俺が望んだ夢

 家に帰ってからはまず、すっかりぬるくなってしまった酒を冷蔵庫に詰め込んだ。

 一息つくと汗と雨のせいで身体がべたついているのが気になり、床に投げ捨てられている着替えとバスタオルを持って風呂場に向かった。シャワーと着替えを済ませてからは、目的もなくリビングのソファでテレビを見ながらぼーっと過ごした。


 ちょうど今日から一週間は会社の夏季休暇だ。

 俺が働いているのは中規模の機械メーカーで、お盆の時期は毎年一週間の夏季休暇がある。しかし、今年も特に予定がなくてどう過ごすかは決めていない。

 今年でもう五回目の、なにもない夏季休暇。昔はピクニックに行ったり旅行したり、仕事が繁忙期の時は夏季休暇も返上して仕事をしていた。

 俺の仕事は主に装置の設計や組み立て、メンテナンスで、お盆や年末年始はお客さんの工場も休みのことが多く、この時にしかできない作業もあるため休暇中に出張することがよくあったのだ。


 俺は寝室に移動し、枕の下に置いておいた紙を手に取った。雨宿りのついでに立ち寄った怪しい店で書いた、夢を見ることができる紙。着替えるときに忘れたまま間違って洗濯してしまわないように移動させておいたのだ。夢を見る日時はさっそく今日の午後十一時から明日の午前七時にしている。


 紙に書いた夢の内容をじっと見つめる。

 俺が望んだ夢、それはあの頃と同じなんの変哲もない『一家団らん』だ。

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