第14話
「遠回りすることに意味があるなんていう人がいますけど、意味なんてありません。遠回りなんてしない方がいいんです。」
嘘で塗り固めて自分勝手に、自分より立場が弱いと思われる女性を弄ぶようでいて、そのように「内側」で狩って弄ぶこととは別で、秋村は自分がいる外側では、自分の人生に安寧を見出したいという、勝手な願望があった。
そのために、秋村自身がゆっくりではあるが、やっていることがあった。
それは親しい人のつながりを保つことだった。旧交を温めるといえばわかりやすいかもしれない。
しかしその日は、旧交を温めるつもりで会った人に、秋村はひどく不愉快な気持ちにさせられた。
その人は秋村の大学時代の教官で、もともと考え方が偏った人で、あえて会いに行った秋村にも非があった。
「遠回りすることに意味があるなんていう人がいますけど、意味なんてありません。遠回りなんてしない方がいいんです。」
ふと秋村はその教官が、大学時代に言っていたこの言葉を思い出した。
この教官は歳を重ねても全く変わっていないし、自分の探しているような人間関係の適切な依存先にはならない、とよく分かった。
もう二度と会うことはないだろうが、わざわざ会いに行って嫌な気持ちになったから、秋村はひどく徒労感を感じたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます