君はやり直す権利を手に入れた
ReMiRiA
貴方は権利を手に入れた
Q:貴方は4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる権利を獲得しました。
有効回数で死ぬ度に通知が届きますが何度目の死なのかの自覚は出来ません。
やり直せる時間は指定出来ますが直前の記憶は無くなり改竄も出来ません。
目が覚めた。横の時計は午前5時、普段の起床時刻よりも数十分早く起きた。
「何だったんだ?あの意味の分からない通知は」
そう俺はボヤきつつ俺は下へ降りる。今日は高校の入試を終えた翌日だ。
「(さてと学校へ行く準備でもしよう)」
意味不明な夢の所為で早々に目覚めた俺は2度寝するのも癪なので鞄を取った。
鞄も3年間、使用すれば古くなる。経験の糧だと思えば宝石となるだろうけど_。
「(それにしても、何だったんだ?あの死んでもやり直せるって)」
出来ることなら誰だって望むような権利を俺が手に入れた?実に馬鹿馬鹿しい。
「(そんなの現実じゃ有り得ない。どうせ、良く出来た夢だ)」
そう吐き捨てると朝食もそこそこに俺は家を出た。
「随分と眠そうだな。遅くまで起きてたのか?」
「そんな訳ないだろ。ちょっと変な夢を見たんだ」
俺は親友の康太に夢で見た出来を説明をすると案の定…怪訝な顔をされた。
「やっぱり、疲れてるんじゃないのか?無理はするなよ」
「大丈夫だ。俺も夢だと思ってるし正直、興味はないしな」
その時だった。教室の前方が騒ぎ出した。どうやら、
「今日も綺麗だよなぁ。本当、朝日奈さんの彼氏になってみたいよ」
ー俺も同感だった。事実、声にこそ出さないが俺も朝日奈さんのことは好きだ。
容姿端麗で成績優秀、身体能力も高く憧れの的である…朝日奈佑月さん。
そんな人と同じクラスになれただけで幸せだけど_。
「(出来ることなら喋って友好を深めたかったなぁ)」
ある日、俺は普段通り康太と食堂へ昼飯を食べに来ていた。
「今日はどれにするんだ?やっぱり、人気の唐揚げ丼にするのか?」
「そうだな。まぁ、A定食でも惜しいところなんだけどな」
「そうだよなぁ。今日を逃せば7日間待たないと駄目なんて酷だしな」
「アレって、朝日奈さんだよな。朝日奈さんも食堂に来るんだな」
視線の方に目をやると友達と食事をしているようだった。
「それは、そうだろ。朝日奈さんも学生なんだしさ」
「そうだけど…別次元の人だって考えてるとちょっと違和感を感じただけだ」
「俺は別にそう思ってないけどそう感じるんだな」
康太に冷めてるな。と皮肉を言われたが正直、気にはならなかった。
「(立場こそ違うけど人間なのは変わらないしな)」
それぞれの価値観でも俺は尊重する。最も_固定概念は時と場合で異なるけどな。
月日は流れ中学校3年生最後の文化祭となった。感慨深くなるけど所詮は文化祭。
私立なので高校の学園祭と似たような感じでも…飲食は出ず発表や模擬店のみだ。
「此処の射的の判定、シビアだよな」
色々と巡った末に俺と康太は射的をすることにした。
「それは、康太の感度の問題だろ。ほら…当たるだろ?」
「それはお前の腕の良さだろ…?そういえば何気に得意だよな、射的」
「まぁな。FPSゲームを遊んでるのもあるかもな」
「それは有り得そうだな」
射的を終えて外を歩いていると放送が鳴った。
「間も無く…最初のイベント…公開告白大会が始まり…参加の方は放送室まで_」
「何なんだ?今の放送は」
「文化祭の醍醐味だろ?公開告白。俺もどうせなら参加しようと思うんだ」
「そうやって自分を貶めるの本当に好きだよな」
彼の物怖じせず突っ込む度胸は尊敬する…結果、此方へ被る犠牲は否めないけど。
「お前もやろう。拒否権はなしな?」
「拒否権はあるだろ。最もそれを酷使して反対するけどな」
何故、彼の事故に巻き込まれないと行けないのだろう?嫌に決まってる。
「やったくれたら奢るよ。そうだな…寿司でどうだ?」
「俺の人生を寿司に還元しようとするな…乗ったけど」
だってそうだろう?社会的に死ぬより俺は寿司を食べて満足したい。
「(何で俺は寿司に釣られたんだ?)」
放送室で受付を済ませた直後に俺は自分を呪った。
「(では、お次の方…どうぞ!)」
やり方は簡単で自分で放送機器を使って告白する。外部客も居るので匿名だけど…
「(でも、声でバレるよな。同じクラスの人には…少なくとも)」
全校放送されるのだ。確実にバレるだろう…変声期?そんなものはない。
「(放送室の前に
建前だと思う反面それはそうだと思う自分も居るのは否めない感じだ。
「それでは次の方…」
「あ、俺ですね!」
どうやら、案外早く進んで彼の番となったようだ。
「ちゃんと声を出すんだぞ。最も…俺の犠牲を被ることのない程度にな」
「分かってるって」
そうして康太は俺の無駄なアドバイスを聞き放送室の中へと入って行く。
「それでは、次の方の告白です。では、どうぞ!」
