勝敗結果

織田は猫部に告白した。

俺は、その場合を隠れて見ていた。


「俺と猫部は意外と相性がいいと思うんだ。猫部の自立した女、って感じ、カッコいいよね。良かったら、付き合わない?」


織田の妄想癖は恐ろしいところもあるが、人を褒めるところは良いところだと思う。



「褒めてくれるのはありがたいけど、だからって付き合うことに繋げなくても良くない? いい友達だと思っているから、今後ともそれでよろしく」


あっさり振られている。

が、猫部にしては、礼を尽くした断り方じゃないだろうか。

猫部も人の子だった。



「わかったよ。クラスは一緒でも、そんなに接することはなかったもんね。もう少しお互いを知ってからよく考えようか」


すごい粘りだ。

令和の高校生とは思えない。

それにしても、元々は猫部が織田を好きらしい……という話からスタートしたのに、振られるという矛盾。

それに織田は気づいていない。

短期記憶はめちゃくちゃ弱いのかもしれない。



「はあ、まあ、お好きにどうぞ……」


織田があまりに屈託なく言うので、猫部は怒る気にもならなかったらしい。



♢♢♢



それから織田は、自分が演奏したギターに、自分の作ったポエムを乗せて猫部に送っていた。


なんとも言えないアプローチ。

すごいのか、嬉しいのか、恥ずかしいのか、キモいのかよくわからない。


「昨日送った動画、見てくれた?」


「あ、ごめん。見てなかった」


毎回そんな会話だ。

よく一度も動画再生されていないのに、また送ろうと思うものだ。


ハニトラにしては弱いが、猫部の日常は多少乱せたのではないだろうか。

このわずかな隙を利用して、有原には勝利を勝ち取ってほしかった。




♢♢♢




結果、


有原94点。


猫部95点。


織田96点。


織田は日本史が得意で、猫部に教えていたらしい。


敵に塩を送っていたっ!!!



「有原、すまない……」


「なんでお前が謝るんだよ。俺が勉強不足だったんだ」


有原は苦笑いした。


「ちなみに、猫部が勝ったら、何が起こるんだ?」


「あ、いや、それは、言うなって言われてるから……」


有原の目が泳ぎまくっている。


「そ、そう……。なんか怖いな……」


もう、猫部と関わるのはよそう。

俺のつまらないプライドのせいで、たくさんの友達を犠牲にしてしまった……。

復讐心は身を滅ぼすと学んだ。

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