第5話
「一生後悔したらいいのに」
別れた元カノと電話しているとき、ポロッとこぼれるように言われた言葉だった。
そのとき、秋村は元カノをセフレにできたらいいなくらいの気持ちだったから、その言葉の怖さに気づいていなかった。「ハハハ」と軽い笑いで受け流した。
秋村がその言葉に込められた憎しみと呪いに、背中がゾッとして、めまいのような感情に襲われるようになったのは、それからずっと後になってからであった。
ところが、秋村がその言葉に怯えるようになったときには、肝心のその元カノはもう、秋村のことなど「無関心」であった。
女は上書き保存、男はフォルダ別保存とは、よく言ったものだ、と秋村はつくづく思った。
女は新しい男ができれば、上書き保存で前の男のことは忘れるが、男は新しい女ができても、前に付き合っていた、自分にとって一番良かった女のことを、忘れることができない。
端的に事実を言えば、秋村はその女性と別れて1年か2 年してから、復縁を申し込んだが、うまくいかず、その後ずっと、心理的に引きずったのだった。
心理的にやや落ち着いてから、秋村がその女性のSNSを見たとき、結婚して子どもが生まれたようだった。逆に言えば、自分が復縁を申し込んだときには、その男がいて、その後まもなくまたは同時期に妊娠したのだろう。
そう気づいたとき、秋村は惨めな気持ちになり、あの言葉の呪いに、背中がゾッとして、めまいのような感情に襲われるようになったのであった。
「一生後悔したらいいのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます