第4話 正体を隠して冒険者をする
ここは帝国のあるギルド――
「おい。近くのダンジョンでレッドドラゴンが出現したらしい」
「マジかよ……レッドドラゴンなんて誰も倒せねえよ」
レッドドラゴンは、凶暴なSランクモンスター。
2人の冒険者が、話をしていたが、
「おい! アイツは誰だ? 見ねえ顔だな」
「そうだな。新人冒険者じゃねえか? どうせすぐ死ぬさ。ははは!」
(よかった……。俺が皇子だとは気づかれていないな)
昼間から酒を飲んでいる冒険者2人の横を、俺は通りすぎた。
今、俺は冒険者をやっている。
皇子の身分を隠してだ。
俺――ルクス皇子には断罪される運命が待っている。
もし追放されても、冒険者として生きていけるようにするためだ。
あとは、推しのフェリシアたんのためでもある。
フェリシアを助けるために、強い冒険者になるのだ。
「あっ! ブラックさん、どうされたんですか?」
俺はギルドの受付嬢、ミリアさんに話しかけられた。
ブラック――俺の冒険者としての名前だ。
黒い仮面を被っているから、そう呼ばれるようになった。
「これを換金したいんだ」
ドンっと、俺は机にでかい袋を置く。
「こ、これは……?!」
受付嬢さんがおそるおそる袋を開けると、その中には――
「レッドドラゴンの角……?!」
かなり驚くミリアさん。
【レッドドラゴン】と聞いて、周囲の冒険者たちもざわつく。
「マジかよ……レッドドラゴンを倒したのか?」
「新人が倒すなんてあり得ねえよ」
「お前知らないのか? ブラックって言ったら最近出てきたすげえ冒険者で——」
俺の二つ名【ブラック】について、いろいろ議論する冒険者たち。
特にブラックの正体は、いろいろ話が出ているみたいなのだが……
「まさかレッドドラゴンまで倒してしまうなんて……さすがブラックさん……」
王宮で一通り魔法を習得した後、俺はギルドでクエストをこなしていた。
正体を隠しながら、冒険者として活動していたわけだ。
「レッドドラゴンの角は、10万ゴールドです」
「ありがとう」
皮袋いっぱいの金貨を、俺は受け取る。
「実は……ブラックさん指名で、また依頼が来ているのですが……」
「わかった。内容は?」
「ブランドン公爵の護衛です」
「貴族の依頼かあ……」
最近、ブラック(俺)指名で、やたらと依頼が来る。
貴族からの依頼も多い。
貴族の依頼はいろいろ面倒臭いから断りたいのだが、
「お願いしますっ! ブランドン公爵はこのギルドの支援者なのです……っ! だからギルドとしても、ブラックさんに依頼を受けていただきたくて」
ミリアさんが俺に頭を下げる。
しかも何度も何度も。
(仕方ないか……。俺もこのギルドにはいろいろ世話になってるし、護衛ぐらいならいいか)
「わかった。今回は引き受けるよ」
「あ、ありがとうございます……っ!」
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