第16クエスト パーティを決めよう

 午後のホームルームが終わり、3人は教室の後ろで話し合っている。サンはニコニコしながら、左腕を高く掲げた。



 「今日の授業が終わったな! アクリア、キバッグ! オイラたちでさっそくパーティを組むぞー!」



 アクリアは鼻で笑うと、軽く頷く。



「はいはい、そう言うと思ったわ。アタシで良ければ、パーティに参加させてもらおうかしら。キバッグ、あなたもいいわね?」


「断る理由なんかねえだろ。やっぱこの3人じゃねえとな! これから頑張っていこうぜ!」



 キバッグが気合を入れていると、サンは思わず嬉しくなり飛び跳ねた。



「やったー! へへっ、お前らとパーティ組めて幸せだ!」



 3人でパーティ結成。今までに味わったことのない喜びだ。サンがガッツポーズをすると、アクリアはなにか考えこんでいるようだった。



「そうね……とりあえず、大人の候補者について考えましょ。早く候補を決めないと、強い人を他のパーティに取られる可能性があるわよ」


「そうだな。んで、どうする? 一番いいのは、三人で手分けして大人の候補者を探すとかじゃねえか?」



 キバッグが提案すると、アクリアは納得しているようだ。



「それがいいかもね。それじゃあ明日、候補が見つかったら寮の前で落ち合いましょう」



 話し合いが終わると、サンはガッツポーズを見せびらかす。



「よーし! 二人共、絶対にオイラたちの候補者を見つけような! ということで早速、行ってくる!」



 サンは後ろを振り返り、教室を後にしようとする。すると、キバッグが右手を出して静止しているようだ。



「っておい、サン! おめぇ、オレとグラウンドの整備が――」


「すぐ戻るから大丈夫だー!」



 キバッグに笑顔を向けると、ドアを開ける。サンは大人のメンバーに心当たりがあるため、ある場所へと向かうのだった。




・・・





 廊下の階段を降りて、右へ曲がると教員たちが集まる1階の職員室へと着いた。サンは、上の札を確認して、その場所であることを確認する。



「確かここだな。じーちゃんが言ってた、扉を開ける時は失礼します……ノックをしてから入るんだな!」



 村を出る前、シャンウィンから言われたことを思い出し扉を何回かノックする。そして、スライド式の扉を開けると中へ入る。



「失礼します!」



 元気よく言うと、教員の何人かがこちらに気付く。サンは周囲を眺めると、奥の机に目的の人物を見つけた。



「いた! おーい、ゼシロス先生ー!」



 大きな声で呼びかけると、椅子に座って作業をしていたゼシロスが振り向く。真面目な表情を変えず、サンをじっと見ていた。



「サンか。待っていたよ」


「昨日ぶりだな! 実は、ゼシロス先生に用があってここまで来たんだ!」



 手に持っていたペンを置き、ゼシロスは大量の用紙をまとめ始める。



「君の言いたいことは察しがつく。恐らくパーティの件で、私と交渉しにきたのだろう」


「よく分かったな! オイラ、仲良くなった友達と三人でパーティ決めてるんだ! だから後は、ベテランっぽいゼシロス先生にお願いしようと――」



「そうか。残念だが、私も先約ができてしまってな。君たちのパーティに入ることができない」


 きっぱり断られた瞬間、サンは大きく口を開けた。あまりに残念すぎて、頭を抱えてしまう。



「えーっ! ゼシロス先生、もうパーティに誘われたのかー……そうだ! ゼシロス先生の知り合いに心当たりのある人いない? オイラ、どうしても戦いを教えてくれるような人にお願いしたいんだ!」



 するとゼシロスは、顎に手を置き考え込んでいる。小さく息を吐くと、もう一度サンに視線を移している。



「……1人だけいる。彼はこの学園の教師なんだが、実は事情で休職していてな。だが、あいつならきっと君たちの力になるだろう」


「ほんと!? その人ってどこにいるんだ?」


「この時間だと、普段は街の外へ出た先にあるドルームの森。その奥の湖にいるだろう。まずは事情を言って聞いてみるといい」



 サンはゼシロスに頭を下げて、後ろを向く。



「ありがとう、ゼシロス先生! ちなみに、その人……名前はなんていうんだ?」


「アクロ――それが彼の名だ」



 顔を下に向け、思い悩む様子でゼシロスは名前を言う。



「ありがとう、ゼシロス先生! オイラ、そのドルームの森ってところに行ってくるぞ! またな!」


「サン、私との約束を忘れて――」



 職員室を小走りで周り、扉の前に立って開ける。後にすると、廊下を歩いていく。



「アクロ先生か……! どんな先生か楽しみだな! あれ? そういえば、何か忘れているような――まあいいか! 今はドルームの森へ急ごう!」



 忘れたことを思い出せず、サンはもう一度走っていくのだった。

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