第15話

しかし人生は行動あるのみなのだ。

行動すれば、うまく行かず嫌なことも続くが、一定の割合で良いことも起こる。

行動しなければ何も起きない。

その大学時代の教官に会って嫌な思いをしたその日、期せずして秋村は一人ゲットした。


ふと思い出したのは、その女性は、4年ほど前に秋村が会っていた女性と似ていた。

年齢も当時の彼女と一緒だった。

当時、その女性とは、いわゆる都合の良い関係で、4ヶ月くらい会っていた。

今日会えるかな、とメッセージで聞いて、車で迎えに行って、家でUberEatsでなか卯の弁当を食べて、関係を持って、送り返す。

メディアなどで見聞きしたところでは、彼女は、ぼーっと型の発達障害に当てはまりそうだった。

とりとめもない会話だけで、特に印象に残っている会話内容はなかった。

強いて言えば、その関係が終わったのは、つまり彼女から返信が来なくなったのは、まさに当時「忘れられない女性がいて苦しい。復縁をお願いしたけれどもできなかった。」というようなことを彼女に言ってしまってからだった。

彼女の立場になれば、では一体自分はなになのか?体だけ?と訝しんで関係を終わらせるのは当然だった。

かといって彼女と関係が終わったことは秋村にとってショックではなかった。むしろ当時はその「忘れられない女性がいて苦しい」ということに強く囚われていた。

彼女はスタイルは良かったので、今の秋村なら、そんな都合の良い関係なら、もっと楽しめばよかったのにと思うだろうが、当時の秋村はそんな心境ではなかった。

外側の安全地帯にいながら、内側の弱者を弄んで楽しめるような心境ではなく、当時の秋村は、自分自身がその内側にいるようだった。


秋村は、今回は自分は外側にいると思ったが、それでいて今回の女性は、前回の彼女と比べてスタイルも容姿も恵まれていなかったから、秋村にとって満足のいく獲物ではなかった。

とはいえ、それまで徒労ばかりだったから、嬉しかったし、これを「つなぎ」にもっと良い獲物を捕まえてやろうと思ったのだった。

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