No.10 ん?またなんか始まってるな……あれ?僕(主人公)は!?
「ルーンに意味が無い何て聞いた事も無いけれど……もし本当にそうだったとしたら各国の王や教皇達が何か隠していると言う事になるのかしら?だとしたら私達は今何か知ってはいけない事を知ってしまった事になる。」
「そんな、学園長!」
「いや、大丈夫。この部屋は完全防音の魔術がかけてある。万が一にでも盗み聞き何てされないようにね。」
どう言う事だ?
僕がルーンの話をした途端に皆慌て出した。どうやら驚くだけでは済まされない話だったようだが……あ、そうだ、王と言えば……
「そう言えば、筆記試験の事を知っていると言う事はもちろん実技試験についても知っていますよね。」
「ええ。あなたが防御魔術のかけてあった的を粉々にしたあれね。もちろん覚えているわ。」
何かあの事根に持ってるな。やっぱりあれはやり過ぎだったか。
「……あはは、はい。まあそれは置いておいて、僕が聞きたいのはエレオノーラ王女の事です。あの時彼女が使った魔法について、何か知っている事はありますか?」
しばらくの沈黙が流れた後、学園長が口を開く。
「エレオノーラ=トルグイネ、トルグイネ王国の第二王女。彼女は才媛と言われているけれど、その最たる理由はやはり魔法を使える事。彼女は先々代王以来の天才と言われているわ。でも……ごめんなさい、私にはあの国の王族に伝わる魔法についてはよく分からないのよ。」
嘘をついている様子は無い。そもそもこの状況下で嘘をつく理由が無いのだから彼女は本当に何も知らないのだろう。もちろんトルグイネの王族、その原点の事も。
「……そうですか。それなら結構です。すみません。」
「いえこちらこそ、役に立てずごめんなさいね。」
そう言い彼女は再び微笑む。
「それで……お話ししたい事は他にもあるのだけれど……今はやめておきましょうか。どれも急を要するものでは無いし、あなただってお友達を待たせているのでしょう?どうせそのあたりはまたいずれ分かるわ。今日のところはわざわざこんな所に呼び出して悪かったわね。」
そう言われ僕は一礼してその場を去った。
ラーファル達のもとへ戻る道中、先ほどの話について思い返す。
入学試験の件は手遅れとして、学園長がトルグイネの王族について何も知らないのは少し意外だった。
何せここは学園都市、その規模と政治的に中立と言う立場上ここの長たる彼女なら何か知っているんじゃないかと思ってたけど……
それに不可解な点はそれだけじゃない。あの場に教師を集めたと言う事はやっぱり話さなければならない事がまだ何かあったはずだ。
ん?そう言えば紙の時とどこか口調が違ったような……ってああ、またこんな事考えてる。余計な事に無闇矢鱈に関わるとろくなことにならないのに。ここに来たのはこの世界の闇を暴く為じゃないぞ僕。
そうだそうだ、ラーファル達のところへ戻ろう。
ってもどこにいるか分からないな。
まあでも大丈夫。こんな時には魔力探知だ!
いやぁ〜本当に魔力って便利だよね〜、人捜しにも使えるなんて。GPSなんかよりよっぽど便利だ。
さて二人はどこにいるかな……っと、見つけた。ここは……多分中庭かな。
でも何か変だな。周りに魔力反応が一、ニ、三……十人以上はいるな。
これは……やっぱり巻き込まれてるよね、トラブル。
ラーファルもメルトも同年代では強い方らしいし大丈夫だとは思うけど……万が一って事もあるしちょっと急ごう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その少し前、エスと別れた後ラーファルとメルトは少し外の空気を吸おうと中庭に出ていた。
「ねえ、メルト。」
「ん?」
「エスの事、どう思う?普通じゃないのは薄々感じてたけど、流石に人間離れし過ぎてる気がするんだよね。」
少し悩むようにしてメルトが答える。
「確かにあいつの能力には違和感を覚える事もあるが、態度や振る舞いを見る限り頭の固い貴族連中なんかよりはよっぽど人間らしいと俺は思うけどな。それにお前の方こそ、ハイエルフが知り合いだの、正直言って得体が知れない。」
「あはは……、やっぱりそれが普通なんだね。僕の住んでたところではこれが普通だったからなぁ……。それにメルトの方こそ、貴族にしては大分変わってると思うよ。」
「そうか?」
二人の間にのどかな風が吹き抜ける。だかその静寂を切り裂く様に多数の足音が迫って来ていた。
二人共それには気配で気づいていたが、特に警戒心も抱かず、気がつくと多数の人間に囲まれてしまっていた。
「四年ぶりだな、メルト。」
その中でも一際堂々とした少年が口を開ける。
「……」
メルトは彼の目をじっと見つめるがその言葉には応えない。そのまましばらくすると少年は大きく溜め息をつく。
「お前は本当に……久しぶりの再会に挨拶も無しか。何だ?そんなに俺の事が厭わしいか?」
「違っ、」
最後の一言を聞いた途端、今まで押し黙っていたメルトが立ち上がる。
「違う?そんなはず無いだろう。お前は昔から無愛想で可愛げの欠片も無くて、必要最低限以上の言葉を交わそうともしない。どうせ俺の事なんか眼中にすら入っていなかったんだろう。違うなら何が違うのか説明して見せろ。」
「それは……」
メルトは歯噛みするも答える事が出来ない。これにはラーファルも耐えられなくなり、勢い良く立ち上がり問う。
「あなたは……どんな事情があるのかは分からないけど、メルトがあなたを蔑むなんて、そんな酷い事するはずが無いでしょう?」
すると周囲の視線が一斉にラーファルに向いた。
「何だ?こいつ。」
「不敬な。」
「アクト様、黙らせましょうか?」
彼、アクトは横目でラーファルを見ると冷ややかな声で言う。
「……部外者が口を出すな。」
そして再びメルトに向き直る。
「おい、こいつはお前の何だ?」
「……友達。」
メルトは小さく答える。
「……友達?お前が?見るからに貴族でも無さそうなやつと?ははははは!笑わせるな!まさか情けでも掛けてやってるのか?良い事をしてるとでも思っているのか?ふざけるな、それもどうせ偽善なんだろう?……やはりお前は気味が悪い。いっそここで始末してやろうか?」
アクトはそう言い放つと腰の剣に手を掛けた。
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