檻車の中には盧植

玄徳、命を受け、再び兵を率いて出発したのでありました。

途中、一群の兵士が一台の檻車を護送しておりますのを目にしました。

ひょいと覗いてみますと、その車中の囚人、なんと盧植その人であったのでございます。


玄徳、珍しく大いに驚き馬上から飛び降りると、檻車を止めさせ、盧植に理由を尋ねたところ、言うのであります。

「張角を包囲し、まもなく破ることができそうだというたびに、張角は妖術を用いるため、未だに勝つことができないのでいた。先日、朝廷から黄門の左豊が視察に来て、こともあろうか賄賂を要求してきたんだ。軍の食料さえ不足しているのに天子の使者であっても、もてなす金の余裕があると思うか?突っぱねたことに左豊が恨んで、朝廷に戻って私が戦わおうとせず閉じこもり、軍の士気を怠けさせていると奏上したらしい。それで朝廷は激怒して、中郎将の董卓を派遣してきて、私の代わりに軍を指揮させ、私は京に連行され罪を問われることになったのだ」


なんと盧植、張角にあと一歩というところまで追い詰めるたび、妖術を使われ、打ち破りきれないところに、視察に来た左豊に賄賂を要求され、それを拒否したために讒言、無実の罪を着せられ、都に呼び戻されるところだったのであります。

張角討伐の責任感、左豊への怒り、そして無実の罪を着せられたことによる朝廷への不信感、さらにこれから待ち受けるであろう仕打ちへの不安を、心の内に秘めていたことでしょう。

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