第6話 ブラック様のファンです フェリシア視点

【フェリシア視点】


 午後、わたしは城で紅茶を飲んでいた。


「フェリシアお嬢様、何を読んでるのですか……?」

「帝都新聞を読んでるの」


 メイドのナナリーが、あたしに話しかける。

 わたしは帝都新聞の、ある記事を読んでいた。

 ある冒険者が、北部の盗賊を退治した話だ。


「へえ……どんな記事ですか?」

「ブラックという冒険者さんが、A級の盗賊たちを捕まえた記事よ」


 最近、ブラックという正体不明の冒険者が、帝都で話題になっている。

 水属性魔法の使い手で、スライムを操るらしい。

 

「もしかして、フェリシアお嬢様もブラックのファンなのですか?」

「えっ、いや、そ、そういうわけじゃ……」


 実はわたしは、ブラックのファンだ。

 こないだは、裏でエルフを奴隷にしていた大貴族のハイバルク公爵を、ブラックが捕まえた。

 ブラックのおかげで、エルフの奴隷たちが解放されたのだ。


 (本当にすごい……ブラック様)


 ハイバルク公爵の親衛騎士団、A級の魔法剣士たちをたった一人で倒した。

 今まで無敗を誇っていた親衛騎士団は、ブラック様によって崩壊……


「ハイベルクの親衛騎士団を倒したのは驚きました」

「ええ。いったい誰なのかしら……?」


 ブラック様の正体が気になって仕方ない。

 きっとすごくかっこいい、王子様のような殿方に違いない。


「わたしの予想ですが……ブラックの正体は、ダスト殿下じゃないでしょうか? ダスト殿下の実力なら、親衛騎士団にも勝てると思います」


 ナナリーが、紅茶を淹れながら言う。


「でも……ダストお兄様は、水属性魔法は使えないはずよ」

「いえ、ダスト殿下は水属性魔法も使えると、皇帝陛下の前でおっしゃったそうです。ですから、ダスト殿下は水属性魔法も使えます」

「そ、そうなの……じゃあ、もしかしたらダストお兄様がブラックなのかしら……?」


 なんとなくだけど、わたしはダストお兄様がブラックだと思えなかった。

 他の人が、ブラックの正体である気がする……


「他に水属性魔法を使える皇族と言えば……ルクス殿下がいますね」

「えっ? ルクスお兄様……それは絶対にあり得ないわ」

「でも、最近はかなり魔法の腕を上げてるらしいですよ」


 最近のルクスお兄様は、変わったらしい。

 メイドや家庭教師たちが、噂している。

 まるで人が変わったように、魔法の修行に打ち込み、剣術の鍛錬に励んでいるらしい。

 今ではA級の魔導書を学んでいるそう……

 剣では王国騎士団を相手に稽古しているとか。

 バカにしていた使用人たちにも親切で、今では下の者たちにも慕われている——


 (すごく変わりすぎじゃない……ルクスお兄様)


「今のルクスお兄様なら……もしかしたら」


 ブラック様、かもしれない。

 いや、そんなことないわよね——


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


連載決定しました!


モチベになりますので、


よろしければ「フォロー」や「星」をいただけますと嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る