「えっと…その、3年C組の朝日奈さん。ずっと好きでした。それで_」
どうやら、俺の予想通り康太は朝日奈さんへ告白をしたようだ。
「(俺は誰に告白するべきなんだろう…)」
そうして告白を終えて帰ってきた康太の背中を叩き俺は放送室へと入る。
「それでは次の方…え?ど、どうして…」
俺は放送委員の人に機器を譲って貰おうとし…固まった。其処に居たのは
「どうして…日野くんも此処に居るの?」
其処に居たのは…幼馴染で疎遠になりつつあった由良さんだった。
名前は深菜由良。彼女と出会ったのは幼稚園の時で家や近所の公園で遊ぶ日も多く
「ゆらちゃん」「ひーくん」
と呼ぶ仲だった。でも、それも小学校までで成長していく度に疎遠となったのだ。
「どうしてって告白しようって康太に付き合わされてさ」
「好きな人…居たんだね。まぁ、3年生だし居るよね。それはそうだ」
そうして俺は幼馴染の隣で告白をすることとなった。
「(失敗に終わって由良に笑われるだろう。だって、相手は朝日奈さんだ)」
そう思っていたしその場のノリを読める俺はそうして爆死しようとした。なのに…
「付き合うこととなった?お前、正気で言ってる?それ」
「大真面目だぞ。俺は」
そうあの日の放課後、朝日奈さんに呼び出され返事を貰ったのだ。
「冗談じゃねぇ!何を好きになったんだ?朝日奈さんは」
「それは俺に聞くんじゃなくて彼女に聞いてくれよ」
マジで呪ってやる。そう康太は嫉妬に囚われてたものの…
「当事者の俺はどう反応すれば良いんだ?その批判は」
「そうやって擁護しようとするな、被害者面するなよ_被害者だけど!」
「でも、本当に成功するって思ってなかったんだ。往生際悪くなるだろうけど」
それはそうだけど…と言葉を詰まらせる彼に対して申し訳なさもあった。
俺の前に告白した親友は振られ俺は付き合った。まぁ、理不尽極まりない。
「代わりに、寿司はなくて大丈夫だ。寧ろ、奢ってやる。だから…許してくれよ」
「当たり前だろ!メンタルを散々に削っておきながら寿司も奢る?理不尽だろ!」
元々、その条件で提示したのはお前だけどと突っ込むのは流石に止めた。その時、
「久々に帰らない?日野くん」
教室に入ってきたのは由良だった。それにしても由良から声を掛けるなんて_。
「別に大丈夫だけど」
そうして俺は由良と久々に帰ることとなった…それは大きな過ちとなった_。
「文化祭の後に朝日奈さんと付き合ったって本当なの?」
T字路にて切り出してきた。内容も別に驚くことではなかった。
「本当だよ。由良も見てたでしょ…公開告白した様子をさ」
「うん。その後に返事を貰ったってこと?」
そうだな。と返し…心に傷を負う。由良とこの話をするのは避けたかった。
「そう、なんだ」
それきり、由良も俺も黙ってしまった。去り際に再び彼女は声を掛けた。
「もう手遅れだし言っちゃうけど_私も好きだったんだよね。君のこと」
「え?」
「もう手遅れだし朝日奈さんみたいな魅力もなかったけど…君のこと好きだった」
だから、これからも友達で居てね。と伝えると彼女は走り去ってしまった。
俺は…彼女を引き留める選択をしなかった。
「どうしたら…良かったんだ。俺は」
自室で俺は混迷していた。何故って?俺も好きだったから…由良のことを。
でも、遠くの存在となって…疎遠となって…俺は諦めた、彼女のことを。
「(でも、由来も俺のことを好きだったんだ…)」
此処でどうするのが正解の選択肢なのだろう_。電話する?それとも彼女の家へ?
「(駄目だ。俺にはそんな選択肢出来ない)」
結局_。俺は何もすることなくその日を終えてしまった。だからなのだろう。
「死んだ…ってどういうこと、ですか?」
翌日、彼女の母親から由良が自殺した。という報告を受けた。
死因は薬物中毒_睡眠薬を規定を超える量を摂取し自殺を図ったということだ。
「分からないの…。本当に分からないのよ…。何で死んだのよ、あの子は」
「そういう傾向は…学校生活で見てもそういう雰囲気は感じませんでしたが…」
「えぇ。それは家でも同じだった。なのに、なのに…どうして」
そういうと嗚咽を上げながら泣く声を耳にして俺は電話を切り天を見上げた。
彼女は死んだ動機もなく自殺した。その場に遺書はなかったらしい。
否、彼女は動機なく死んだ
「(俺の所為だ。昨日、俺が由良に声を掛けなかった所為で…彼女は死んだ)」
そうじゃなくても…違う。そうだ。だって、昨日の今日で彼女は死んだから。
「(結局、俺は何も出来なかった…手遅れになったのに)」
よろよろと身体を起こし日記帳を手に取る。その時、俺はメモ書きを見付けた。
「4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる。時間も指定出来る権利?らしい」
「これを使えば_戻れる、のか?」
あの時は馬鹿馬鹿しいと思っていた。でも、もしかしたら戻れるのではないか?
