馬・金・軍備材をぽんぽんと

さて、前回の出来事を少し振り返りますれば…

劉備玄徳、関羽、張飛の三人は桃園の誓いを立て、義勇兵募集の受付に向かおうとした時になって初めて馬がないことに気がついたのであります。


考えを巡らせていると報せがもたらされたのであります。

「二人の客人が一団の従者を引き連れ、一群の馬を引いて荘にやってきました」

玄徳「これはもう天のご加護じゃないか!これは天が私たちを助けてくれたのだ!」と喜びの声を上げると、三人は足早に荘を出、その客人を迎えに行くのです。

まさに天の時に臨む者は、天も助けるというわけでございます。三人の志の高さと行動力が報われた結果と言えましょう!!


もとより、その二人の客人は実は中山の大商人、一人は張世平、一人は蘇双という者。毎年北へ馬を売りに行くが、最近は賊がうじゃうじゃいるから途中で戻ってきたとのこと。玄徳、二人を荘に招き入れると酒席を設けて歓待し、賊を討って民を安んじさせたいという意志を述べたのであります。


客人二人は大喜び、良馬をぽんと五十頭を贈ると申し出るだけでなく、さらに武器を調達するためにと金銀五百両、鉄一千斤もぽんぽん提供してくれるとのこと。なんとも玄徳、ここでも徳の高さを武器に支援を受けるのであります。

溢れんばかりの嬉しさを抑えつつ「そんなのに良いのですか。かたじけない。ぐふふ」と頭を下げて感謝の意を示す。あっという間に馬と軍資金と軍備材が揃ったわけであります。

譲り受けた良馬の中から三人はそれぞれ「これは」と思う一頭を選びます。

しかしながら、馬がないのに気づいただけで、軍資金と軍備材も不足していることにも三人、気づいてなかったのでありましょうか?張飛はそれなりに稼いでいたようではありますが…。


玄徳、二人に感謝し別れを告げると、優れた職人に双股剣を鍛造させました。関羽は青龍偃月刀を造らせます。別名を冷艶鋸といい、その重さなんと八十二斤。張飛も丈八ある鋭い鋼鉄の矛を造らせたのであります。蛇矛といわれています。それぞれ全身鎧甲も用意、ついでに勇士も金で誘って最終的に集まった郷勇五百人余とともに義勇兵の募集を行なっている鄒靖に会いに行くのであります。


思い起こせば関羽、店では義勇兵募集に行くから急ぎ酒を出せと言っておりました。

それから果たしてどれだけの日数が経過しているのでしょう。

そんなにぐずぐずしていて大丈夫かと私めは心配するところではありますが、そこは演義、心配ご無用、ちゃーんと席は空けてあるものでございます。


三人は鄒靖に会いに行きますと、鄒靖は彼らを太守の劉焉に引き合わせます。

玄徳たち以外にどれだけの義勇兵が集まっていたのか定かでありませんが、わざわざ劉焉に引き合わせるくらいなので応募が珍しかったのでしょうか。応募が多ければいちいちそんなことやってられないはずでございますが、そこも演義とご承知おきを。


三人は劉焉に参見(身分が下の人間が、身分が高い人に面会すること)し、それぞれ自分の姓名を告げ、玄徳は自分の家系についても説明したそうであります。すると劉焉、大いに喜び、ついに玄徳を甥として認めたのでした。えーそんな簡単に認めるの?

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