第10話 セシルは俺の騎士になるはずじゃ…… ダスト視点

【ダスト視点】


「おい。聞いたか? 紅蓮の姫騎士が……」

「マジかよ? すげえ冒険者だな」


 俺が王宮を歩いていると、衛兵たちが何やら立ち話をしていた。


 (紅蓮の姫騎士——セシルのことだよな?)


 セシルは、このゲームの攻略対象の一人。

 主人公である俺の、騎士となる設定だ。

 騎士らしく近接戦闘が得意で、ラスボスまで使える貴重な戦力なのだが……


「まさかブラックの騎士になるなんてな」

「本当だよ。皇族の騎士になると思っていたのに」


 (ぶ、ブラックだと……っ! まさかっ!)


「……ちょっと、君たち。今の話、詳しく聞かせてくれないか?」

「ダ、ダスト殿下っ! かしこまりましたっ!」


 俺に話しかけられて、衛兵たちが敬礼する。


「敬礼はいい。早くその話を聞かせてくれ」

「はっ! 実は……」


 衛兵の話によると、

 ・ブラックはブランドン公爵の護衛をした。

 ・護衛の最中に突然変異種、ジャイアント・オークに襲われた。

 ・セシルの聖属性の剣が効かなったが、ブラックの水魔法で倒せた。

 ・セシルはブラックの騎士になった。


「ジャイアント・オークを倒すだと……?」

「はい。たしかにそう聞きました。かなり高等な水魔法で倒したそうです」


 ジャイアント・オークは、シナリオでも終盤で出現するAランクモンスター。

 俺でも今のレベルで戦えば、負けるだろう。

 それを不遇属性の水魔法で倒すとは……


「で、セシルがブラックの騎士になったという話は本当か?」

「はい。それが本当みたいで……」

「く……っ。クソがあああああああああああっ!」

「ぎゃあ!」


 俺は怒りのあまり、衛兵を顔を殴ってしまう。

 

「死ね、死ね、死ねっ! ブラック!」

「ぎゃあっ! ダスト殿下! おやめください!」


 衛兵の顔を殴りまくる。

 こうでもしないと収まらない。

 俺の攻略対象を、奪いやがった……っ!


「はあはあ……ブラックめ……」


 セシルとのエッチシーンで、前世の俺は何度もヌイたことか。

 胸甲からはみ出さんばかりの、巨乳。

 あのおっぱいは、俺のものなのに……っ!


「ブラック……絶対に許さないからな」

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