「(由良の居ない世界に価値はない。どうせなら、試してみよう…)」
ダメ元でやってみよう。そう俺は心に決めると棚の上にある薬箱を取り出した。
「(母さんの使ってる睡眠薬だけど…)」
大人の基準は1錠だけど自殺するのなら_この量あれば大丈夫だろう。
念の為に手帳に1回目を使ったことを記載しておく…無駄になる可能性もあるが。
「(後はどうやって時間を指定すれば良いんだろう…)」
薬を服用し色々と試してみる。そして…急激な睡魔は訪れる。
「(あ、駄目だ。急に眠気の所為で_何も考えられない)」
そうして段々と思考も止まりつつある中、俺は
「(もし、出来ることなら…
そうして俺は
Q:貴方は4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる権利を獲得しました。
有効回数で死ぬ度に通知が届きますが何度目の死なのかの自覚は出来ません。
やり直せる時間は指定出来ますが直前の記憶は無くなり改竄も出来ません。
「間も無く、文化祭が始まります。生徒は全員、最終調整を終えた後…代表は…」
その放送を聞き俺は背を伸ばす。
「随分と元気なさそうだね」
「その面、静野さんは随分と元気そうだね」
「まぁね。最後の文化祭だし楽しみにしてたんだ」
久々に女子と会話したなと思いつつ俺は張り切ってる康太へ声を掛ける。
「最初はどうするんだ…?午前中にシフトって組まれてたっけ?」
「俺もお前も午後だぞ。だから、午前中にさっさと巡っておこうぜ」
そうだな。と答えつつ廊下へ出る。
中学校最後の文化祭で感慨深くなるけど所詮は文化祭。
私立なので高校の学園祭と似たような感じでも…飲食は出ず発表や模擬店のみだ。
「此処の射的の判定、シビアだよな」
色々と巡った末に俺と康太は射的をすることにした。
「それは、康太の感度の問題だろ。ほら…当たるだろ?」
「それはお前の腕の良さだろ…?そういえば何気に得意だよな、射的」
「まぁな。FPSゲームを遊んでるのもあるかもな」
「それは有り得そうだな」
射的を終えて外を歩いていると放送が鳴った。
「間も無く…最初のイベント…公開告白大会が始まり…参加の方は放送室まで_」
「何なんだ?今の放送は」
「文化祭の醍醐味だろ?公開告白。俺もどうせなら参加しようと思うんだ」
「そうやって自分を貶めるの本当に好きだよな」
彼の物怖じせず突っ込む度胸は尊敬する…結果、此方へ被る犠牲は否めないけど。
「お前もやろう。拒否権はなしな?」
「拒否権はあるだろ。最もそれを酷使して反対するけどな」
何故、彼の事故に巻き込まれないと行けないのだろう?嫌に決まってる。
「やったくれたら奢るよ。そうだな…寿司でどうだ?」
「俺の人生を寿司に還元しようとするな」
だってそうだろ?社会的に死ぬより俺は寿司を食べて満足したい。その時だった。
「(何だ?この嫌な予感は)」
上手く表現は出来ないけど康太に乗るのは危険だと本能が言っていた。
「すまん、康太。それは降りることにする。乗り悪くてすまんな」
「はぁ…。まぁ、分かったよ。俺も其処までしてさせる程の鬼じゃないからな」
「あ、ありがとうな」
でも、着いては来てくれ!と康太に言われたので俺も放送室へ行くこととなった。
放送室で受付を済ませた彼を見ながら俺は放送を聞くことにする。
「2組の藤賢さん。ずっと好きでした。もし、良ければこの後…空き教室…ます」
それにしても随分と賑わってるな。と思いつつ俺はその様子を観察する。
やり方は簡単で自分で放送機器を使って告白する。外部客も居るので匿名だけど…
「(でも、声でバレるよな。同じクラスの人には…少なくとも)」
全校放送されるのだ。確実にバレるだろう…変声期?そんなものはない。その時、
「えっと…組の朝日奈さん。入学した時から好きでした!…もし…」
康太の声が放送で響き渡る。どうやら、案外早く進んで彼の番となったようだ。
因みに相手は朝日奈さんだった。断られるけど告白しただけカッコイイだろう。
「日野くん…?」
廊下で康太の帰りを待っていると幼馴染の由良と出会った。
「そういえば放送委員だったな、由良も」
「そうだけど…日野くんも…告白に来たの?」
「俺は告白しないよ。ほら、康太の告白終わりを待ってるんだ」
「な、成程ね。その、早とちりしてごめんね!あ、でも。好きな人居るの?」
「居るけど…告白出来ないで居るんだ。俺は臆病だからさ」
そ、そうなんだ。と彼女は濁すと仕事があるからと去ってしまった。
入れ替わりで戻って来た康太を俺は慰めながら出迎えた。
「ちゃんと思い切って告白出来たのか?」
「それは出来たさ。まぁ、無理だろうし吹っ切れたさ…教室に戻ろうぜ」
そうだな。と康太の肩を叩きながら教室に向かって行くのであった。
「久々に帰らない?日野くん」
文化祭明けの放課後。教室に入ってきたのは由良だった。
「別に大丈夫だけど(それにしても人前で由良から声を掛けるなんて)」
そうして俺と由良は久々に帰ることとなった。
「ちゃんと休めてる?」
「どうだろうな。でも、最近はちゃんと睡眠を取るようにしてるよ」
「そう。それにしても公開告白。随分と人気だったよ」
そのようだな。2、3時間経っても終わる気配を見せなかったし。
「どうせなら、日野くんも告白すれば良かったのに。その女の子に」
「それは無理だよ。だって、その人は遠くの存在になったから」
「遠くの存在…?」
「あぁ。もう、俺の手に届くことのない存在に」
