第8話 俺はこの世界の神 ダスト視点

【ダスト視点】


「ふっふっふ……やっと俺が、主人公だ」


 夜の城——

 俺は帝都を見下ろしながら、一人ほくそ笑む。


 俺はダスト・エクス・アルトリア。

 この世界、シャイニング・タクティクスの主人公キャラた。

 主人公キャラだ、とメタい発言するするのは、俺が実は、転生者だからだ。


「やり込んだエロゲの世界に転生できるなんてな……」


 正直、めっちゃくちゃ嬉しかった。

 しかも主人公のダストに転生できるなんて——


「俺はこの世界の神だ」


 ゲームの世界では、主人公こそ神だ。

 他のキャラはすべて、主人公を引き立てる脇役に他ならない。

 要するに、他のキャラは俺の駒にすぎない。


「もう帝位争いは勝ったも同然だな」


 俺は転生者だから、原作知識がある。

 しかもやり込んだエロゲの世界だ。

 俺はこれから起こるすべてのイベントを覚えている。

 どの選択肢を選べばいいかもわかっている。


 帝位争いは、第一皇子のルクス、第一皇女のアリス、第二皇女のフェリシア、そして、第二皇子の俺の4人が皇位を争うことになる。

 ただ、俺の兄、第一皇子のルクスは「ゴミ」「無能」だから、すでに脱落したも同然だ。

 それに、第二皇女のフェリシアは、もともと皇帝になるつもりがないらしいから、フェリシアも脱落。

 まとめると、実際に帝位争いをしているのは、俺と第一皇女のアリスだ。

 

 第一皇女のアリスは強い。

 紅蓮の魔術師と呼ばれ、高い魔力を持っている。

 それに、皇帝の支持基盤である【純血派】を抑えてるから、今や帝都で最大の勢力を誇っている。

 

 だが、それでも大丈夫だ。

 ダストには、古代魔法がある。

 現代魔法を凌駕する威力を持つ、古代魔法。

 主人公専用の魔法であり、他のキャラは使えない。

 まさに、主人公補正、チートだ。

 だからアリスに勝つことはできるだろう。


 しかし、俺にはひとつ、気がかりなこたがあった。


「ただ……原作にないキャラがいる」


 それは——ブラックだ。

 正体不明のS級冒険者で、帝都はブラックの噂で持ちきりだ。

 帝国で起こる問題を水魔法で次々と解決している。

 こないだは、危険度A級の盗賊団を倒したらしい。

 

「完璧な原作を、ブラックが壊している……」


 ブラックは原作にない存在、この世界の異分子。

 必ず正体を突き止めないといけない。

 意図的に原作に介入しているから、おそらくブラックの正体は……俺と同じ転生者だ。

 だから——殺す。

 殺すしかない。

 殺す、殺す、殺す!

 俺のハーレムを、奪おうしているからだ。


「この世界で主人公は……俺だけなのに」


 帝都中が、ブラックの話ばかりしている。

 本当は、主人公の俺が目立つはずなのに……っ!

 この世界では、俺が「神」なのにっ!


「ブラック……必ず見つけ出して殺すからな」

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