第6クエスト 旅立ちの日
あの出来事から、半年の月日が流れた。
サンはシャンウィンとの修業に励み、自身の実力が高まったのを実感していた。
今日は、学園へ入学するために旅立つ日。サンのお見送りに、出口まで村中の人々が集まっている。
青空の明るい太陽も、まるでサンのこれからを祝うかのように強く光り輝いていた。
「みんな、集まってくれてありがとな! 心配しなくても、オイラ絶対に強くなってくるから!」
サンは服装を一新した。赤い半袖の上着と白い短パン。これで学園へと旅立つつもりだ。
お見送りに来た村人達が全員来てくれている。心配そうな顔をしている村人もいたが、その大半は笑顔で見守ってくれていた。
「サン、何かあったら手紙を書いたり村に帰っていいからね! 私たちはいつでも、あなたのことを見守ってるわ!」
レーナは優しい表情で語りかけてくれた。サンは、強く頷いて嬉しくなる。
「おう、レーナ! また帰ってきたらおいしい料理作ってくれよ!」
「もちろん! サンが帰ってくるまで料理の腕を磨くんだから!」
全員で笑い合う中、寂しそうに笑うシャンウィンの表情が、こちらを向いていた。
「サン、ついにこの時が来たんだね。今まで大切に育ててきた孫がいなくなるというのは寂しいが……お前さんなら立派になって帰ってくるだろう」
「シャンウィン様、よくぞここまで立派な子を育てましたな。しばらくの間ですがゆっくり休まれてください……」
シャンウィンの気持ちを案じてるのか村長は、彼の背中に右手で触れている。
「すまないね……村長。サン、これから向かうブレイブ学園は、かつてあの人も呼ばれていた勇者の称号を得るため、集まるものばかりだ。サン、これだけは聞かせてくれ。お前さんは――どんな勇者を目指す?」
シャンウィンの質問に、サンは楽しそうに微笑む。湧き上がるワクワクを胸に、サンは後ろを振り向く。そのまま三歩、前進する。
周りの村人たちに見られている中、サンは今の気持ちを言葉にしようとする。
「オイラは誰よりも強い勇者になってやる! だから、今は始まったばかりだけど、オイラの道を歩んでいくよ! 大変かもしれないけど、見守ってくれよな――勇者様!」
自分のことをどこか見守ってくれているかもしれない。そう信じていたサンは、空に向かって届くように叫んだのだった。
「レジェッド……今、僕の大切な孫が旅立とうとしているよ。楽しいこと、苦しい時も――あの子を見守っていてくれ」
後ろを見ると、シャンウィンが瞳に涙を溜めていた。何かを呟いたが、サンには聞き取れなかった。
「じーちゃん、どうしたんだ?」
サンが首を傾げると、シャンウィンは涙を拭う。
「何でもないよ。サン、お前さんなら立派な勇者になれる。いつかまた……立派な笑顔を見せておくれ」
「絶対に約束するぞ! じゃあ、オイラ行ってくる!」
そう言い残しサンは、目的地へと駆け足で進んでいく。
「勇者は最後まで諦めず、くじけず、立ち止まらないこと! 絶対になってやるぞー!」
もう一度だけ空に叫びながら、サンは高々と跳ぶのだった。
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