「そう、なんだ。因みに私も好きな人が居るんだ」
「そうなのか?まぁ、由良も高校生だしそれは居るよな」
「その男の子はね、臆病だって名乗ってるか癖に無駄にカッコイイんだ」
「そうなのか」
俺は臆病だけど別にカッコ良くはない。由良の好きな人は誰なのだろう。
「その人にどうやったら告白出来ると思う?」
「そうだなぁ。その人は臆病なんだろ?なら、早く告白するべきだと思う」
「そう。なら…好きだよ。日野くん」
え?と思わず呆けてしまった。
「俺は早く告白するべきだって言ったけど…本人にしなきゃ駄目だろ」
「うん。だから、君に告白してるじゃん。私は君が好きだから」
「そ、そうなのか」
「うん。それで…私の告白に君はどう答えてくれるの?」
「それは…俺も好きだけどさ。昔からずっと」
そう、なら告白して良かった。そう彼女は笑った。
「変な感じになっちゃったね。まぁ、私の所為なんだけどさ」
「それは…俺が臆病だった所為だし由良が責任を感じなくて良いよ」
「寧ろごめんね。私がちゃんと声を掛けなかったから心配を掛けさせて」
「じゃ、じゃあさ。その…手でも繋くか。恋人らしくさ…」
そうして俺と由良は手を繋ぎながら帰ることにした。
それから日は経ち2月末ともなれば公立高校の受験期となる。
「それにしても公立を受けるだなんてな」
「まぁ、由良も受ける以上は俺も頑張らないと駄目だろ?」
「それもそうだな。まぁ、俺も受けるけど」
由良が公立高校を受けると知ったのは夏休みだったが判定的には大丈夫だ。
「それにしても夏以降だろ?勉強を本格的に始めたのは」
「そうだよ?でも、本気を出せば何とかなるものなんだよ」
俺よりも判定良いの何なんだよ…と愚痴を溢してるけどそれはそれだ。
因みに由良は既に推薦で合格している。
「まぁ、2週間だし頑張ろ。終わればまずは楽に遊べるんだし」
そうだな。と頷く康太を励ましながら取り組んだ…のに。
「全然出来なかった」
受験を終えた午後。俺は絶望の淵に立っていた。
「どうして…あんなミスをしてしまったんだ」
試験の時に時間配分を間違えて焦ってしまったのもある。でも_。
「(自己採点で合格基準より5点も下だなんて…)」
面接も受け答えこそ出来たものの曖昧だったような気もしてくる。
「まぁ、俺もギリギリだし合格は願っておくものだぞ?」
「そうだな」
普段とは真逆で康太に慰められる形となったのだが…。
「落ちた…んですね…」
受験に落ちた。康太は合格したのを確認した。でも、俺は落ちた。
「(俺の頑張りは…何だったんだ)」
何時間も詰めて塾にも通って成績を安定させて…落ちた。
「(何で落ちるんだよ…)」
そう思っても結末は変えられない。その時、
「この手帳って」
見覚えのあるようなないような曖昧な感じだけど大事なものだったはず。
俺はそう思って手帳を開くと不思議な文章が記載してあった。
「4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる。時間も指定出来る権利?らしい」
「そういえば、夢で見たことあるような…ないような」
有り得ないことだと頭の片隅で思ってたけど…使えるのではないだろうか?
「有り得ないかもだけど…1回目を使ったって記載してある…」
そんな記憶はない。死ぬことを忘れるなんて有り得ないだろう。つまり…
「(死んだらその記憶が無くなるのか?)」
メモには記載こそないけど自分の記憶に死んだ情報なんてない。
「(本当にやり直せる…のか?)」
嘘に決まってるけど…メモを信じるなら可能性はある。
「(試してみよう)」
メモには睡眠薬による薬物中毒で自殺を図ったようだ。
「念の為に別の死に方をするべきなのか?でも、不安要素は減すべきだろう」
色々と考えた結果、事故死に見せ掛けた自殺をすることに決めた。
俺は手帳に死に方と2回目を使ったことを記載し試験の問題を貼り付けた。
そうして俺は手帳を持って外へ出た。少し歩けば大きな車道が見えてくる。
「もし、やり直せるのなら…受験前の2月末に戻ってくれ」
そう祈りながら車道へゆっくりと歩み出した。
「(でも、死ぬのはちょ_)」
っと。と言葉を続けることは出来なかった。走ってきた車と衝突したのだ。
宙を舞った感覚の後、地面に叩き付けられる感覚を覚えた。
ー直後、何も感じずに意識は潰れた。目を覚ますことのない永遠の眠りへと。
Q:貴方は4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる権利を獲得しました。
有効回数で死ぬ度に通知が届きますが何度目の死なのかの自覚は出来ません。
やり直せる時間は指定出来ますが直前の記憶は無くなり改竄も出来ません。
「それにしても公立を受けるだなんてな」
「まぁ、由良も受ける以上は俺も頑張らないと駄目だろ?」
「それもそうだな。まぁ、俺も受けるけど」
由良が公立高校を受けると知ったのは夏休みだったが判定的には大丈夫だ。
「それにしても夏以降だろ?勉強を本格的に始めたのは」
「そうだよ?でも、本気を出せば何とかなるものなんだよ」
俺よりも判定良いの何なんだよ…と愚痴を溢してるけどそれはそれだ。
因みに由良は既に推薦で合格している。
「まぁ、2週間だし頑張ろ。終わればまずは楽に遊べるんだし」
そうだな。と頷く康太を励ましながら取り組んだ…でも
「どう、しよう」
国語、社会と終えて正直不安だった。社会は別に得意だし自信はある。
