幕間 リーメさん

「あのう……、もしもし、リーメさん?」





 ◇◆◇◆◇



 朝の早い時間。まだ空が白み始めた頃の時間に俺は目が覚めてしまった。この辺りは夏場でも少し底冷えすることがある。元居た世界のようなだるような暑さがないのは助かるが、階層の少し高いこの部屋では人肌の温かさが恋しくなるくらいだ。


 アリアと寝るときはもちろん裸ではなく、薄い布地のワンピースのような寝間着を着ている。裸だと寝ぼけて襲いかねないからね。最初はもちろん二人とも緊張してなかなか寝付けなかったけれど、三日もすれば慣れてきて、手を繋いだり、アリアが腕を抱きしめてきたりするようになった。ただ、俺からはアリアの方へは向かないようにしている。何故って色々障りがあるからだ。


 赤い髪の少女は腕枕で眠っていた。腕枕はうまくしないと腕が痺れるなんて思いもしなかった。彼女の頭は驚くほど小さいけれど、それでもそれなりの重さはある。寝ぼけ眼で彼女の頭に顔を寄せ、やわらかな匂いを嗅ぐ。


 ん?――何か違和感を感じた。逆側の腕にも重さがあったのだ。


 いつの間にか俺は、二人の少女に腕枕をしていた。両側はさすがにめっちゃ腕痛いんですけど……。


 反対側に居たのは同じような赤い髪の少女。ただし染めているだけ。俺はリーメに声をかけた。なんで居るんですかね……。


「んにゃ、あったかいからときどき夜中に来てた」


 ――いや、何度も来てたのかよ。気づかなかったわ。


「日が昇る前に帰ってた」


 ――猫かよ。


 アリアに怒られないうちに戻れよと俺は言う。


「アリアは知ってる」


 ――えっ。


 恐る恐る反対側を向くと、アリアが口をとがらせて凝視していた。ひぇ。


「なんであたしが先じゃないのよ」


 ――いや、別に目覚めのキスをしてたわけじゃないから。


 仕方がないのでいっぱいキスしておいた。


「朝から何やってんのか……」


 部屋に戻っていくリーメ。いや、お前だよ!



 ある朝の日常? だった。







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