向こう一面、びっしり黄巾賊

北へ向かって二日も経たないうちに、突然、山の向こうから大きな叫び声が聞こえてまいりました。


玄徳、関羽と張飛を引き連れ、馬を駆って高い丘に登り、遠くを眺めたのであります。すると、漢軍は大敗し、後方の山や野原は黄巾賊で覆い尽くされているのが見えました。旗には「天公将軍」と大きく書かれていたのです。


「なんと!」

その圧倒的な光景に一瞬、言葉を失いましたが、すぐさま彼らは血がたぎりました。

玄徳は目の前の敵をしっかりと見据え「張角だ。すぐに戦に入るぞ」と宣言したのであります。


その声は冷静でしたが、全身からは戦いに挑む決意が溢れ出ておりました。。

関羽、その言葉に静かに頷きます。目の前の敵に対しても冷静さを失なっていません。目を細め「ふん」と鼻から一息。

一方の張飛、冷静沈着な二人とは対照的に「よし、俺が先陣を切って奴らを蹴散らしてやる! これまでの鬱憤を晴らしてやる!」と舌を舐めます。


ところで、玄徳たちの軍はわずか千五百、対する張角率いる賊軍はたしか十五万でございます。

盧植が率いていた官軍が五万、一戦交えて兵数は減っていたとしても、向こう一面が賊軍ということは相当な数でありましょう。

この圧倒的不利な状態で、怖気づくどころか、無謀にも戦い挑もうとする彼らの心理状況に、あっぱれと言っても良いのでしょうか悩むところではあります。

しかし!義に燃える剛勇の士たちの雄々しき姿には、我々も胸を熱くさせられるばかりであります。

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