でも、英語はどうしようも出来なかった。勿論、勉強はした。でも、不安だ。
「手帳に何か書いてあったっけ?」
朝に急に持って行こうと思った手帳だったが開くと
「え?な、何で今年の試験問題を持ってるんだ?」
国語、社会、英語、数学、理科の問題、解答も付属している。そして
「2度目の受験、失敗することなく合格しろ」
そう書かれてあった。俺の受験は初めてだし失敗も合格もないはず…。
「(何なんだ?でも、国語も理科も問題は同じ…本当に今年の試験問題だ)」
もし、使えるなら確実に高得点を叩き出せる。でも…カンニング同然の行為だ。
「(でも…2回目ってことは落ちたんだよな。きっと)」
あんなに頑張ったのに態々落ちるなんてしたくない。なら…でも…。
「(どうせなら、落ちたんだし合格して…みたいよな)」
そうして俺は罪悪感を覚えつつ試験問題を確認した。
ー結局、不合格だったはずの俺の手元には合格の証明書を置くことにした。
「どっちも合格だったんでしょ?おめでとう!」
先に推薦で合格をしていた由良に合格を祝われて俺は複雑な気持ちだった。
「やっと遊べるなぁ。どうする?合格したし映画でも行く?」
「それもそうだけど…まずは私の家に行く?合格した祝いするけど」
「え、マジ?由良さんの家に行けるの?」
「うん。他にも友達は呼んでるけど日野くんもお世話になってるし」
「おぉ!良かったぁ。俺は日野を親友に持って幸せだぜ!」
「そうだな…」
俺は合格した。国語と理科は自力で受けたのだ。半ば自分の成果だろう。
そう思わないと罪悪感で押し潰れそうになっていた。
それは由良の家でもその罪悪感は変わらず寧ろ重くなるばかりだった。
「大丈夫?疲れてそうだけど」
そう由良に心配される程に精神を蝕まれ押し潰されそうになっていた。
「すまん、ちょっと疲れるし先に帰るわ…気にせず楽しんでくれよ…」
ゆっくり休めよ。と康太から心配されながら俺はよろよろと家へ帰った。
余りにも辛過ぎた。こんなにも罪悪感を背負うことになるとは…。
否、自分の選択の…行為を間違えたことに対する罪悪感は凄まじく…
「(何も考えられない…辛過ぎる)」
もう止めよう。そうしなきゃ耐えられない。そう思っていた…なのに。
忘れてしまった。だってそうだろ?人間は
高校に入学し由良や康太と同じクラスになれた俺は充実の日々だった。
「今日は帰れるのか?」
「そうだな。部活も休みだし…あ、でも担任に呼ばれてたんだった」
「じゃあ、先に帰るわ!またな」
あぁ。と康太に告げて俺は担任の所へと向かった。
「おぉ、日野。すまんな、用事を頼んでしまって」
「大丈夫です。荷物運びですよね?」
「あぁ。数学研究室の入口に置いてあるからそれを理科研究室に運んでくれ」
「分かりました」
「椿にも手伝わせてるから協力して終わらせくれ」
鍵は閉めなくて大丈夫だから。と報告を受けて俺は数学研究室へと向かった。
「あ、椿さん。俺も手伝うよ」
「すみません、その…頼まれたんですよね。先生から」
「まぁな。でも、女子に任せる訳には行かないだろ?こんな重労働を」
「すみません…」
謝らなくても大丈夫だよ。と荷物を受け取ると運び出した。
「(それにしても数学の先生も鬼だよなぁ)」
椿さんは数学の教科連絡だけど女子だし重労働は可哀想だと思う。
勿論、今の時代と矛盾した考えだけど…適材適所という奴だ。
そうして椿さんと協力し移動させ終えた時には7時を過ぎようとしていた。
「遅くなっちゃったな」
由良には遅れると連絡していたから大丈夫だろうけど…。
「あの…日野くん…ごめんなさい。こんなに遅くまで」
「大丈夫だよ…因みに椿さんって帰りは駅方面?」
「そう…ですけど」
「じゃあ、一緒に帰らない?女子を1人にさせるのは危険だからさ」
「でも…萩野さんは大丈夫なの…ですか?」
「大丈夫だよ。由良はそういうの気にしないタイプだから」
「そう…ですか。では、ありがとうございます。1人なのは不安だったので…」
そうして俺と椿さんは帰ることにした。それは…思えば終着点だったのだろう。
「ちょっと暗めですね」
「そうだな。もうちょっと電灯を点けて欲しいものだよな」
「まぁ、日野くんも居るので多少は安心出来ますが」
「余り期待するのは止めてくれよ?」
もう少しで駅に着く。そう思ったその時だった。
「あっ!」
走って来た男性と椿さんがぶつかってしまったのだ。
「もうちょっと前を見て欲しいものだよな」
そう思いながら俺は椿さんの方を確認しようとし…居なかった。
「え?」
思わず後方を振り返ると彼女が倒れ込んでいた。
「だ、大丈夫…。おい_。椿さん!」
駆け寄った途端、俺は気付いた。彼女のお腹辺りから出血していることを…。
「大丈夫なのか?今、救急車を呼ぶから!後、ナイフは抜くなよ!」
出血が酷くなるからと。俺は救急車を呼ぶと彼女を背負い駅方面へと走り出した。
「ゆっくりと呼吸するんだ。激痛だろうけど。早く呼吸すると血も早く出るから」
「ご、ごめんな…ひぅ…」
喋らなくて良いから!と彼女を宥めさせ俺は駅に到着した。
「大丈夫ですか?」
と様子に気付いた大人が駆け寄ってくる人も居るのに…
「何で動画を撮るんですか!人が死ぬかもしれないんですよ!」
後方で何もせずスマホを向ける大人へそう叫ぶ。
意味が分からない。何で目の前で女の子が苦しんでるのに…撮ろうとするのか。
「手伝ってくださいよ!」
集まるのは野次ばかりで手伝うのは少数だけ。だから…なのだろうか?
