私が留学をすることに賛成してくれなかったのだ。


 最後は同じく高2の、冬頃。ロンドン・パリへの修学旅行が予定されていた。夏休みのうちにパスポートをとって、事前に自由時間にどこへ行くのか計画をたてたり、授業で調べ学習などをしていた。そしていざ、修学旅行の日が近くなってきたところでその1か月前にテロが起きた。


 もちろん、海外への修学旅行は禁止。

 国内への旅行を余儀なくされた。


 以上が、事の顛末てんまつであり始まりである。海外へのひどい憧れはそれらの出来事を機に強く、固いものになっていた。

 そして私は、大学生になってからドイツ語を習い始めたのを縁として、ドイツへの留学を決めたのである。

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