ドイツ留学記

凪野海里

序文(当時19歳の私へ)

 海外について思いを馳せるとき、私の頭に真っ先に思い浮かぶのはドイツ・ミュンヘンにあるMarienplatz――マリエン広場、そしてその青空の下に高く聳え立つ中世のお城のような雰囲気を持つ、新市庁舎だ。


 そこが団体行動をする際の目印になる集合場所で、その場所を起点に地下鉄に乗り、様々な場所へと旅をした。

 また、留学先で出来た他大学の友人たちとも、休日に遊ぶ際の集合場所としてその場所はとても役立つ目印となった。


 マリエン広場付近は、とにかく広い。

 ちょっと歩けば、スーパーがあるし、サッカーチームの公式ショップや本屋、洋服屋、レストランなんかも並んでいる。ラーメン屋を見かけたときは、さすがにびっくりしたものだ。

 他にもおしゃれなカフェがあったり、昼間には市場もテントを張りだし、来る人たちを歓迎してくれる。また、復活祭になるとみんなが仮装をして町を練り歩き、道にはたくさんのお店や、あとクルミ屋さんも並んでいた。


 広場で飲んだビールも印象深い。

 復活祭が終わった日の翌日、提供された実質無料と題されたビールは、1ユーロを払うとジョッキで手渡された(そのジョッキを返せば1ユーロが戻ってくる、いわゆるデポジット制)。

 日本から来た私たちはもちろん驚くわけだ。


 試飲でもせいぜい紙コップ1杯だというのに! 何故ジョッキ!?

 ドイツ人のスケール、ハンパねぇ!


 私は当時、まだ19歳になったばかりだったが、ドイツでは16歳~ビールが、18歳~他の酒を飲んでも法律で許されたので、友だちから一口、おすそわけしてもらった。


 人生で初めて飲んだビールの感想は、


「パンの味がする!」


 周りにいた友だちはきょとんとしたあと、「そりゃパンと同じ原料だからな」と一斉に笑い出した。

 以来、私は日本でビールを飲める年齢になっても、あのときの味が忘れられず。日本でビールを飲んでも「なんか美味しくない」としか思わなくなった。

 あの寒空の下で、みんなで回し飲みをした、ジョッキのビール。あの、たった1口が私にとって、生涯忘れられない味となってしまった。



 さて、何故私がこのドイツ留学記を投稿するに至ったか。それは卒業した大学でお世話になった先生から、ドイツに行く留学生があまりにも少なすぎるという話を耳にしたからである。

 ならば、と。大学時代に文芸サークルに所属していた私が当時の思いのまま部誌用に書きなぐった、「ドイツ留学記」を投稿しようと覚悟を決めた次第だ。


 ちなみにサークルの方ではとっくの昔に部誌として発行済み(さらに言えばすでに大学は卒業済み)なのだが、その件は当時サークルに所属していた人たちしか知らないため、留学を手伝ってくれた先生や学校関係者には、いっさい部誌については話していなかったりする。

 恥ずかしくて口に出せなかったというのが本音だが、恩知らずも良いところだ。この投稿を機に当時お世話になった人たちへの恩返しとさせていただこう。


 また、この作品をこれから読む予定でいる皆さま。特に「留学が不安な人たち」や「憧れているけどどの国へ行けば良いのかわからない」という人たちにも、このエールが届けば幸いである。


 海外留学は良い。さらにドイツはもっと良い! ミュンヘンはもっともっと良い!


 一生に一度、永遠に忘れられない体験を海外留学で得られた私の、体験記を綴ろう。


 なお、当時の私自身が受けた雰囲気や感情のままに書き綴ったものであるため、当時の状態のまま投稿することを許してください。さらに、サークルの部誌として発行したため、字数やページ制限の関係もあり、短くまとめている箇所が多数あることもご理解いただければ助かります。

 関係者の皆様の名前、及び所属場所に関してはプライバシー保護のため名称を変えてお届けいたします。「もしかしてこの人!?」というのがあっても、余計な詮索はしないように。あくまで、自分の胸に留めておくようにしてください。


 もし、「こういうところが気になるな」というところがあれば、遠慮なくコメントに書いてもらって結構です。

 それでは、最後までお楽しみいただけますように。

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