その後、到着した救急隊員によって緊急手術が行われた。
2時間後。彼女は死亡した。死因は…出血多量による刺殺となった。
「(どうして…)」
亡骸となった彼女の手を握りながら俺はそう呟いていた。
今は大学病院の寝室。彼女の両親は医者と話すと言っていた。
「(俺が居たのに…彼女を死なせてしまった)」
両親は責任を負わなくて良いと言ってくれたけど罪悪感が残る。
俺は電話しようと懐を漁り…長方形のものに手が当たった。
「手帳…そういえば」
あの時、余り気にしてなかったけど。そう思うと手帳を開く。
「使えるんじゃ…」
記載してあったのは死んだらやり直せること。
既に2回やり直してることだった。普通なら有り得ないことだけど
「(でも、試験の件を考えれば有り得るのかもしれない)」
もしそうなら俺が死ねば彼女は生き返る。そして、その先で守れば良い。
「だったら…やってみる価値はあるな」
俺の所為で彼女は死んだ。なら、俺が責任を払うべきだろう。
そう心に決めると手帳に念の為に3回目を記載し事件の内容を書き留めた。
そうして窓に手を掛けた。此処は7階。飛び降りれば簡単に死ねるだろう。
「ちょっと、日野くん!何をしてるの!」
飛び降りようとしたその時だった。彼女の両親が帰って来たのだ。
窓に手を掛け下を見る少年。状況は明白だろう。
「命を粗末に扱うんじゃない!」
そう椿さんのお父さんが声を掛けてくれた。でも…。
「すみません。椿さんのお母さん、お父さん」
俺の不甲斐なさで彼女を死なせた。その罪滅ぼし故に俺は死ぬと決めた。
そうして、2人の声に背を向けることなく俺は…飛び降りた。
風を切る音を聴く。夜なこともあり少し寒さを覚えた。
「(命を粗末に扱うな…ね)」
もし、次の人生を歩めるのなら命を粗末に扱うことなく大事にしたい。
「やり直せるのなら…放課後直後に戻ろう」
そう呟くと同時に視界がブラックアウトした。
そして…薄れゆく記憶の中で割れる音が聞こえ…目を覚ますことはなかった。
Q:貴方は4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる権利を獲得しました。
有効回数で死ぬ度に通知が届きますが何度目の死なのかの自覚は出来ません。
やり直せる時間は指定出来ますが直前の記憶は無くなり改竄も出来ません。
「今日は帰れるのか?」
「そうだな。部活も休みだし…あ、でも担任に呼ばれてたんだった」
「じゃあ、先に帰るわ!またな」
あぁ。と康太に告げて俺は担任の所へと向かった。
「おぉ、日野。すまんな、用事を頼んでしまって」
「大丈夫です。荷物運びですよね?」
「あぁ。数学研究室の入口に置いてあるからそれを理科研究室に運んでくれ」
「分かりました」
「椿にも手伝わせてるから協力して終わらせくれ」
鍵は閉めなくて大丈夫だから。と報告を受けて俺は数学研究室へと向かった。
「あ、椿さん。俺も手伝うよ」
「すみません、その…頼まれたんですよね。先生から」
「まぁな。でも、女子に任せる訳には行かないだろ?こんな重労働を」
「すみません…」
謝らなくても大丈夫だよ。と荷物を受け取ると運び出した。
「(それにしても数学の先生も鬼だよなぁ)」
椿さんは数学の教科連絡だけど女子だし重労働は可哀想だと思う。
勿論、今の時代と矛盾した考えだけど…適材適所という奴だ。
そうして椿さんと協力し移動させ終えた時には7時を過ぎようとしていた。
「遅くなっちゃったな」
由良には遅れると連絡していたから大丈夫だろうけど…。
「あの…日野くん…ごめんなさい。こんなに遅くまで」
「大丈夫だよ…因みに椿さんって帰りは駅方面?」
「そう…ですけど」
「じゃあ、一緒に帰らない?女子を1人にさせるのは危険だからさ」
「でも…萩野さんは大丈夫なの…ですか?」
「大丈夫だよ。由良はそういうの気にしないタイプだから」
「そう…ですか。では、ありがとうございます。1人なのは不安だったので…」
そうして俺と椿さんは帰ることにした。その時だった。
「ちょっとだけさ、此処で話さない?」
「え…ど、どうしてですか?」
「もうちょっと此処に居たくなったんだ。理由は分からないけど」
「そう…ですか。話相手は私しか居ませんがそれで良いのなら…」
そうして俺は椿さんと話すことにした。
「椿さんって、どうして此処を受けようと思ったんだ?」
