「雪国」に思いを馳せて

第29話

「そんなことないですよ。恋愛ってもっといろんなあり方がありますよ。」

まだ17,18くらいのとき精神科のカウンセラーと話す機会をセッティングされた秋村が、何かの話で「お付き合いすることは、将来その人と結婚することとイコールだと思っていました」と話したときにカウンセラーから言われたことだった。

その考え方がどうであれ、秋村は思春期の若い頃はそう思っていたわけだ。

そしてそれは今の秋村の結論と似ていた。

それはまずそもそも、世間の商業的な「一番好きな人同士で結婚して結ばれる」というラブストーリーに偏っていた。

さらに高校生からの恋愛できなかったコンプレックスや劣等感で歪められ、20代後半の秋村はこじらせたのだろう。