第36クエスト いざカルディア帝国へ
学園長の話し合いが終わった放課後。サンは別の教室に向かい、ある人物を呼び出した。
「後で校舎裏に来てくれ! 大事な話があるから」
そう言い残し、サンは教室を出ていった。
現在、サンは学園の校舎裏でウロウロしながら待っている。まだ出会ったばかりで実力も分かっていない。ただ、今は信頼できる人物を連れていきたい。彼女を信じていると、ついにその時はやって来た。
「サン君、約束通り来ましたよ」
何故か顔を赤くしながら、こちらへ近づいてくる人物。サンは見かけると、思わず手を振った。
「シルフィ、来てくれてありがとな!」
そう、サンの信頼できる友達とはシルフィの事だ。彼女ならついて来てくれるだろうと、心の中で願うばかりだ。
「い、いえ。丁度、時間が空いてたので。それで……私に何か御用ですか?」
シルフィは俯きながら、挙動不審な動きをしている。サンは気にせず彼女へ近寄った。
「実はシルフィの事、友達になったときから気になってたんだ」
「は、はい……ええーっ!?」
シルフィの頭から湯気が吹き出す。
「今、オイラにはシルフィしかいないんだ。オイラのためにも一緒に来てくれ!」
「わ、私なんかでいいんですか? まだ出会ったばかりなのに……確かにサン君はかっこいいけど、でも……嬉しいです」
シルフィは幸せそうな笑みを見せている。なぜ、彼女が顔を赤くしているのかサンは分からなかったが、また気にしない事にした。
「そうか! じゃあ、一緒にアクロ先生達を助けに来てくれるんだな!」
「よろしくお願い――えっ?」
シルフィは目を丸くする。
「ん? あ、ごめん。ちゃんと説明してなかった。明日の朝、アクロ先生達を助けるためにカルディア軍に向かうんだけど、仲間を探してたんだ。それで、信頼できる友達でシルフィを仲間にしようと思って……どうしたんだ?」
シルフィは咳払いして、首を左右に振る。
「い、いえ。でも、私でお役に立てるでしょうか?」
「オイラはシルフィを信じてる! もし、危なくなった時は、みんなで助け合おう!」
「……分かりました! 私もゼシロス先生が帰ってこなくて心配してたんです。ぜひ、行かせてください!」
サンはシルフィの手を握る。
「ありがとう、よろしくな! そういえば、シルフィはゼシロス先生のパーティに入ってるのか?」
「はい。とても頼りになる先生で、大切な事をたくさん教えてくれました。だから今回、先生になにかあったと思うと心配で……」
手を離すと、シルフィは不安げな顔を見せている。
「そのためにオイラ達が行くんだ! シルフィ、絶対にみんなを助けよう!」
「はい!」
シルフィの顔が晴れていく。そうだ、全員で行けば必ず助けられる。サンは絶対に救い出すと心に誓うのだった。
・・・
翌日、サン達はニュートビアにある港へと合流していた。周りは遠くの大陸へ出港するための船がいくつかあり、人々で賑わっていた。現在、もう一人の仲間を待ちながら、4人で話をしていた。
「今日から仲間になるシルフィだ。二人とも、仲良くしてやってくれ!」
「初めまして、五組のシルフィと言います。皆さんの期待に応えられるよう、精一杯がんばります」
シルフィは深く頭を下げて挨拶をする。
「オレはビースト族のキバッグだ! もし、暇な時はこのアクリアをいじり倒してくれ」
「アタシはアクリアよ。このパーティはボケしかいないけど気にしないでね。後、こいつの言うことは無視していいから」
アクリアはキバッグの頭を叩く。
「なんだよアクリア。せっかく新しい仲間が増えたんだから、いじられたくないのか?」
「いーえ。少なくともシルフィはそんな事しない子だと思ってるわ。見てみなさい! お人形さんみたいにちっちゃくて可愛いわよ!」
アクリアに褒められると、シルフィは少し照れた顔をしていた。
「そ、そんな。私は可愛くなんて……」
「照れた顔も可愛いじゃない! ああ、アタシの胃が浄化されていくぅ!」
アクリアは嬉しそうに自身のお腹をさすっている。それに対しキバッグは僅かに引きつっていた顔をしていた。
「アクリア……いじられすぎておかしくなったか。ご愁傷さま」
「へへっ。シルフィを気に入ったみたいで良かった」
「あの……もう一人の方が来てないみたいですけど、大丈夫でしょうか?」
周りを見渡すがそれらしき人物は見つからない。リュウショクが呼んだ教師とは誰なのか未だに分かってない状況で、サンは遠くを眺める。
「まさか迷子になってねえよな?」
「それはないわよ。ちゃんと明確に集合場所を決めたんだから」
そして、サンが眺めた先には誰かがやって来る。
「誰かこっちに来た! あれって――」
「当日のお楽しみって……そういうことかよ」
「意外だったわ。あの人が来るなんて……!」
サン達が予想にもしなかった人物。それはニッコリと笑い、こちらの前で立ち止まる。サンは思わず口が開いた。
「皆さん、早かったですね。リュウショク学園長に呼ばれて参上しました。今日からよろしくお願いしますね」
助っ人は――サン達の担任、レイミーだった。予想外の人選に思わずサンは飛び跳ねてしまう。
「もう一人の仲間ってレイミー先生だったんだな!」
「驚きましたか? 私の実力は期待しないでくださいな。そして、シルフィさん。初めまして、二組の担任をしているレイミーです。今日から一緒に頑張りましょう」
シルフィはどこか緊張した面目でいた。
「ご、五組のシルフィです。私の方こそよろしくお願いします!」
笑顔を崩さないレイミー。彼女は船を見ながら歩いていく。
「さあ、揃った事ですし行きましょうか。必ず、皆さんを助けましょうね」
キバッグがサンの耳に近づいて囁く。
「レイミー先生って強いのか? オレ、あの人の実力を見たことないんだけど」
「オイラにも分かんないけど……なんかワクワクしてきた!」
レイミーが加入してサンの心は高鳴っている。 彼女がどれほど強いのか、サンは楽しみでしょうがない。そして、指定の船へと乗って目的地の大陸を目指すのだった。
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