「私は…お姉さんが
「そうなんだ。じゃあお姉さんも此処を受けたの?」
「3年前に私の姉は此処を受けました。ですが私の姉は…」
「不合格だったのか?って、ちょっと待て。椿さんの姉は…」
「はい。私の姉は不合格になった後…自殺を図りました」
「そうだったのか…じゃあ、もう彼女は…」
「図ったのものの生きてました。3年後に事故死しましたけど」
「それは…お気の毒にだな」
「私の両親は凄く優しくて…姉の死も乗り越えてくれたんです」
だから私はそれに答える思いで受験をしたのだと…彼女は吐露した。
「お姉さんのことは好きだった?」
「はい。喧嘩もなく楽しい日々でした」
彼女は遠くを見ていた。思い出しているのだろうか…姉のことを。
「私の勝手に振り回してすみません…重くなってしまって」
「大丈夫だ。寧ろ、酷な事を思い出させちゃったたな」
大丈夫ですよ、私は。
「そろそろ帰ろう。遅くなると両親にも迷惑掛かるだろうしさ」
そうですね。そう彼女が微笑み学校を出たのだった。
後で分かったことだがあの日の夜に通り魔が出たらしい。
その時、1人の女性が刺されて出血多量により死亡したそうだ。
その男は捕まったが…もし、あの時に早く帰っていたら…。
被害者は女性ではなく俺らだったかもしれない。
あの日以降、俺は椿さんと話すことが増えた。
勿論、由良とも話をしてるし康太とも遊んでる。
でも、新たな楽しみでもあったのは間違いなかった。
「そういえば、今日は早めに帰れるよな」
「そうだな。最も大雨なんだけどな」
季節は梅雨の時期に入り雨が降る日が多くなった。
「それにしても今日は線状降水帯だなんてなぁ」
「梅雨の時期だし仕方ないことだろ。まぁ、線状降水帯は酷だけど」
「そうだな。俺は先に帰るけど…お前は帰れる?」
「帰れるぞ?何もすることないしな…。あ、そうだ」
俺は教室の端で勉強をしていた椿さんに声を掛けた。
「今日、康太と帰るんだけど…椿さんも帰らない?」
「え…。えっと、その。良いんでしょう…か?」
「由良に許可は取ってないけど大丈夫だと思う」
「その…由良さんが良いのであれば…お願いします」
そうして俺は由良へ連絡を入れた後、改めて誘うのだった。
放課後、降り頻る雨はより酷くなっていた。
「傘も役に立たなそうだな」
「そうだなぁ。どうせなら、刺さないでみる?」
「そうやって安直的なものは愚者の考えだぞ」
「偶にはその柔らかさも大事だぞ?」
そう康太は訴えてくるけど今回は俺が正解だろう。
「俺、由来と相合傘するけどさ」
「おう。マウント取るの止めようか?」
「椿さんも入れると思うかな?」
「…椿さんまで狙おうとするなよ!」
その後は狙ってないと釈明した。だって、由良が嫉妬するしな…。
降り頻る雨は視界を奪う程だった。
「この大雨は今日だけで十分だわ。学校が休むなら大歓迎だけど」
「公立高校だし有り得るかもしれないけど…高望みは禁物だな」
「少し…雨も止むと良いのですけどね…」
「そうね。本当に湿気も酷くなりそう」
そう会話をしながら帰り道を歩くこと7分。
俺らは大通りへとやって来た。
「そういえば、お前って勉強してるの?」
「案外してないよ。でも、テスト前はちゃんとするさ」
「無駄に真面目なの腹立つんだよなぁ」
「あ、私は此処で曲がるので…さようなら」
おう、またな!と康太も椿さんへ別れを告げていた。
それから雨は酷くなった。
俺も康太も由良もずぶ濡れだし周囲も暗くなるばかりだった。
「あそこの横断歩道を通ればもうちょっとだな」
「そうね。私、ちょっと先に行こうかな」
「用事があるなら俺らを置いて帰っても良いよ」
そう由良が先に向かったのを見て俺と康太は呆れた。
その判断が大きな後悔を生むことになるとは知らずに…。
「そういえば、あの人って優しそうだよな」
「あぁ。普段は1人だけど喋ってみたら案外、話も合ったよ」
「そうなんだ…な」
「あぁ。どうした…?おい、康太?」
突如、康太が立ち止まり奥を視認しようとしていた事に違和感を覚えた。
「あれって…車…だよな?奥の光。ほら」
「そうだな。それがどうし…まさか」
車道なのだから車が走っているのは当然…そう思っていた。でも、違った。
「由良ッ!止まれ!」
そう康太が走り出していた。
もし、あの車が雨で由良に気付くことなく衝突すればどうなるか?
