第5話 ブラックとは誰だ? ダスト視点

「最近……王都で【ブラック】という冒険者が活躍しているようだが、まさか正体はお前か?」


 僕、ダストは皇帝陛下に呼び出された。

 

「はい。僕です」

「そ、そうかっ! やはりなっ! 正体を隠して人助けをするとは、さすがは我が息子だ……っ!」

「バレてしまいましたか……皇族の身ですので、正体を隠していました」


 ブラックは、正体不明の冒険者だ。

 冒険者ランクは、S級。

 S級の冒険者は、王国で4人しかいない。

 

 (ここはブラックのフリをしておいたほうがいいな)

 

 せっかく皇帝陛下が僕を「すごいヤツ」だと勘違いしているのなら、乗っておいたほうが得だ。


「ブラックは水魔法を使うそうだが、ダストは光属性魔法と雷属性魔法だけでなく、水属性魔法も使えるのか?」

「え……っ? あ、はい……実は水属性魔法も使えます」

「そうかっ! やはりダストは天才だなっ!」


 (よかった……バレるかと思った)


 僕は心の中で、ほっと胸を撫で下ろす。


「ダストに比べて……ルクスは本当にゴミだ。同じわしの子どもとは思えない」

「はい。おっしゃる通り、兄さんの魔力はゴミです」

「ルクスはゴミ。今後は兄と呼ばなくていい」

「なんと呼びますか?」

「ゴミクズ、無能、無価値、とか、好きなように呼べばいい」

「では、これから兄さんのことは【ゴミクズ】と呼ばせてもらいます」


 実際、兄さんはゴミクズだ。

 5歳程度の魔法も使えず、剣術もダメ、おまけにデブで怠惰な性格だ。

 まさに皇族の恥、生きる価値もない。

 

「偶然ですが、兄さんも水属性魔法を使いますね」

「そうだな。ゴミが唯一使える魔法だ」


 普通、貴族なら2つの属性の魔法が使える。

 しかし、兄さんはたった一つの属性しか使えない。

 これがまさに、ゴミである証拠だ。


「僕がブラックじゃなかったら、兄さんがブラックだったかもしれませんね」

「はっはっは……っ! ダストよ、冗談が過ぎるぞ。あのゴミ皇子が冒険者なぞ一生無理だ」

「ははは。そうですよね」


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