勝敗結果

 考査前、湯川は物理を勉強している様子がなく、苦手な文系科目に時間を割いているようだった。大丈夫だろうか?


 対する猫部は、格安のオンライン授業動画を契約したらしい。やはり教育熱心な家はフットワークが軽い。


 こうして、考査当日を迎えた。



♢♢♢



 問題用紙を見て愕然とした。

 これまでのテストは、授業で使っている問題集を少し変えただけのものが多く出ていた。


 ところが、今回は模試レベルで、いつもより問題数も多い。


 なんとか集中力を取り戻し、問題にあたる。解けなくはないが時間は想定外にかかるし、焦りから計算ミスが出そうだ。


 解答欄が埋まってきて、少しずつ調子が良くなってきた。


 そして最終問題のページをめくった。


 ……やられた……。最終問題は、大学入試問題だった。先生が一度だけ「今まで習ったことで解けるものもある」と言って、配ったプリントの問題だった。解答解説も配られたが、自力で解けるほどはやり込んでいない。


 傾向対策だけだといかに脆いか。先生は教育者としてそれを教えたかったらしい……。



♢♢♢



 結果、クラスの大半は赤点。俺はなんとか赤点だけは回避した。


 そして、湯川も赤点は回避したものの、3点差で猫部に負けた。


「約束通り、視界に入らないでね」


 猫部がニヤリと笑って言った。湯川は、ふんっと言ったが、それから二人には絡まなくなった。意外と律儀な奴だった。


 いつもの猫部なら確実に赤点なはずだったが、学校の授業を徹底的にものにした上で、オンライン授業で苦手克服をしたらしい。最終問題も解けていて、薫子がすごーい!と叫んだ。


 大した根性だよ……。俺はため息をついた。

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