「(由良も運転手も気づいてないし確実に即死する」
仮に打ちどころが良くても確実に重傷になる。俺は康太の後を追っていた。
「由良!車来てるから戻れ!ぶつかるぞ!」
そう俺と康太が叫んでいることに気付いた様子だったが…
「(俺らに気付いても車に気付かなかったらアウトだ)」
そうして俺は走りながら足が重くなっていることに気付いた。
当たり前だ。傘もなしに走っていて服がずぶ濡れなのだ。
そうしてようやく異変に気が付いた由良は戻って来ようとし…宙を舞った。
飛んだ訳でも跳んだ訳でもない。車に衝突されたのだ。
弧を描きながら舞う由良の姿を見た。その後のことは…覚えていない。
「彼女は無事なんですか?」
俺と康太は総合病院の待機室で話を聞いていた。
「命には別状はありません…ですが後遺症は残る恐れがあります」
後遺症が残る。その言葉に俺と康太は後ろめたくなっていた。
「君らに責任はない。だから、重く受け止めないで欲しい」
そう由良のお父さんは言っていたけど…そんなこと出来る訳もなかった。
「何で由良だけ…こんな目に遭うんだろうな」
「昔も由良だけ骨を折ったこともあったな」
「そうだな…やっぱり止めよう。そういう不吉なことを言うのはさ…」
そうして黙っていると隣に座っていた康太が立ち上がった。
視線の先に居たのは…車椅子状態の由良だった。
「由良!」
俺と康太が駆け寄ると彼女は口を開いた。
「すいません。迷惑を掛けてしまって…」
「無事なのか?何処か痛いところはあるか?腰や足なんかはどうだ?」
「少し左足が痛みますが何とか…心配してくれてありがとうございます」
その時、俺は違和感を覚えた。
「(どうして…丁寧語で喋ってるんだ?)」
その答えはすぐに帰ってきた。
「その…2人の名前は…何なのですか?」
彼女は記憶喪失になっていた。
彼女の症状は重く家族や自分の名前をも忘れる程に悪化していたのだ。
「どうして…こうなっちまったんだろうな」
帰り道を俺と康太は歩いていた。両親だけになるように配慮した形だ。
「もし、変えれるのなら…変えたいよな。この結末を」
「それはそうだけど…そんな補正はないからな」
そうだよな。と笑う彼にも陰があった。
「俺らではどうにも出来ないことだからな」
そう呟いた。康太が立ち止まり何かを拾った様子を見せると
「お前、手帳落としたぞ」
そう彼から受け取ると確かに俺のだった。
「気を付けろよな」
あぁ。と答え…無性に手帳を開きたくなった。パラパラと捲る内に
「(何なんだ?コレは)」
手帳に書かれた文章は以下のようだった。
「4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる。時間も指定出来る権利?らしい」
その下には3回目を使ったと書いてあり隣には
「(信じれない…けど。3回目の時の事件の概要は同じだし…)」
実際に受験や告白の時は印象があるはずなのに曖昧だったりする。
「(勿論、悪戯でやった可能性もあるけど…信憑性はあるよな…)」
もし、本当にやり直せるなら奇跡なことだ。
「(やり直して由良に忠告して帰るようにすれば…事故は無くなるはず…!)」
そうなれば俺が死ぬだけで由良も由良の両親も救えるし俺もやり直せる。
コスト0でリターンを得れるなど最高過ぎる条件だ。勿論、懸念点はある。
「(此処で俺が死ぬのは可能だけど…本当に死んだら意味がない)」
死ぬのは簡単でもやり直せることなんて想像出来る訳ない。
「(でも、俺は既に3回やり直してるんだ。なら、大丈夫なはず)」
4回まで死んでも大丈夫な制約だ。1回の猶予を示している。なら…。
「どうしたんだ?さっきから黙ってるけど…」
「すまん、ちょっと用事が出来た。だから、先に帰るよ」
「そ、そうか…。じゃあ、またな」
また…と。俺は康太と別れて家へと走った。心は決まっていた。
「(由良が重傷を負ったのは俺の所為でもある)」
少しでも罪滅ぼしをしたい、それだけだった。
「(どうやって死ぬべきなんだろう)」
1回目は薬物中毒、2回目は車との衝突、3回目は飛び落り…。
「(毎回、死因を変えてるし変えた方が良いのかな)」
考えた結果、手取り早く死ねる首吊りを選んだ。
「その前に4回目を使ったことを記載するべきだな」
交通事故の件も記載し俺は椅子に登った。
「(無事に成功して戻るだけだ)」
今日の放課後直後に戻ってくれ。そう願って死ぬだけだ。
考えるから怖くなるんだ。そうだろ?既に3回死んだのだから。
そうして俺は勢い良く椅子を蹴り…ゆっくりと目を閉じた。
そして…。
…。
…。
…。
彼は死亡した。生き返ることも、やり直せることもなく。
死亡推定時刻:午後4時44分44秒。
死因:首吊りによる自殺。
動機:不明。当日に事故に遭った被害者と関連性あり。
発見者:帰宅した母親の通報により発覚。
Q:貴方は4度、どんな死の理由でも人生をやり直せる権利を獲得しました。
有効回数で死ぬ度に通知が届きますが何度目の死なのかの自覚は出来ません。
やり直せる時間は指定出来ますが直前の記憶は無くなり改竄も出来ません。
君はやり直す権利を手に入れた ReMiRiA @ReZeOwO
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