黄巾賊数万を玄徳千五百で撃退

三人は馬を飛ばし、軍勢を引き連れて出撃したのでございます。


その頃、張角は董卓を完全に打ち破り、二度と立ち直れないほどの大敗を喫させ、勢いに乗じて一気に攻め込んできたのであります。

しかし!突然現れた三人の突撃に遭い、張角の軍勢は大混乱に陥り、五十余里も退却したのでした。


にわかには信じられません。

わずか千五百の玄徳の軍が、何万もの黄巾賊を撃退したのであります。どうしたらそのような奇跡を起こせるのでしょう?しかも相手の張角は妖術すら使えるのです。しかも五十余里といえば一里四百メートルとしまして二十キロメートル以上であります。そんなにも押し返すとは尋常ではありません。

…まあ、それはともかく、三人は彼らは押し返しながら、前方から逃げてくる官軍の中、敗走する董卓を見つけますと、助け出して陣営に戻ったのであります。


董卓、三人に現在の官職を尋ねます。

玄徳「無官です」現在は仕官を求めている状態だと答えます。すると董卓それを聞いて掌返し。玄徳の身分が低いことが分かると信じられないくらい彼らを軽んじ、礼節を守らなかったのであります。これが董卓の恩人に対する態度であります。


玄徳らが外に出ると、張飛は大いに怒って「俺たちは命を懸けて戦い、あの男を救ったというのに、あの無礼な態度はなんだ!殺してやらんと気が済まん!」と言いますと刀を取り出し、董卓を殺そうと陣帳に戻ろうとしたのであります。

張飛、この前も盧植が不当な扱いを受けた時にも助けようと兵士を斬ろうとしました。不正を見ると我慢できない性格であります。感情的で、あまり先のことを考えない点は短絡的ではありますが、一方で物事をはっきりと言う気性は良い点でもあります。


しかしながら、これは当時の世相でもあります。人の身分や地位によって態度を変える風潮があったのも確かなのです。

「この世の中、人の気持ちや損得勘定は昔から変わらないもの。人々は利益や地位にしか目がいかず、一体誰が真の英雄が飾り気のない人物だと理解してくれるだろうか。翼徳のような勇敢で正義感のある人物がいれば、世の中の恩を仇で返すような良心のない人や裏切り者、悪人を全て断つことができるのに!」とは、まさにこのことであります。

人の世の常を嘆き、正義を貫くことの難しさを表現しています。真の英雄というものは外面的な魅力ではなく、内面に強さを持っております。しかしながら人々は表面的なものにとらわれて、その真価を見抜けないことが多いという現実に嘆くばかりです。


さて、こんな非礼な董卓の命運はいかに!

これにて第一回 宴桃園豪傑三結義、斬黄巾英雄首立功は完結でございます。

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