03
土曜日、大阪のライブハウスから
「このTシャツかっこいいじゃない。これ着てライブに行く?」
「俺ツアーTでライブ観たい」
二回目のカフェ。ミチのお母さんの運転で四人で来ていた。オーダーした飲み物や食べ物が届くまで、店の奥の商品を眺めている。黒地に店のロゴのTシャツを手にしたミチのお母さんが自分にTシャツを合わせていた。背中のプリントがかっこいい。什器には他のプリントのTシャツが数種類かかっていて、ガラスの棚にはトートバッグやバケットハットなども並んでいた。
カフェラテのアイスを頼んだ私は恐る恐るグラスを口にする。アイスコーヒーを頼んだお母さんは陶器の容れ物を口に運んで「すごくフルーティー」とうれしそうな顔をした。商品を見ていたミチのお母さんもアイスコーヒーを楽しんでいる。今日は暑いのでミチもアイスラテを頼んでいた。食事についてくるサラダがテーブルに届く。かりかりしたフライドオニオンと柔らかい紫の野菜がとてもおいしい。
「これ何かな」
「ビーツじゃない?」
お母さんの前にウィークエンドスペシャルが置かれた。お母さんたちはヴィーガンマカロニグラタン、ミチはサラダ付きのホットドッグ、私はヴィーガンバーガーを頼んだ。サラダだけでもかなりの量。
「羽田にもこんないいカフェがあればいいけどね」
追加公演の会場は羽田のライブハウス。ふたりともまだ応募していないけれど、今日の話し合いが終わればすぐにでもそれぞれチケットを申し込むことにしていた。いま行われているファンクラブ先行一次抽選は会員本人が一枚ずつしか応募することができない。
車を持っているミチのお母さんが羽田のライブハウスまで運転してくれるそうで、うちのお母さんは駐車場代を出すと言っているのだけれど「ミチが誘ったんだからうちが出す」と言うミチのお母さん。ライブ中、時間を潰すカフェの支払いはうちのお母さんが出すことになった。ライブの前に四人で食事をすることにも。
「多分二次も一般もあると思うけれど、どっちかしかチケット取れなかったら仕方ないね。どっちも取れないかもしれないし」
「俺はきっとふたりとも当たると思うよ。近い番号だといいな」
ライブハウスの一階は席がなく、当選した整理番号順に入場するようになっている。もしも整理番号が近ければ、隣で見ることもできそうだった。
「入場のときにドリンク代六百円かかるんだって」
「高っ。ここのコーヒーと変わらないじゃん」
「水とかお茶とかもあるらしい。高い水だよね」
SNS で情報を集めているのだけれど、いろいろ教えてくれる
「ミチはライブ会場でTシャツ買うの?」
「黒い方、買う」
「私も黒い方がほしい」
食べ終わった私たちは、カフェのテーブルからライブチケットの抽選に応募した。スマホでファンクラブ専用サイトにログインし、確定ボタンをタップする。神さま。
ミチのお母さんはカフェのTシャツを一枚買った。親子でこういう雰囲気が好きみたいだ。私はステッカーを買ってもらった。悪魔が両手でコーヒーを運んでいるロゴ。小遣いで買って
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