鉅鹿郡の三兄弟
時に、鉅鹿郡に兄弟三人がおりました。
そのうちの長兄が張角というのですが、彼は不第の秀才だったそうなんですね。
不第の秀才というのは科挙の試験に合格できずに公的に秀才として認められなかった人々を指しまして、文学的才能や教養を持ってはいるが、社会の上層部に昇進する機会を失ってしまった人々を指します。その才能を世に認められない器用貧乏といったところでしょうか。賢い人がなぜか運転免許証を取得できないようなものかもしれませんね。
そんな張角、ある時、山中で薬草を採取していると、碧眼童顔の老人に出会います。
その老人は「太平要術」と呼ばれる天書を三巻授け「これを得れば、天下を救うことができる。ただし、異心を抱いてはいかんぞ」と告げるのです。
まさかそのような異様な老人が現れたとは、まことに驚くべき出来事であります。
通常、我々人間が目にする老人というのは、白髪白須、しわくちゃの顔立ちのものですからね。ところが、この老人は碧眼で、童顔だったというのは、まるで別世界の存在のようです。
一体どこからどのように現れたのか、私にはまったく理解できません。しかも、そのような不思議な老人が、あの「太平要術」なる天書を出会ってすぐさま授けたというのですから、さらに不可解な事態だと言わざるを得ません。
そして老人は、自らが南華老仙であると名乗り、そのまま風に乗って消えていったというのですから、まさに奇跡的な出来事でございます。
もしや、この老人こそが、伝説に語られる神仙ではないのか。あるいは、魔物の化身なのではないのか。それとも、単なる幻影に過ぎないのか。
この太平要術を授かった張角が、一体どのような行動を起こすのか、大変気になるところです。
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