代理戦争一戦目 大柴の英語

 中学三年生。

 この節目の年で雌雄を決すべきだ。俺は、大柴に声をかけた。


「おい、大柴。お前、栄子が好きなんだろ」


 栄子は猫部の親友だ。


「何だよ、いきなり」


「お前がいつも栄子のおっぱいを見ていることは知っている」


「見てるからって好きだとは限らないだろ。いや、好きじゃないのに見てたらそれはそれで問題だけど」


「いいから。ちょっと俺の頼みをきいてくれよ。俺は猫部に英語で勝ちたいんだ。だが、あいつの英語の得意さはズバ抜けている。満点目指さないと。だから俺では勝てない」


「まあ確かに。何、まさか俺に英語を教えてくれとか?」


「そんな遠回しなことはしない。お前が俺の代わりに猫部に勝つんだ。つまり代理戦争だよ」


「逆に遠回しだろ。お前が頑張れよ。勉強は自分のためだろ」


「冷たいこと言うよ。勝ったあかつきにはコレをあげるからさ」


 貴史は、保育園時代の栄子のセミヌード写真を差し出した。


「いーやーこの頃からカワイイねっ、って俺は親戚のおじさんかっ! いくら好きでも、さすがに保育園児見て興奮したらおかしいでしょ」


「なんだいらないのか」


「いや、いらないとは言ってない。これがあるってことはさ、他のもあるんでしょ?」


「鋭いな。実は去年の体育祭の写真がある。うちの親と栄子の親が友達でね。栄子の活躍もしっかりカメラにおさめているのだよ」


「そういうことは早く言え。わかった、俺が猫部を倒し、お前に勝利の美酒を味わわせてやる」


「頼もしいな」


「あの猫部に勝てば、栄子ちゃんも俺を見直すかな」


「そうに決まっている。お前は写真どころか、栄子のおっぱい揉み放題になる」


「………………」


 大柴は無言になり、にへらっと笑った。


 そのマヌケな顔を見て、大柴はいつかエロで人生を失敗するかもしれないと貴史は少し心配になった。

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